【5/2日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,236.07(▲0.10%)[37,958~38,355]
TOPIX 2,728.53(▲0.03%)[2,713~2,735]
マザーズ 642.96(▲0.51%)[642~648]
値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+1.71%)
2.不動産(+0.93%)
3.保険(+0.87%)
4.卸売(+0.85%)
5.医薬品(+0.75%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲0.85%)
2.空運(▲0.81%)
3.倉庫・運輸(▲0.78%)
4.化学(▲0.70%)
5.銀行(▲0.66%)
日本市場はGWに突入して売買手控えとともに方向感に乏しい展開となる中、企業決算が佳境を迎えていることで個別物色が活発化している一面もあります。4月後半の金利上昇警戒感の中でグロース株への売り浴びせが落ち着きをみせ、日経平均は一時37,000円割れの水準から38,000円台を回復。指数寄与度の大きい半導体セクターを中心に買戻しの動きがみられています。
市場の焦点は株式よりも為替に注目が集められ、足元では日銀・財務省による米ドル売り・円買いの介入観測が話題となっています。日本株にとっては為替感応度の大きい輸出産業を中心に円高圧力への警戒感も意識されつつも、極端な円安局面において円安=株高の方程式が作用しづらかった事実もふまえますと、今後においてはむしろ過度な円安水準是正による日本経済の適正化を図る取り組みが重要とみられます。すでに日本企業は3月期末の決算を集計し終えた上で、今期の想定為替レートを算出し直す場面でもあることから、株価もよけいなプレミアムを排除して新しいバリュエーションが模索される段階にきていると言えます。
株式指数で全体感を把握する上ではTOPIXがいち早く25日移動平均線を奪回して出直りが鮮明であり、4月後半の金利上昇警戒や地政学リスク炸裂による投資センチメントの低下は乗り越えたとみてよいでしょう。足元の為替介入警戒感によって売られ過ぎたような銘柄においてはむしろ押し目買い好機が演出されたとみてよく、GW明け後の投資家が戻ってくることをふまえますと、水準低下が著しく昨秋以来にまで往って来いとなった新興市場などにも投資好機が訪れていると言えるでしょう。
【米国株概況】
米雇用指標悪化と米FRBスタンス一部修正で米利下げ期待復活、米ドル高是正とともにリスクオン
NYダウ 38,852.27(+0.46%)[38,689~38,886]
S&P500 5,180.74(+1.03%)[5,142~5,181]
NASDAQ 16,349.25(+1.19%)[16,197~16,350]
ダウ輸送株 15,380.9(+0.21%)[15,360~15,474]
半導体SOX 4,820.4(+2.21%)[4,739~4,820]
日経平均先物(CME) 38,880(+1.81%)[38,375~38,905]
ドル/円 152.78~154.00(高値160.03:4/29、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.894%(高値0.975%:2023/11/1、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.487%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 78.85(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2333.90(高値2,448:4/12、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.607(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.49(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 130.08(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 40(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)77.17(安値70.30:2022/10/13)
米国市場は中東の地政学リスク発でのインフレ再燃懸念と米利下げ期待の剥落、それらに伴う米金利上昇圧力によって投資家センチメントは著しく低下しましたが、かえって注目度が高まることになった米経済指標や米FOMCを迎えて米株相場は買い戻される展開となりました。市場内では米国一強となっていた米ドルの為替相場をめぐる乱高下のほか、インフレ長期化懸念を誘発した原油や商品価格上昇などが一服したこともあり、米利下げ見通しを改め直す段階を迎えています。
昨年末以降の低インフレ下における高成長実現のゴルディロックス相場は、米FRBによる早期利下げ期待とともに株高を正当化してきましたが、肝心の米利下げ時期が徐々に後ずれ(3月⇒6月⇒9月)する観測の下で高バリュエーションのグロース株、とりわけ象徴的な半導体株の急落によって主要米株式指数も押し下げられました。これはインフレ長期化を見ないふりしながら米債買いを進めた結果としての米金利低下=米株高が行き過ぎだったことを示すものであったかと思われます。
ようやく足元ではインフレ長期化の現実を直視するとともに、改めて米FRB金利政策における早期利下げ期待を放棄し、高インフレ下での米企業の収益力を見極める必要に迫られているとみてよいでしょう。米国経済におけるファンダメンタルズは各インフレ指標や消費関連、雇用関連指標がまだら模様となる中でも全体には堅調さを保持してきたとみられ、米市場を取り巻く金融環境はなおも緩和的でかつ実体経済においてもコロナ禍での過剰貯蓄効果が続いていたと言えます。この点において米FRBと市場認識とのギャップが取り沙汰されてきましたが、米FRBに軍配が上がって市場は調整を余儀なくされたとみるべきかと思います。
しかし、ここからは時間差的とも言えますが、直近の米経済指標においてインフレ圧力の緩和につながりそうなデータもようやく確認され始め、米FRBと市場認識とのギャップが埋まっていくとみられます。先日開かれた米FOMCに加えて4月米雇用統計の下振れにより米FRBはタカ派トーンを薄めることとなり、米金利は上昇基調から下降に転じました。市場は間違っていたというよりも単に勇み足であったに過ぎず、米株でみれば買われ過ぎが修正されるや否や、今度は年内利下げなしの可能性までも織り込んで売り過ぎたというのがこの3月から4月後半にかけての動きであったとみられます。
◆パウエル議長、年内利下げの期待残す-インフレ圧力緩和の確度は低下(2024/5/2)
◆米4月雇用17.5万人増、予想下回る 賃金伸び鈍化 失業率3.9%(2024/5/4)
◆米国債利回り急低下、利下げ開始予想9月に前倒し-雇用統計後(2024/5/3)
米FRB内でも高インフレ環境がこの1年で緩和した事実認識をふまえつつ、パウエル米FRB議長の発言からはこれまでの米金融政策で重きを置いてきたインフレデータよりも今後はもう一つの使命である雇用にも焦点を合わせていく、といった言わば原点回帰に直言したことを考えますと、市場が先走った早期利下げの期待が雇用データを中心とした今後の経済データが悪化していくことで復活する道筋が見えてきたことになります。
そのためには今後のインフレ関連指標として米CPI(消費者物価指数)をはじめ、先日の米ISM製造業、米非製造業における支払価格の急騰のゆくえ、米個人消費に関連する米企業業績やミシガン大消費者マインド指数からインフレ期待率の動向なども注視していく必要性は変わらないものの、この先本当に米国経済において利下げ転換が必要に迫られる局面が訪れても不思議ではなく、要はタイムリミットの問題になってくるのかもしれません。
それに向けて米FRBは今回のFOMC声明においてQT(量的引き締め)減速を発表するとともに、米財務省も米国債の増発計画は据え置いた上で買戻しを実施する計画を明らかにしました。これらは必然的に米国債市場における流動性を改善させ、米金利には低下圧力がかかることになります。つまり、実質的に金融環境は緩和的である状態が維持され、米株にとっては非常にポジティブな影響を与えることになります。したがって、米国株は4月の調整が一巡して再び騰勢を強めてくる期待が持てるようになるとみられ、6月に向けてリスク資産は順次リスクオンの様相を呈するようになっていくものと考えられます。
◆米FRB、6月からバランスシート圧縮のペースを減速-市場に配慮(2024/5/2)
◆米財務省、四半期入札の規模を据え置き-5月から買い戻し開始(2024/5/1)
【日本株投資戦略】
GW明けは急転回のリスクオン相場で再開、為替介入での押し目買いが奏功して空前の株高展開へ
日本市場は前回の地政学リスク発でのリスクオフを世界の株式市場よりもまともに食らいながら売り込まれ、さらに日銀金融政策決定会合における金融正常化警戒が強まった中でGWに突入していきました。解説では地政学リスクとともにもう一つの焦点として日本当局による為替介入の発動タイミングも押し目買い好機を演出することになるとみておりましたが、これもこのGW中の流動性が薄く相場インパクトが最も強く影響出やすいタイミングを見計らって実施されました。
幸いにも(?)中東の地政学リスクとしてイスラエル勢によるラファ侵攻が重ならなかったことで、日経平均やTOPIXなどは4/19が安値となり、その後の緩やかな戻り歩調を辿っています。しかし、とりわけ新興市場のグロース250指数をみると日米ともに金利上昇警戒と相まってリスクオフの影響が全面に押し出される形で資金流出となり、昨年10月末以来の水準にまで往って来いとなっていることからグロース株売りの象徴とも言えます。
この間に米FRBの金融政策をめぐる利下げ観測の著しい変化があったにせよ日本市場におけるグロース株警戒は凄惨と売り浴びせと疑われるような下げを演じました。ただ、上述したように米利下げ期待を背景としたリスクオンで性急に買われ過ぎとなったことからみれば、その反動による部分が大きく、一種の振るい落としと言えるものであったかと思われます。その証拠に主力株においては下値模索の動きの中でも銘柄によっては積極的に押し目買いが入り出来高がそれなりに膨らんでいたものもあり、投げ売りが相次いだ銘柄は相対的に新興・中小型株を中心に信用買いが積み上がっていた銘柄に多かったと見受けられます。
ひとまず信用需給の整理がついた段階である今、これからの動きの中で焦点になるのは引き続き為替介入をめぐる当局と市場との駆け引きが中心になるかと思われます。これまでの金融史を振り返ってもこれは今回の介入で決着がつくというようなものではなく、今後も日米当局の政治的動機から最終的に日銀による国債買入の停止や米FRBの利下げ開始のタイミングを迎えるまでは円安基調の転換を実現されづらく、また、国際的な米ドル高是正の声が大きくなり通貨危機と騒がれるまで攻防が続くものとみられます。
米国勢にいたってはかねてよりのインフレ対策として米ドル高政策を採るバイデン米政権のスタンスは、直近のインフレ再燃懸念によってバイデン米大統領再選にとって逆風とみなされていることから転換は難しく、日本がいくら単独で為替介入に踏み切っても効果は薄いと言わざるをえないのが実状です。その転機となり得るのは国際協調での米ドル高是正、さらにはウクライナ戦争をはじめとする戦争・インフレ経済にある一定の落とし所を見つけた上で、破壊と創造のプロセスにおける次の段階に進む時であると考えられます。
◆サマーズ氏、「円はどちらの方向にも動き得る」-為替介入は効果なし(2024/5/4)
◆米財務長官、為替介入「まれであるべきだ」-慎重姿勢示す(2024/5/5)
いわばそれまでの間に日米金融政策のギャップをふまえながら徐々に日米デカップリングの兆候を見せ始めるとともに、円安=株高の市場ロジックから円高=株高への転換が図られ、米利下げ転換を迎えるにあたって決定的なものとなっていくはずです。その際には、これまでの市場ロジック変更に合わせてグローバルな大規模リバランスが生じることとなり、市場急落およびV字回復を伴った劇的な相場変動が演出されることになりそうです。そこに向けて今は助走をつけていく段階にあり、再び米利下げ期待の復活が喧伝され始めた今後1、2か月においては年初来のリスクオン相場をさらに飛躍させたような異次元の株高展開が演出される可能性があるでしょう。
※スタンダード会員へご登録いただくと、1.今後のマーケットについても展望する【先読みの近未来】、2.日々の≪重要ニューストピック≫を厳選して深堀りする【揺れ動く世界情勢の解説】などを加えた内容充実のメールマガジンをお届けします。