【9/6日本市場の確認ポイント】
日経平均 36,391.47(▲0.72%)[36,235~36,898]
TOPIX 2,597.42(▲0.89%)[2,583~2,626]
マザーズ 643.88(▲1.93%)[640~659]
値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+1.11%)
2.倉庫・運輸(+0.47%)
3.小売(+0.22%)
4.その他製品(+0.16%)
5.食料品(+0.07%)
値下がりセクターTOP5
1.機械(▲2.13%)
2.鉄鋼(▲2.08%)
3.電気機器(▲2.03%)
4.非鉄金属(▲1.86%)
5.証券・商品先物(▲1.75%)
日本株は月初に日経平均39,000円戻り高値をつけた後、再び8月暴落を想起させるような滑落をみせています。足元の米経済指標下振れが相次ぎ為替相場も再びドル円140円を試すような動きとなり円高株安の警戒感が重しとなっています。半導体・AI期待の剥落に伴い半導体株の大幅安を主因として値幅を伴った下落となっており、足元では景気・円高懸念なども重なり日経平均・TOPIXは再び200日移動平均線を割り込みました。
市場物色はバリュー・ディフェンシブ株への資金シフトを進める中、銀行・金融セクターの上昇一服によりセクターローテ―ションもバリュー株選好は一巡とみられ、相対的に下げ渋りの内需・ディフェンシブ株のみが資金逃避先となっています。レイバーデー明け注目の機関投資家参戦後の動きは下落とともに空売り比率が高水準を記録しており、8月暴落後の反騰に対して利益確定および2番底形成に備えてのヘッジ姿勢が窺えます。
足元では日経・TOPIX・グロースそれぞれの指数下落よりも半導体株安の2番底懸念が強まり、AIブーム期待で象徴的に上昇したディスコ(6146)をはじめ東京エレクトロン(8035)が8/5安値を下回っています。為替円高の進行とともに全体相場への影響も懸念されるところで、単に半導体セクターの調整にとどまるものか全体リスクオフにつながっていくのか緊張感が高まっています。
【米国株概況】
米経済指標悪化で大幅利下げを催促する市場、金融当局者は想定内の構えで市場の勇み足を制御
NYダウ 40,345.41(▲1.01%)[40,297~41,009]
S&P500 5,408.42(▲1.73%)[5,402~5,522]
NASDAQ 16,690.83(▲2.55%)[16,668~17,166]
ダウ輸送株 15,427.1(▲1.22%)[15,408~15,713]
半導体SOX 4529.2(▲4.50%)[4,507~4,701]
日経平均先物(CME) 35,255(▲3.04%)[35,120~37,045]
ドル/円 141.76~144.57(高値161.99:7/3、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.842%(高値1.104%:7/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.716%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 68.16(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2526.80(高値2,570:8/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.065(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)19.90(高値65.73:2024/8/5)
SKEW指数 148.98(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 39(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)79.14(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は殊更に注目度の高まった8月米雇用統計をうけて米景気懸念が高まったほか、主力ハイテク株を中心に大幅安する銘柄が相次ぎナスダックが▲2.5%安、半導体SOX指数は▲4.5%安とリスクオフの動きが強まりました。8月初めの急落時におけるパニック売りのような事態には至っていないものの、直近決算のブロードコム以外の半導体株のほかグーグル、テスラなどの大幅安が突出したものとなっています。ナスダックに続いてS&P500も景気循環線とよばれる200日移動平均線を割り込み、改めて米景気の先行き懸念を反映した動きとなりました。
米経済指標悪化をきっかけとした株安は8月初めと同様の展開と言えますが、市場が注目した米雇用統計は事前予想+16万人増に対して14.2万人増、失業率は4.2%で若干の改善を示しました。ただ、前月、前々月の米雇用データが大幅下方改定により▲25,000人、▲61,000人減少となったことが市場関係者の不安を煽る形になったとみられ、今回まずまずの結果となったことに関しても疑心暗鬼を生じさせることとなったのではないでしょうか。なにしろ2023年1月以降、米政府の公表する雇用データは19回のうち16回も後から下方修正された事実が不信感に拍車をかけることとなっています。
◆米雇用、8月14.2万人増で予想下回る、失業率は4.2%に低下(2024/9/7)
一連の米経済指標が悪化していることをふまえ市場では債券買い・株売りを一段と進めるとともに、米FRBの利下げ幅をめぐっては9月大幅利下げの可能性を織り込もうとする動きもみられました。米国債のイールドカーブは短期金利の低下が著しく、長短金利は逆イ―ルドから順イールドに転じるとともにリスク資産売りとなりました。
◆◆米大幅利下げ観測強まる、弱い求人統計に反応-逆イールドが一時解消(2024/9/5)
◆◆9月の0.5ポイント米利下げへの賭け、金利オプション市場で勢い増す(2024/9/5)
◆9月の0.5ポイント米利下げ、確率50%に-雇用統計受け米国債上昇(2024/9/6)
一方、米雇用統計の結果をうけて米FRBメンバーはじめ金融当局者からは現状の金融政策は適切、そして雇用悪化や米経済減速については概ね想定どおりとするような発言が相次ぎ、9月FOMCにおける利下げ幅について明言は無いものの0.25%から複数回にわたって今後調整していく可能性が示されました。とくに初回利下げについては慎重を期す構えで、必要以上に市場の不安を煽らない形で通常どおりの0.25%利下げを正当化するにとどめたものとみられます。
◆ウォラーFRB理事、大幅利下げの可能性に「オープンマインド」(2024/9/7)
◆NY連銀総裁「金融緩和の時期到来」、初回利下げ幅は明言せず(2024/9/7)
◆FRB、複数回の利下げ必要 労働市場の健全性維持=シカゴ連銀総裁(2024/9/7)
◆イエレン米財務長官、雇用統計は「極めて健全な」労働市場を裏付け(2024/9/7)
市場では当然にも0.25%より0.50%利下げを引き出したいがために株安誘導や債券買いも急ぎつつ催促相場となりやすい状況である一方、米景気とは一線を画すところで半導体・AIブームの期待が剥落するとともにハイテク株売りに拍車がかかっています。これに関しては足元のエヌビディアやブロードコムといった半導体大手の決算期待が市場のハードルを越えられなかったことに対する嫌気売りが主体となる一方、8月来の反騰相場で急上昇していた分の反動安といった面もあります。そもそも市場の地合いが悪化しやすいとされる9月、10月の相場環境の中でエヌビディア株が100ドルの大きな節目での攻防となり、年末に向けて上値を志向するか下値模索となるかの判断は大きく分かれるところかと思います。
◆◆FRB利下げの地合い整う、雇用統計受け 大幅緩和か見解割れる(2024/9/7)
◆NVIDIAの株価急落 AI需要「72兆円不足」、市場が警戒(2024/9/4)
◆エヌビディア株、100ドル割れで潮目に変化か-市場で高まる警戒感(2024/9/4)
ただ、目先の相場展開においては11月に控える米大統領選も混戦模様となる中、いずれにしても安定的なゴルディロックス環境は望めないとして投資家はリスク回避姿勢を強めるのも無理のない話で、片や流動性低下から市場変動が大きくなりやすい状況で投機筋は短期売買を仕掛けやすい環境とも言えるでしょう。市場需給を中心にみると米FOMCに向けては利下げ催促の方へ大きくポジションが傾けられやすい一方、結果がどうあれ過剰に膨らませ過ぎた株売り・債券買いのポジションは早々に巻き戻される可能性も大きいと思われます。したがって、足元の株安局面は一過性のイベントトレードの範囲であり、押し目買い好機の演出とみて問題ないと思われますが、続く米CPIなどいインフレ指標や米個人消費データによって大きな変動が続く可能性も当然ありますので、楽観姿勢の継続とともに慎重さの必要もありそうです。
◆ブラックロックのETF間で巨額の資金動く、「新局面」でリスク低減(2024/9/7)
【日本株投資戦略】
8月暴落のトラウマが呼び起こされる日本株売り、円高・半導体株安でも8月ショックとは異なる売り仕掛け
日本市場は米経済指標悪化に伴い為替円高と株安が再び同時進行し、時間外での為替ドル円141円台と日経先物35,120円をつけて8月ショックの再来懸念が意識されてきました。前回は米景気懸念に加えて日銀サプライズ利上げを契機とした円キャリートレード巻き戻しが相場下落に拍車をかけたとされましたが、今回もきっかけは米経済指標悪化で為替が再び円高に振れてきた点については似ている一方、値幅を伴った下落の中身を見ると半導体株はじめ外需株、原油安を背景とした資源株安に引っ張られていることが鮮明です。
◆日本株、漂う8月5日の「既視感」 市場は楽観と悲観交錯(2024/9/9)
8月ショック以降、投資家の売買動向では短期筋による空売りも含めたヘッジファンドの影響も大きかったという集計の一方、海外勢と並んで注目される年金勢においては信託銀行経由での売買で淡々と買い越してきたことが判っています。それに対し、足元では市場のボラティリティ上昇とともに再び空売り比率が上昇していることから、レイバーデー明けの機関投資家が本格復帰してきた時点から売り圧力が一気に高まってきたとみられます。
◆ヘッジファンド、8月は22年3月来最大の株売り越し=ゴールドマン(2024/9/6)
9月初めにかけての反騰相場で日経平均は暴落前の水準を全戻しの39,000円を一瞬つけたところで戻り一服となりました。足元ではその日経平均がわずか一週間ほどで▲4,000円幅での下落となり8/5以来の上昇幅における半分を消失したほか、為替水準はすでに8/5安値の141円台まで突っ込んでくる動きから二番底の懸念が深まっているとみられます。
◆日本株に二番底懸念 過度なAI期待修正、円高も重荷(2024/9/9)
しかし、その一方で8月ショック時と大きく状況が異なるのは米利下げをめぐる認識であり、米経済指標の一段と悪化したことをうけてなお米経済はソフトランディング可能かつ米利下げにおいても緊急性は無く、利下げ幅やペースに関する具体的な言及は避けるとしても金融当局者は市場ほど切迫感を持っていないというギャップが生じています。もしここで一連の米経済指標をうけて9月大幅利下げが実際に必要となった場合、市場は自ら切望した利下げ幅を獲得しながらも米景気の本格リセッション到来を危惧してかえってパニック売りに見舞われることになろうかと思われます。
◆米雇用、ショック再来は回避 FRBは0.25%利下げ示唆(2024/9/7)
いずれにせよ米FRBが利下げサイクルに入る準備が整ったとする以上、今後は初回利下げそのものよりもペースや最終的な誘導金利目標に焦点が移っていくことになります。肝心なのはいつ大幅利下げが必要となるタイミングが訪れるのかということです。9月が通常通りの0.25%利下げであれば、10月以降に持ち越される可能性が高くなる反面、市場が総悲観に覆われるタイミングもまた後ズレすることになります。おそらく足元で米労働市場が変節点を迎えているというだけでは、インフレ長期化との兼ね合いから今後の米CPIや米小売の統計次第ではまだ時期尚早と判断される可能性があり、市場の二番底警戒は杞憂に終わることと思われます。
一方、米金融政策だけでなく直接的に影響が大きくなるであろう日本の金融政策においては、市場での次なる利上げ時期は年末12月もしくは10月、現実的には来年1月以降という見方が有力となっています。もし市場が軟化している状況下で10月追加利上げとなれば二番底懸念が現実味を帯びてくることになりそうです。それが米景気にかかわらず政治的動機も含めて大幅利下げと重なるタイミングはとくに注意を要することになるでしょう。
◆日銀の次回利上げ、市場予想より前倒しの可能性-渡辺東大教授(2024/9/6)
日本も米国も金融政策決定はデータ次第としつつも市場は金融政策修正の度に動揺を強いられました。これは必ずしも金融当局の責任ではなく新局面へのリバランス対応を迫られるファンドに起因したものである一方、市場との円滑なコミュニケーションができていないことも浮き彫りとなっています。日銀が7月サプライズ利上げと言われる所以は、およそ政策判断における重要な指標として①消費者物価指数(CPI)、②総合的な物価動向を示すGDPデフレーター、③賃金動向を映す単位労働コスト、④需給ギャップなど4つを挙げながら、政府のデフレ脱却宣言と歩調を合わせるかのように振舞ってきた結果として欧米から周回遅れの政策修正となった経緯があります。ところが、7月時点では政府の脱デフレ宣言は未了のままに利上げに踏み切ったわけで、その真意が日本経済の力強さやインフレ指標、需給ギャップなどからは整合性がまだ見出しにくいタイミングでもありました。むしろ過度な円安是正や欧米と並んでインフレ対応と称しながらもっと早い段階で政策修正を開始しておいた方がよかったのではないかとさえ思います。
しかし日銀が市場混乱と引き換えに最も重たい政策修正の一歩を踏み出したということは、日本が金融正常化を実現した上でなお成長できるエンジンがあると判断したとも言えます。今後のエネルギー政策見直しを含めた脱炭素化技術やAI利活用から普及にむけた投資強化など諸外国に先んじるための環境整備が不可欠であり、市場が半導体株の一部によって下押しされているだけならば二番底懸念は杞憂で済みます。半導体株はいずれ出直ってくるとみてむしろ気がかりは為替円高の方であり、日経平均やTOPIXが景気循環線の200日移動平均線を回復できるまでは引き続き内需・ディフェンシブ株中心に押し目買い好機です。200日線を奪回したら景気敏感株の見直し買い、そして米利下げ期待の新興株や中小型株などに関しては米FOMCで事実売りにならないかに注意しながら取り組むのがよいでしょう。