【3/14日本市場の確認ポイント】
日経平均 38,807.38(+0.29%)[38,400~38,840]
TOPIX   2,661.59(+0.49%)[2,636~2,662]
マザーズ   738.20(▲0.12%)[729~741]

値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+4.12%)
2.石油・石炭(+4.09%)
3.非鉄金属(+3.18%)
4.鉱業(+2.72%)
5.不動産(+1.84%)

値下がりセクターTOP5
1.紙・パルプ(▲0.92%)
2.銀行(▲0.54%)
3.サービス(▲0.52%)
4.精密機器(▲0.08%)
5.なし

 日本市場は3月11日の急落をうけて調整地合いが継続、半導体・AIブームが鳴りを潜める中で日銀金融政策決定会合を来週に控え国会での植田総裁答弁を神経質に見守る展開が続きます。日本企業の賃上げをめぐり春闘での満額回答が相次ぎ日銀マイナス金利解除の観測とともに投資家の押し目買いと戻り売りが交錯。日経平均は25日移動平均線付近での攻防となっています。

 昨日の東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1236/値下がり382と値上がり優勢。米経済指標や来週の中央銀行ウィークを前に様子見姿勢が強く売買代金は低減、やや下振れ場面がみられても底堅さも垣間見える相場です。日経平均寄与度の大きいハイテク株やTOPIXへの影響が大きい自動車、銀行セクターなど主力株が調整を進める中、バリュー系セクターの石油、非鉄金属、電気・ガスなどが堅調で全体を下支えしました。

 新興・中小型株は急落時の投資センチメント悪化、グロース250指数は25日移動平均線を割り込む動きとなる中で半導体・AIブームで活況となった銘柄群の下落が目立つようになっています。信用規制措置がしかれるほどの急騰をみせた人気株やテーマ性だけで連れ高していた銘柄の多くが下落に転じ、乗り遅れていた投資家や押し目待ちだった投資家との間で手替わりが進んでいるとみられます。金利敏感な新興株には日銀政策修正への警戒感も燻り、日銀イベントを消化待ちする展開と言えるでしょう。

【米国株概況】
インフレ指標上振れで米早期利下げ期待が後退、米金利上昇で株安よりも気になる商品高が映すインフレ再燃のゆくえ

NYダウ 38,905.66(▲0.35%)[38,704~39,160]  
S&P500 5,150.48(▲0.29%)[5,123~5,176] 
NASDAQ 16,128.53(▲0.30%)[16,039~16,245] 
ダウ輸送株 15,607.7(▲1.34%)[15,490~15,813]
半導体SOX 4,783.6(▲1.75%)[4,741~4,880]
日経平均先物(CME) 38,290(▲0.78%)[38,080~39,670]
ドル/円 147.43~148.35(高値151.93:2023/10/21、安値127.46:2023/1/3)
日10年債利回り 0.770%(高値0.975%:2023/11/1、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.292%(高値5.000%:2023/10/19、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 81.08(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:2023/5/4)
金先物 2166.15(高値2,203:3/8、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 4.051(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)14.40(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 143.95(安値110.34:2022/11/3、高値170.52:2/13)
Fear&Greed指数 73(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)77.12(安値70.30:2022/10/13)

 米国市場は先日の米CPI(消費者物価指数)上振れに続いて米PPI(生産者物価指数)も市場予想を大きく上回ったことで米FRBの利下げ期待が後退。米CPI結果ではさほど気にしていなかった米株市場ですが、米FRBの政策判断にも影響する米PPIも上振れとなったことで米金利は一段と上昇。12日は米金利上昇でも株高となりましたが、昨晩はエヌビディアやテスラなどのハイテク株大幅安が重しとなり主要3指数がそろって下落しました。
米コアCPI、2カ月連続で伸びが予想以上-利下げ慎重論を補強(2024/3/12)
米PPI、2月は予想上回る大幅上昇-インフレ持続の新たな兆候(2024/3/14)
FRBが利下げ遅らせる理由、さらに増加-11月まで据え置き予想も(2024/3/15)

 NYダウは一時▲300ドル超安となる場面がありつつも、ビッグテックのマイクロソフト、アップルが奮起。同じくマグニフィセント7に名を連ねるアルファベットやアマゾンが上昇寄与しS&P500も引けにかけては下げ幅を縮小しました。一方で、2月米小売売上高も公表され市場予想を下回ったほか、前月分も下方修正され、米個人消費の底堅さに対してもやや懸念が浮上してくる結果となりました。
米小売売上高は予想下回る、前月も下方修正-消費の底堅さに懸念(2024/3/14)

 粘着質なインフレ高止まりに対し米FRBによる早期利下げ期待も剥落していく中、同時に米個人消費や雇用悪化などのデータが積み上がれば政策判断はより複雑になります。利下げ時期が後ずれすれば米経済への打撃も大きくなりますが、かといって金融市場も単純に下落するかというと一概には言えません。これまでと同様に金融環境は米FRBが資金供給策で下支えする公算がむしろ高まりやすくなるからです。

 昨晩のインフレ指標に加えて商品市場ではWTI原油先物価格が81ドル超えとなったほか、中国の銅精錬企業の生産調整などから銅価格も上昇。中国需要減退と伝えられながら供給が減れば価格は上昇しますし、原油市場もOPECプラスが価格高止まりのために減産姿勢を続けています。市場はインフレ再燃と向き合いながら金利再上昇にも備えていく必要が出てくるかもしれません。

【日本株投資戦略】
急落後の余波が続く裏で日銀緩和策修正の織り込みも進む、中銀イベント通過後の強気相場再開に期待

 日本市場は18・19日に予定される日銀金融政策決定会合を前に神経質な動きとなりながら、前回解説したように日経平均は25日移動平均線まで調整しました。今週は為替ドル円が146円台半ばまで円高が進み株安警戒感も強まりましたが、米経済指標で注目された米CPI(消費者物価指数)上振れなどから米ドルが持ち直し、日本株も下げ渋る動きをみせています。引き続き、為替動向には最大の注意を払いながら来週の中央銀行ウィークにも臨みたいところです。

 下値の確認作業においては国会での植田日銀総裁答弁がプレ日銀会合とも言うべき踏み込んだ内容に注目が高まり、ザラ場での値動きも乱高下しています。日銀政策修正の有無に対する思惑が交錯している分、マイナス金利解除の時期が3月でも4月でも市場の織り込みが着実に進んできているとみられます。とくに足元の春闘における企業の賃上げ機運の高まりのほか、3/11のTOPIX大幅反落に際して日銀ETF買いが見送られたことも金融正常化に向かうとの観測を後押ししました。したがって、仮に今回の会合で解除された場合であっても市場動揺は早期に収まるのではないかと思われます。むしろ長年続いたデフレ経済からの脱却を歓迎し、その後の展開では海外マネーを呼び込みやすくなると言っても過言ではないでしょう。
日銀、マイナス金利解除で調整 高水準賃上げ、物価2%実現に自信―連合集計踏まえ最終判断(2024/3/14)
コラム:日銀の背中押す春闘、植田総裁会見で占う「次」の展開(2024/3/14)
マイナス金利・YCC・ETF買い、同時解除に株式市場警戒(2024/3/14)

 米半導体株の調整にしたがって日本も値がさハイテク株の動向に振り回されがちになることは否めませんが、今年乗り遅れた投資家にとっては待ちに待った押し目買い好機となります。日本は年度末となる月末に向かって年金やファンド、金融機関などからの売り圧力が強まりやすい時期ではあるものの、日銀イベントをこなした後の不透明感解消による押し目買い妙味の方が断然上回るものと思われます。そもそも年初からの上昇相場で年金やファンドなどはほぼ一貫して売り越しなのに対し、海外勢はじめ企業の自社株買いや証券の自己売買が買い受ける構図は大きく変わっていません。

 とくに足元では半導体・AIブームで一極集中気味だった市場の物色傾向も分散されてくるようになり、指数が下落幅を拡大させる場面でも逆行高するセクターも多く見られ、投資の選択肢に広がりが感じられるようになっています。もちろん、めざましい上昇を見送りながら高嶺の花だった半導体・AI関連株も直近では欧米でAI規制の具体案が議論とともに調整を強いられる一方、今後の社会普及で業績向上が見込めそうな銘柄なら必ず出直り相場がやってきます。

 来週の日銀会合以外にも注目点はありますが、それらを差し置いても19日の日銀会合後を見据えて強気の押し目買いが有効になる場面だと思います。海外情勢がややきな臭くなっていて、突発的な地政学リスクに市場が動揺する可能性もないわけではありません。昨晩の福島県沖地震の速報で日経先物の下落が加速したように自然災害、気候変動リスクも同様です。
福島で震度5弱 原発処理水の放出停止(2024/3/15)

 しかし、あらかじめ心の準備をしておきながらもう一段安となるような下振れ場面があっても冷静な対応が肝心です。買いの価格、タイミングを分散させ、ピンチをむしろ大きなチャンスに変えることができるでしょう。ちょうど相場格言の『彼岸底』も意識しながら次の強気相場再開の展開にこそ備えていくべき局面だと考えます。つまり、この15日~18・19日はわかりやすく買い場を演出することになるのでしょう。

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