【6/3日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,923.03(+1.13%)[38,734~39,032]
TOPIX 2,798.07(+0.92%)[2,791~2,809]
マザーズ 616.66(▲0.30%)[615~620]
値上がりセクターTOP5
1.証券・商品先物(+3.76%)
2.保険(+3.08%)
3.海運(+2.43%)
4.鉱業(+2.19%)
5.倉庫・運輸(+1.87%)
値下がりセクターTOP5
1.電気・ガス(▲1.08%)
2.輸送用機器(▲0.81%)
3.非鉄金属(▲0.53%)
4.金属製品(▲0.26%)
5.医薬品(▲0.22%)
日本市場は米国株高をうけて日経平均が一時39,000円台を回復、TOPIXは3月高値に迫る2800pt超えとなり、5月末の安値を叩いた水準から一気に買戻される動きでした。日銀の政策修正警戒が燻る中、日本の長期金利は5/30の1.1%から低下し日本株の出遅れ修正を支援しました。
東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1025/値下がり563と値上がり銘柄が優勢となる中、日米金利低下においても金融株が引き続き堅調でTOPIX上昇を牽引したほか、海運株はじめバリュー株優位の展開となりました。一方、金利上昇警戒で敬遠されやすい半導体株などが冴えず、レーザーテック(6920)、ソシオネクスト(6526)、ディスコ(6146)などAI向け半導体の人気株がそろって大幅安でした。また、認証不正で国交省による検査に迫られることとなった自動車株も売りに押され、全体の上値を抑えました。
日米ともに金利低下を追い風としたいハイテク株の反応がいまひとつで、中小型株もバリュー株優位のためか新興市場のグロース250指数は逆行安の展開。下落幅は小幅ながら朝方の買いが続かず、戻り売りに押される展開となりました。グロース市場では6/5に大型IPOでアストロスケール(186A)の新規上場を控えており、既存銘柄には戻り売り需要がなお強い状況が見て取れます。
【米国株概況】
エヌビディア頼みとなっている米ハイテク株上昇に警戒感、米金利低下を促す米経済指標悪化が調整要因にも
NYダウ 38,571.03(▲0.30%)[38,247~38,735]
S&P500 5,283.40(+0.11%)[5,234~5,302]
NASDAQ 16,828.67(+0.56%)[16,646~16,909]
ダウ輸送株 15,074.5(▲1.08%)[14,973~15,302]
半導体SOX 5,153.1(+0.58%)[5,059~5,215]
日経平均先物(CME) 38,650(▲0.75%)[38,430~39,045]
ドル/円 155.95~157.45(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 1.049%(高値1.100%:5/30、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.392%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 74.05(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2371.00(高値2,454:5/20、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.683(高値5.199:5/20、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.11(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 139.01(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 51(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)77.01(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は5月末にインフレ指標であるPCE価格指数の公表をうけてインフレ懸念がやや後退したことから、米FRBの利下げ期待の回復につなげつつ、続いて昨晩発表された米ISM製造業指数の悪化をうけて米金利は大きく低下しました。米金利低下をうけて米国株には買戻しを誘発した一方、高値警戒感からハイテク株においても反応がまちまちとなってきています。
◆米PCE価格指数、4月2.7%上昇と伸び横ばい 個人消費が鈍化(2024/6/1)
◆米ISM製造業指数、縮小ペースが加速-新規受注や生産が悪化(2024/6/3)
NYダウはセールスフォースの決算ミスやボーイングの荒い値動きなどから乱高下の展開となっており、ハイテク株主体のナスダックにおいても半導体大手エヌビディアの動向やそれ以外の半導体株、マグニフィセント7に代表される主力株に上昇時の一体感がみられず、高値波乱を演出しています。昨晩もエヌビディアが一強体制でナスダックおよび半導体SOX指数を押し上げたものの、他が追随せず米金利低下の恩恵を活かしきれなかったとみられます。
米経済指標の悪化により米利下げの早期実現を期待する向きは多いとみられ、今週末の米雇用統計においても予想下振れとなれば米金利低下を後押しすると考えられますが、他方で米景気悪化の実態も反映されることになるため、市場では景気敏感株を敬遠するトレードが優勢となるでしょう。
◆米株式市場の次の痛み、大型テクノロジー銘柄の下落か-BofA(2024/6/1)
◆アングル:米運輸株指数の低迷、景気減速のシグナルか(2024/6/3)
世界の景気動向はこれまで米国が堅調で、欧州・中国が低迷してきましたが、今後は反対に欧州・中国が政策支援で回復傾向を強める一方、米国の息切れ感が目立つ格好になってくるかと思われます。米国株においてはハイテク株の動向がカギを握っていますが、決算材料で一段高しているエヌビディアとそれ以外のハイテク株では強弱感の違いが浮き彫りとなっていることから、今後はエヌビディアの材料出尽くし感やハイテク株の上値が押さえられる状況に直面すると4月中旬以降のラリーにも一服感が漂うことになるかもしれません。
【日本株投資戦略】
日銀警戒の金利上昇警戒に一服感、売買代金不調の中で新興株物色に光明の兆し
日本市場は前回指摘した2年国債入札を経て金利上昇警戒がひとまずピークアウトし、長期金利は1.1%から徐々に低下傾向に向かいつつあります。本日の10年国債入札を無難に通過することで金利低下への自信を深めることで日本株の買戻しにつながりやすくなるとみられます。
日本株にとって課題だったのは日銀政策修正警戒における金利上昇と、慎重な企業業績見通し、売買代金の低迷が主因であることは前回も述べたとおりですが、その中で驚きだったのは5月末のリバランスで売買代金が史上最高の7.7兆円を記録したことでしょうか。ただし、これだけをもって売買代金が復活したとは言い切れず、実際のところでは5/31大引け前の時点では相変わらず4兆円に届かない状況でしたからMSCIリバランスの特殊要因が大きかったとみられます。
◆東証プライム売買代金、最高の7.7兆円 MSCI指数見直し(2024/5/31)
◆債券は上昇、弱い製造業指標で米金利低下-10年債入札に楽観的見方も(2024/6/4)
しかし、日銀政策修正の警戒感は日銀金融政策決定会合まで払拭は難しいものの、足元では金利上昇警戒がひとまず和らいできたことで5月の決算シーズン以降で執拗に売り浴びせられてきた銘柄群にはその過程で積み上がった空売りの買戻しにつながるとみられます。ただそれだけでは不十分で、日経平均が明確に25日移動平均線を回復してくるには半導体株や景気敏感株の上昇が欠かせません。
ところが足元では上述のとおり半導体株の主力どころがレーザーテック(6920)は5/23高値、ディスコ(6146)も5/29高値から売りに押される展開となっており、先導株の軟化が鮮明です。今の日本株を牽引しているのは金利敏感株の銀行・保険といったセクターで、バリュー株の底上げによる部分が大きいわけですが、これらの上昇が日銀会合を控えて一服してくるとなれば新たな主役が必要になってきます。
日本株は年初からの急上昇による反動から全体では調整ムードとなっているほか、海外では上記の米景気減退の動きが主流となるにしたがい景気敏感株ではなく、むしろディフェンシブ系、さらに米金利低下における円高圧力から内需系が優位となってくる可能性があります。日本国内では前回取り上げた景気足踏みの現状から、政府の6月に策定予定の骨太方針を鑑みてテーマ株の隆盛も期待されるところですが、一番は先日の訪米時に国賓待遇で外交ポイントを稼いだ岸田政権が思い切って解散総選挙に打って出ることです。ただ、これも本日時点では支持率低迷から脱却できず6月中旬の国会会期末をメドに解散する線は否定した模様で、こうなると日本株の戻り期待が途中で萎んでしまうことも考えられます。
◆岸田首相、今国会中の解散見送りへ 支持率低迷で政権立て直し専念(2024/6/4)
このまま売買代金が低迷する状況が続く場合、日本株の現状を考えるに夏枯れには早過ぎますので、5月の本決算シーズンにおける企業の業績見通しがあまりに保守的であることから次回7、8月の決算シーズンでは業績上方修正の可能性が否応なく高まります。日本企業の為替前提は140円近辺で現状における150円台半ば~160円の水準では輸出産業の業績は確実に上振れてくることがわかります。とすれば、主力株が真価を発揮してくるのは7月に向けて、本来の夏枯れ相場に入り始める時期の可能性もありそうです。
また、目先の金利上昇ピークアウトから銀行株が下落に転じ、指数の上値が重い展開になるとすれば米国株の調整に付き合わざるを得ず、その際に景気悪化懸念を反映したトレードでは半導体株や海運株など景気敏感株は敬遠されやすくなります。先導株不在となる中でリバーサルの動きが強まるのであれば医薬品や生活必需品などディフェンシブ株の底堅さが主軸となって下げ渋りの展開、あるいはもし金利低下の環境でしばらく落ち着くのであれば、金利上昇警戒で売られ過ぎたグロース250指数の新興株が小資金の物色でも値軽さが注目を集め、個人投資家のボーナス資金や配当金の再投資金流入で盛り上がりをみせるかもしれません。
◆日本の業績予想は例年以上に悲観的、上方修正サプライズで株高誘発も(2024/5/29)
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