【9/27日本市場の確認ポイント】
日経平均 39,829.56(+2.32%)[38,917~39,829] 
TOPIX   2,740.94(+0.73%)[2,697~2,743] 
マザーズ   675.75(+2.13%)[665~676] 

値上がりセクターTOP5
1.精密機器(+3.11%)
2.機械(+3.05%)
3.不動産(+2.29%)
4.化学(+2.29%)
5.電気機器(+2.01%)

値下がりセクターTOP5
1.銀行(▲2.43%)
2.石油・石炭(▲1.83%)
3.紙・パルプ(▲1.79%)
4.鉱業(▲1.15%)
5.鉄鋼(▲0.78%)

 日本市場は自民党総裁選を経て新政権誕生への期待の高まりとともに日経平均は9/2高値39,080円を上抜け39,829円に上値拡大、またTOPIXも為替円安を受けて2743ptの戻り高値を更新。取引時間中に自民党総裁選の投開票が行われ1回目の結果では日銀の利上げに釘を指してきた高市氏がトップ得票となったことから為替ドル円は146円台まで円安が進み、日経先物を中心に大幅高の動きをみせました。

 9月半ばにようやく持ち直しを本格化させた半導体株が大きく買われて指数押し上げに貢献、とくに米マイクロン決算で見通し好感後の戻りがめざましく、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)など主力株の見直し買いが強まりました。加えて、直近まで低迷の一途を辿っていた中国株が中国政府の利下げおよび新たな景気刺激策の発表期待で急騰続きとなる中、日本株でも中国関連を見直す動きが強まったことで幅広く物色に好影響をもたらしました。

 セクター別には半導体関連のほか電機、機械といった為替円安を追い風にする外需セクターをはじめ、米中景気懸念の緩和期待で鉄鋼や金属、商社など資源関連の見直しも強まりTOPIXを押し上げてきました。一方で、新興株は一部のテーマ株に物色が集中するも新興市場全体への影響は乏しく、自民党総裁選後の期待を反映した高市、石破両氏に関連するテーマ株が急騰した反面、それ以外は物色の蚊帳の外に置かれました。

【米国株概況】
米景気ソフトランディングと追加利下げ期待を同時に織り込む欲張り相場、米大統領選と地政学をめぐるサプライズがリスク要因か

NYダウ 42,313.00(+0.33%)[42,227~42,628] 【高値更新】
S&P500 5,738.17(▲0.13%)[5,727~5,763]
NASDAQ 18,119.59(▲0.39%)[18,069~18,238] 
ダウ輸送株 16,185.9(+0.64%)[16,154~16,363]
半導体SOX 5,217.2(▲1.76%)[5,190~5,318]
日経平均先物(CME) 37,450(▲6.02%)[37,290~39,970] 
ドル/円 142.06~146.49(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.859%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.751%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 68.18(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2689.90(高値2,718:9/27、安値1,618:2022/11/3)【高値更新】
銅先物 4.602(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)16.96(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 160.99(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 68(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)80.36(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は米FOMC大幅利下げに伴う米景気ソフトランディング達成への期待を背景に堅調な推移でNYダウ、S&P500はそれぞれ最高値更新の動きを続けています。足元のインフレ鈍化傾向を反映し8月PCE価格指数も予想比下振れ、さらに米労働市場の軟化で米景気懸念が燻る中で米GDPの4-6月期は従前より強かったことが判明したことで市場はゴルディロックス(適温相場)期待の楽観姿勢を強めています。

◆◆米GDP、第2四半期確報値は+3.0% GDIは大幅上方改定(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/POIVYOMT6BOBFK6ST2O5MN5U4I-2024-09-26/
◆米PCEコア価格、前月比の伸びが予想下回る-消費支出も低調(2024/9/27)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-27/SKH1KMT0G1KW00?srnd=cojp-v2
◆米消費者マインド、5カ月ぶり高水準-利下げで景気への楽観強まる(2024/9/28)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-27/SKH5M8DWRGG000?srnd=cojp-v2

 米国利下げサイクル開始に伴い米金利市場では追加の利下げ期待や9月末を期限としていた年内つなぎ予算の成立にも無事こぎつけることができ米金利は低下で米国債買い意欲を支援しています。米財政懸念の後退につき米長期金利は概ね3.7%~3.9%で安定的な推移が見込まれるほか、懸案だったハイテク株をめぐっては各国当局による規制動向への懸念はひとまず棚上げの様相でハイテク株主体のナスダックも戻りを試す動きとなっています。

◆◆米国の最上級格付けに圧力、ムーディーズが財政赤字の膨張放置を警告(2024/9/25)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-24/SKBQ6IDWX2PS00?srnd=cojp-v2
◆◆米議会が暫定予算案可決、大統領に送付-政府機関閉鎖を回避へ(2024/9/26)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-25/SKE3Y7DWX2PS00?srnd=cojp-v2

 ハイテク株の中でも足元で半導体大手マイクロン・テクノロジーの決算および明るい見通しが半導体株全般に好影響を与えたほか、新型iPhone不発で嫌気売りに遭ったアップルも戻り高値圏で推移、欧米で独禁法にからむ厳しい目が向けられるグーグルやメタなども健闘しています。先日の米大幅利下げに加えて米FRBは流動性供給の支援策を用意し、米金利低下により金融機関の収益圧迫懸念が顕在化した時のための常設レポ活用を訴えてもいることから、いざ金融システムの混乱が生じたときの備えにも抜かりない体制を整備しています。

◆◆FRB、銀行向け緊急融資策を改善へ 大口預金流出に備え(2024/9/27)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN270DA0X20C24A9000000/

 ここから先は米大統領選をめぐる混戦や主要経済指標において市場波乱要因となりうる労働関連指標やISM関連指標などがポイントになっていきそうですが、とくに米大統領選挙目前の10月においてはもう最終盤に差し掛かった中でフェイクニュースが横行したり、予期せぬ事件などが多発しやすいと言えます。また、今年はダボス会議はじめ各安全保障会議などで最重要テーマに位置づけられた地政学リスクも未だ現在進行形で激化する懸念が燻っていることからオクトーバー・サプライズには注意を要します。くしくも日本発で大きく話題となったブラックマンデーも1987年当時は10月に見舞われた記憶から、このまま年末に向かって株高一直線というよりも足元の波乱警戒月として慎重さが求められる場面かと思われます。

◆◆ゼレンスキー氏とバイデン氏が会談 「戦勝計画」協議(2024/9/27)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB270LQ0X20C24A9000000/
◆◆◆焦点:中東情勢、米国の限界露呈 色あせる「バイデン外交」(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/world/us/IHRGNPD2DJNQDOJ6GU5ZYBU6BQ-2024-09-27/

【日本株投資戦略】
石破新政権の誕生で急落する日本市場、失望がやがて期待に変わり日本トリプル高の実現に向け重要さを増していく年末相場

 日本市場は自民党総裁選にちなんだ選挙相場の最中において先週は欧米株高の遅れを一気に取り戻すかのような大幅反発がみられました。日経平均は9月中旬の35,000円台から3週連続の陽線形成で40,000円目前まで急騰を演じ、為替市場もドル円140円割れの場面から146円台半ばまで円安に振れました。この間にドル建て日経平均は今年3月以来の最高値圏に到達し、終値ベースでは年初来高値を更新する動きとなりました。

 日本株が大きく出直りをみせた要因はいくつか考えられ、まずは為替円高の一服にみられる企業業績下振れ懸念の後退、そして米中景気懸念の緩和、さらには指数影響の大きい半導体株が米マイクロンの見通し改善を背景に反転上昇を強めた影響が大きいとみられます。これら国際マクロの状況改善に加えて投資家期待を大きく引き上げたのは自民党総裁選を契機とした政治刷新への期待感であり、新総裁誕生から衆院解散総選挙までの道程における選挙相場への思惑が後押ししたものと考えられるでしょう。

 とくに自民党総裁選の投開票日が近づくにしたがい該当候補の期待トレードが投機性を帯び、27日の投開票日における当日取引時間中の動向では高市新総裁誕生への期待がピークに達し、関連銘柄の高騰はもちろん日銀の金融政策に対する緩和路線継続の言及とアベノミクス踏襲にみられるリフレ政策への期待から円安株高の様相を強めることとなりました。ただ、1回目の開票結果では高市氏がトップ得票となったことが株高の追い風となったものの、取引時間終了後の高市氏、石破氏の決選投票において石破氏勝利が伝わったことで一連の「高市トレード」が巻き戻される動きとなっています。

◆円が全面安、にわかに盛り上がる「高市ヘッジ」の売り(2024/9/27)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL271NR0X20C24A9000000/
◆◆◆自民党新総裁に石破氏、決選投票で215票 高市氏194票(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5ROI5TN3KFJHTOSDQY5OBHDZNU-2024-09-27/

 時間外の先物市場では日経先物が▲2,000円超の暴落商状となっているほか、為替市場でもドル円146円台から一気に142円付近まで円高が進み、相場は9月半ばの水準まで往って来いとなりそうな様相になっています。ただし、足元の日本市場は「令和版ブラックマンデー」と揶揄される「8.5ショック」以降、株価の日中値幅が日経平均で±1,000円を軽く上回るような激しい上下動とともに日経VIが高水準の推移が続いており投機的な動きが強調されてきました。したがって、今回の「高市トレード」の巻き戻しにおいても相場の方向感を示すというよりも極端なポジション偏重の修正といった側面を冷静にとらえる必要があると考えます。

 ひとまず「高市トレード」の巻き戻しで日経平均は大きく揺さぶれる可能性をふまえつつ、内容として重要なのは石破新政権に対する失望売りという一言で片づけるのは時期尚早であり、選挙相場はむしろこの先の衆院解散総選挙が本番であることをふまえると投機揺り戻しの押し目は素直に買いでよいでしょう。そこから日銀の金融正常化を石破新政権は支持するとみられる為替円高要因が市場懸念を後押しすることになると考えられる反面、当の日銀関係者は市場波乱の中で追加利上げをはじめ金融引き締めを強行することはしないとの発言をみるに、むしろ10月の追加利上げ観測はいずれ鳴りを潜めていく結果になるのではないかと思われます。

 今後のスケジュールをふまえますと石破新政権の移行にあたり、新内閣発足から衆院解散総選挙まで10月中にも実施されるとの観測記事もみられており、その後の新内閣への政権移行後において直ちに新たな経済対策が発表されることを最重要事項として認識することが大事と思います。過去の経験則にてらせば解散総選挙時期には株価も不安と期待の入り交じりから大きな上下動を伴いつつ、結果としては大幅反発が期待される局面であり、市場が懸念する日本の金融政策や財政政策においても堅実な石破新政権の方が金利上昇ペースを極力緩やかなものにし株式市場にとっては徐々にプラス面が大きくなっていくものと考えられます。

◆アングル:石破新総裁に金融市場の洗礼、円高に株急落 一過性か期待と不安(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/DVAYE2RQJFOQFNBNKY74BFLWII-2024-09-27/
◆◆◆近く経済対策策定へ、解散時期も焦点 来月初めに石破内閣発足(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/H4REUXQAHROBDJT4F2544NCAK4-2024-09-27/
◆石破自民新総裁に経済界から期待や要望-デフレ完全脱却へ成長戦略を(2024/9/27)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-27/SKGMFLT0AFB400?srnd=cojp-v2
◆自民党新総裁に石破氏:識者はこうみる(2024/9/27)
https://jp.reuters.com/markets/japan/NQCLXRFOJZOADG7H7MK65F4LYY-2024-09-27/
◆◆衆院選、10月27日投開票軸に 自民党・石破茂総裁が方針(2024/9/29)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA292MB0Z20C24A9000000/

 次政権の課題として何より望まれるのは外交・安全保障政策における過度な対米追従路線の修正であり、かねてより石破氏が訴えてきた日米地位協定見直しなど実に香ばしい問題をどれだけ穏便に事を進められるかでしょう。バイデン米政権と一蓮托生の岸田政権下では内政よりも外交に重きが置かれ、日本のマネーは国外の支援金拠出や米国債買い支えで国外流出超となり、内需振興は円安・インバウンド推進によってまかなわれました。これらを転換し、日本国内への資金還流を促す金利正常化と円高に負けない産業競争力の創出でエネルギー政策の早期転換などが実現できれば日本の輸出産業はエネルギーコスト低下から競争優位性を確保でき、内需産業においても企業の賃上げ波及や設備投資本格化でもって日本株への期待をいま一度奮起させることにもつながっていくとみられます。

 日本株を取り巻く試練の局面は10月から11月にかけてまだまだ予断を許さない状況が続くものとみられますが、この約1カ月間におよぶ大きな荒波の時期を乗り越えることが重要です。依然として高いボラティリティ水準から市場ではおそらく短期的な上下動が激しい日々が続くかと思われる反面、石破新政権の下ではついに日本のデフレ完全脱却とともに金利正常化が実現するとみられ、正常なインフレ軌道に立ち返れば日本株は株高・金利高・円高が同居するトリプル高の相場実現期待が高まっていくものと考えられます。すなわち、目線を短期から年末そして来年に移せばこの10月波乱でこそ「令和版ブラックマンデー」の挽回を期すための大いなる買い場となるのではないでしょうか。

◆円高でも強い業績モメンタム、日本株は年末高も-ゴールドマン建部氏(2024/9/27)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-09-26/SKDA63T0G1KW00?srnd=cojp-v2