【10/1日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,651.97(+1.93%)[38,232~38,718] 
TOPIX   2,690.78(+1.69%)[2,660~2,696] 
マザーズ   665.79(+2.02%)[653~668] 

値上がりセクターTOP5
1.機械(+3.25%)
2.証券・商品先物(+3.05%)
3.卸売(+2.62%)
4.電気機器(+2.47%)
5.ゴム(+2.14%)

値下がりセクターTOP5
1.空運(▲1.04%)
2.陸運(▲0.04%)
3.なし
4.なし
5.なし

 日本市場は自民党総裁戦後の急落から石破新政権発足とともに出直りの動きとなり、日経平均・TOPIX・グロースいずれも自律反発狙いの押し目買いが入りました。石破新首相が改めてデフレ完全脱却をめざすとともに現状の金融緩和路線は継続する姿勢を示したことが買い安心感を与え、また、衆議院の早期解散実現に向けて着手したことが選挙相場の再開期待を後押ししました。

 石破新政権への期待とともに「高市トレード」の巻き戻しから石破関連銘柄を物色する「石破トレード」への乗り換えが本格化、防衛・防災・地方創生などの政策テーマ株が急騰。また、為替円高の巻き戻しで電子部品株や機械株など外需セクターに押し目買いの動きや著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが再び円建て起債の計画であることが伝わり商社株に再び思惑買いが向かいました。

 石破トレードでは真っ先に防衛族の印象から防衛大手の3重工が強く買われたほか中小型の関連株も軒並み大幅高となり、防災テーマでは建設株や住設関連、地方創生関連では地銀やインフラ関連など幅広い内需テーマ株に物色が波及していく期待も持てそうで、これまであまり注目されてこなかった中小型株などにも発掘の妙味が生まれています。

【米国株概況】
中東情勢の激化と全面戦争回避への期待で綱引き、株安・債券高・原油高でリスク回避と安全資産の動向を監視

NYダウ 42,156.97(▲0.41%)[41,945~42,322]
S&P500 5,708.75(▲0.93%)[5,681~5,757]
NASDAQ 17,910.36(▲1.53%)[17,779~18,162] 
ダウ輸送株 16,103.9(▲1.17%)[15,936~16,262]
半導体SOX 5,023.7(▲2.89%)[4,987~5,188]
日経平均先物(CME) 38,030(▲1.91%)[37,610~38,800] 
ドル/円 142.97~144.52(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.839%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.733%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 70.76(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2683.50(高値2,718:9/27、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.576(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)19.26(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 158.59(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 69(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)79.87(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は中東における地政学リスクが激化、ついにイランがイスラエルに大規模ミサイル攻撃を用意と伝わり株式市場では寄付直後からリスク回避の売りが先行、その後実際にミサイル攻撃が行われイスラエルの軍事施設やガス田プラットフォームに着弾し中東全面戦争に発展するのではとの警戒感に覆われました。

◆◆◆イラン、弾道ミサイルでイスラエルを直接攻撃-米国は防衛を支援(2024/10/2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKORW4T1UM0W00?srnd=cojp-v2

 市場では再三の自制を呼びかけられてきたイスラエルに対し中東全面戦争には慎重姿勢だったイランが直接的に報復の措置に出たことで展開のエスカレートが危惧される場面もありましたが、イランの大規模攻撃が4月と同様に限定的なものにとどまるとの期待もあり、下げ一服後には買い直される動きにもつながっています。イランの報復に対し今度はイスラエルが報復に出て報復の連鎖に陥りかねないとの見方も生まれる中で商品市場では安全資産の金、そして地政学リスクの激化を警戒した原油などが反発しました。

 地政学的混乱が市場の関心事となる一方、寄付後に発表された米経済指標ではJOLTS求人件数が市場予想を上回り米労働市場の軟化に対する見方が多少和らいだほか、米ISM製造業指数は反対に市場予想を下回りまちまちの結果となりました。米金利は中東の地政学情勢を強く反映して年限問わず金利低下となる中、直近の高値圏まで買われてきた株式市場では半導体やハイテク株中心に利益確定売りが促されました。

◆米求人件数は804万件、3カ月ぶり水準に増加-市場予想上回る(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKOKATT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆米ISM製造業指数、6カ月連続で活動縮小-受注や雇用が低迷(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKOK8CT0AFB400

 緊迫する地政学情勢とともに市場ではインフレ鈍化基調を前提とした米FRBの利下げサイクルはやや前のめり感が意識されるようになり、国際金融資本の代表格であるブラックロックは市場の利下げ織り込みに対して牽制する見方を示したほか、米国内における港湾ストライキの問題が10/1から本格化したことをふまえてインフレの再燃懸念も台頭してきています。今後の利下げサイクルはじめ喫緊の中東情勢およびウクライナ戦争においても不確実性が深まっている状況につき、しばらくは神経質にならざるをえない状況が続くとみられます。

◆FRB利下げを市場は織り込み過ぎ-ブラックロックのフィンク氏(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKO4SNT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆米港湾労働者がストライキ入り、東海岸の港が閉鎖-1977年以来初(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKNV07T0AFB400
◆◆アングル:米債券市場、大幅利下げでインフレへの不安再燃(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/markets/japan/MDJG6T5FQJOM3LZFJ6ZBBISD3U-2024-09-26/

 前回も取り上げたように米バイデン政権による戦争経済重視の試みはイスラエル支援、ウクライナ支援を通じて地政学リスクを激化させ米国経済を潤しつつ世界中に歴史的インフレをばらまく結果となりました。11月に米大統領選挙を控える中で改めて地政学リスクが強調されたことで金融市場の安定性が失われるように思われる反面、ここから先の展開として紛争抑止における機能不全が指摘される国連の大改革や戦争当事国以外の諸国による必死の外交努力などがクローズアップされ、11月をメドとして地政学的混乱に解決の糸口を探ろうとする動きも活発化してくるものと思われます。そうした前提の下では10月波乱相場をうまく乗りこなせるかがカギとなり、こうした地政学的緊張の高まる場面が買い場を演出する材料に使われると認識しておくのがよいかもしれません。

◆◆◆焦点:中東情勢、米国の限界露呈 色あせる「バイデン外交」(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/world/us/IHRGNPD2DJNQDOJ6GU5ZYBU6BQ-2024-09-27/
◆◆イスラエル、米国から87億ドルの軍事支援を確保(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/world/security/MURI2Y6M45KKBKPYDTJCHV7BBA-2024-09-26/
◆◆米欧、ロシア資産活用した対ウクライナ500億ドル支援で合意に近づく(2024/9/27)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-26/SKFAVWDWX2PS00
◆◆G7のウクライナ向け融資、10月末合意目指す=欧州委高官(2024/10/1)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HBHUQQJDA5NSJCA75SRFSGBCDA-2024-10-01/
◆NATO、ルッテ事務総長が就任 ウクライナへの支持表明(2024/10/1)
https://jp.reuters.com/world/ukraine/3ER46EAQSBOPXPY2Z5MNTQG27Q-2024-10-01/

【日本株投資戦略】
中東地政学リスク消化のための日本株ヘッジ売りに注意、乱高下の中でも膨らむ選挙相場への期待

 日本市場は自民党総裁選後の〝石破ショック”と揶揄された急落から持ち直したのも束の間、選挙相場を利用した投機筋が積極的に売買を仕掛ける日経平均先物の動きは38,000円をはさんでの乱高下が繰り広げられています。昨日は自民党総裁選前の「高市トレード」巻き戻しから一歩進み、時間外を含めた日経先物は安値37,300円から38,600円へと急反発をみせました。

 石破新政権の発足と同時に早期の衆議院解散総選挙のスケジュールも明示され選挙相場の期待も高まりやすい場面ですが、昨晩のイランによる直接的なイスラエル攻撃が報じられたことで時間外の日経先物は再び38,000円を割り込む展開を強いられています。今後の中東情勢激化が警戒される局面でありながら、かねてより日本株をめぐってはボラティリティが高止まりしている現状を鑑みますと想定内とも言え、むしろ地政学リスクを通じた乱高下も海外勢にとってはお手の物といったところかもしれません。

◆石破内閣が発足へ、「9日衆院解散」には野党が反発-27日投開票(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-30/SKM90LT1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆デフレ脱却実現へ、金融緩和の基本的な基調維持を-石破首相(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKOFZHT0AFB400?srnd=cojp-v2

 にわかに地政学リスクが意識されたことで為替は安全資産需要から米ドル高、円高に振れるとともに債券買い・株売りを誘発される一方、日本株においては企業の自社株買いや選挙相場にちなんだ証券自己売買部門を通じた政策的な株買いが一般投資家のリスク回避売りを買い受ける構図となりそうです。また、海外勢においても投機筋とは別に中長期投資を志向する買い手は10月波乱を通じて日本株の安値を虎視眈々と狙いにきているとみられ、一連の為替円高の動きにまぎれて日本円調達からの日本資産買いの流れも生まれてくるでしょう。

◆米バークシャーが円債発行を計画、今年2回目-日本株投資に期待(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKNK44T1UM0W00?srnd=cojp-v2
◆◆コラム:新政権でも「円高イコール株安」続くか、日本株にも独自の構造変化=大槻奈那氏(2024/10/1)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/B3WL6KE2BJMDXIMIAICSDULTC4-2024-10-01/

 この波乱含みの展開においてはおそらく中長期的にみた買い場好機が演出されるものとして、一つ目先で注意を要するのは直近の中国株高でアジアを投資対象とするファンドなどが日本株と中国株どちらを選別しやすいかという点と、さらにはその中国株においてはこの10/1~10/7の期間に国慶節で休場になるということです。当然ながら中東の地政学リスク激化の影響が織り込まれないほか、グローバル視点の投資家であればアジア市場における株安場面を日本株をヘッジ売りする需要が高まりやすくなります。加えて、偶然の産物かはさておき台湾市場も大型台風の影響から本日は休場となる中で、とくに半導体強国である台湾株が売れないとなるとヘッジファンドなどは日本の半導体株を売ってヘッジするという思考に至るのではないでしょうか。

◆大型台風が台湾に接近、2.5兆ドル規模の株式市場は2日休場に(2024/10/1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-10-01/SKOG1ET1UM0W00

 つまり、日経平均は半導体株比率が高いためにこの数日間は実勢以上に売られやすくなることを念頭に置きながら日経平均がらみの銘柄やそれ以外に対しても冷静に取り組む必要にかられるということです。それで中国の国慶節が明けたところでちょうど石破新首相が提示した衆議院解散に伴う総選挙のスケジュールが10/9よりスタートする運びとなるため、選挙相場はそこから10/27の投開票日にかけて展開されていくことに留意しておく必要があるでしょう。

 足元では「石破トレード」と称して一部の政策関連株に物色が集中している傾向にありますが、来週以降では選挙モード突入から多方面に物色が広がる展開も想定されます。とくに市場波乱と相まって日銀による追加利上げはしばらく封印と考えることもできることから、引き続き為替動向に注意をはらいつつ内需株、外需株をバランスよく拾っていくスタンスが重要です。くれぐれも相場の乱高下で感情的に高値づかみすることや恐怖で狼狽売りすることなどないよう、日頃以上にリスク管理を厳格に行っていくことが大事でしょう。