【5/14日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,356.06(+0.46%)[38,084~38,477] 
TOPIX   2,730.95(+0.25%)[2,712~2,742]
マザーズ   659.26(+1.33%)[651~659]

値上がりセクターTOP5
1.石油・石炭(+6.15%)
2.その他製品(+3.48%)
3.海運(+2.14%)
4.サービス(+1.40%)
5.紙・パルプ(+1.19%)

値下がりセクターTOP5
1.証券・商品先物(▲2.31%)
2.ゴム(▲2.18%)
3.水産・農林(▲1.44%)
4.ガラス・土石(▲1.42%)
5.保険(▲1.34%)

 日本市場は企業決算が大詰めを迎えるとともに個別物色が中心となる中、全体では金利上昇や為替の通貨当局介入警戒もあり上値の重い展開となりつつ慎重に戻りを試しています。日経平均はファーストリテイリング(9983)や東京エレクトロン(8035)といった主力値がさ株が冴えない動きをみせ25日移動平均線のクリアに難航する一方、好業績内需株の影響が反映されやすいTOPIXは同線上で横ばいを続ける動きとなっています。

 通貨当局が為替円安に睨みをきかせる中でトヨタ(7203)をはじめ外需株の円安感応度が鈍っており、米国株と比べて出遅れ感も強まる展開。日本企業の今期業績見通しや想定為替レートには保守的な見方が相次いでいることも日本株の上値を遮る一因とみられますが、主要企業の決算が出揃い、かつ足元の金利上昇が一服してくることで次第に上値も軽くなっていきそうです。

 新興・中小型株市場では決算材料で大きく買われるものや、これまでに厳しい売り浴びせとなった銘柄の下落が底打ちし決算とともにアク抜けとなる銘柄が多く散見されます。GW明けから活発化している決算プレイを除くと、手を出しづらかった中小型株の見直し買いが再開となる動きもみられ、グロース250指数においても25日移動平均線突破後の上値余地が大きい点に期待が持てそうです。

【米国株概況】
米PPI上振れでもパウエル米FRB議長発言に安心感、米金利低下でナスダックは最高値を再び更新

NYダウ 39,558.11(+0.32%)[39,371~39,616] 
S&P500 5,246.68(+0.48%)[5,217~5,250] 
NASDAQ 16,511.18(+0.75%)[16,386~16,526]  
ダウ輸送株 15,562.9(▲0.42%)[15,511~15,764]
半導体SOX 4,903.9(+1.68%)[4,811~4,908]
日経平均先物(CME) 38,590(+0.73%)[38,080~38,610] 
ドル/円 156.16~156.73(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.950%(高値0.975%:2023/11/1、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.442%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 78.45(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2363.30(高値2,448:4/12、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.906(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.42(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 140.18(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 54(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)77.00(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は前回の米雇用統計に続いて米FRBが政策判断する上で重要視している物価統計が注目される中、昨日は米PPI(卸売物価指数)が市場予想比で上振れた一方、パウエル米FRB議長が再利上げの可能性を否定したことや政策金利の現状維持を強調したことで安心感を誘いリスクオンが継続しました。
パウエル議長、米金利をより長期に高水準で維持する可能性示す(2024/5/14)

 米PPIに関しては3月分が下方修正されたことによって4月での伸びが予想内にとどまるとの見方から過度な警戒感を呼び込むことには至らず、米金利においても一時上昇する場面がありつつも最終的には4.4%台に低下して終了しました。全体にはまだら模様と言えるPPIの中で変動の大きいコアの部分がやや強めの伸びとなったことが一部気がかりで、これが今晩の米CPI(消費者物価指数)や米小売売上高にとっても影響を及ぼしているかが焦点となりそうです。
米PPI、4月は予想上回る伸び-一部の主要項目は落ち着き示す(2024/5/14)

 注目度としては米CPI結果が最重要と言えそうですが、米PPIで予習した分市場影響としては仮に上振れ警戒となっても幾分緩和されるのではないかとみられます。一方の米小売売上高に関しては元より変動が大きくなりやすい面から一時的材料であるにせよ、市場影響としてはこちらの反応の方が大きく出やすいのではないかと思われます。

 米国経済にとってインフレ高止まりは経済好調の裏返しであるものと解釈される面がある一方、一部の地方都市ではスタグフレーションの懸念や米大統領選におけるバイデン政権の続投を脅かすものとなっていることから、米小売の下振れは米FRBにとっても看過できない材料となる可能性があるでしょう。そうした場合、悪材料がむしろ政策対応を促す良いニュースとなりやすく、前回取り上げた米FRBによるQT(量的引き締め)減速および流動性維持のためのSRF利用促進が後押しされ、足元のリスクオン相場を一層引き立てることにつながっていきそうです。

【日本株投資戦略】
出遅れ鮮明の日本株だからこその投資妙味、生成AIブームの再燃が日本経済の活力に

 日本市場はGW明け後の海外株高に追随!とはいかずに相対的に戻りの鈍さが目立つ動きを続けています。一因としては中央銀行による政策軌道の違いが浮き彫りとなっている形で、これから利下げに転じる欧米に対してここから利上げを始めていかなくてはならない日銀に市場の警戒感がにじむのも無理はないでしょう。

 しかし、日本株にとってひいては日本経済にとっても長年のデフレ脱却が最大の焦点かつ歴史的転換点を迎えようとしている現在においては、日銀警戒よりもインフレヘッジとしての日本株買いの重要性が日増しに高まってきています。海外市場に対して出遅れ感が否めないのは年初来の上昇から調整度合いが大きくなりやすい一面として受け入れざるを得ない一方、むしろ出直り後の上値余地の大きさにも着目していく必要があると言えます。

 日米デカップリングは前回指摘したように政策上の乖離によって今後も切り離すことのできない視点であると同時に、日本企業は新たなデフレ脱却後の経済対応への必要性から資本政策の変更や事業ポートフォリオの見直しなどを積極化させています。政府内ひいては世界中で議論の的となっている生成AI活用および社会実装に向けてのインフラ推進の流れが加速していくことに合わせて日本企業の生産性向上が投資マネーを呼び込むきっかけとなることでしょう。

 日本経済は相変わらずも実質賃金マイナスが続き今春の賃上げ影響を今夏に精査するスケジュールに合わせて日銀や政府は政策対応を練っているところです。市場は足元の動向よりも先を見据えて株価が織り込んでいく特性上、4月中旬の底打ちから反転へ、そして6月に向けて力強い上昇軌道を描いていくことが期待できるものと思われます。

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