【10/6日本市場の確認ポイント】
日経平均 30,994.67(▲0.26%)[30,928~31,160]
TOPIX   2,264.08(+0.01%)[2,256~2,278]
マザーズ   701.27(+0.12%)[691~702]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+2.09%)
2.紙・パルプ(+1.45%)
3.電気・ガス(+1.24%)
4.食料品(+1.15%)
5.証券・商品先物(+1.11%)

値下がりセクターTOP5
1.鉱業(▲2.21%)
2.精密機器(▲0.67%)
3.電気機器(▲0.64%)
4.銀行(▲0.45%)
5.機械(▲0.30%)

 日本市場は米雇用統計を控えた様子見ムードが強まる中、3連休を前にポジション調整もあり一進一退。売りポジション偏重の解消による買戻しニーズも多いとみられ、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1284/値下がり507と値上がり銘柄が優勢となりました。TOPIXは朝安後に断続的な買いでプラス圏での推移が続き、新興マザーズ指数もプラス圏に切り返しました。

 日経平均は東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)など半導体株やファーストリテイリング(9983)、エムスリー(2413)などグロース株が下落寄与で重しとなり小幅安でした。しかし、海運株の続伸や電力、食料品、建設など内需株が総じてしっかりの展開であったほか、商社や自動車などバリュー系の主力どころが堅調だったことから地合いは改善傾向。米長期金利の上昇一服感からメガバンクや保険株などは軟調でした。

 週間を通じて米金利にらみの全面安商状が続いたことからリスク回避姿勢が燻っているものの、バリュー株や内需株を中心に値ごろ感からの買いも入りやすくなったとみられます。外需株には総じて戻りの鈍さは目立つものの外部環境の改善を待つ展開と言えます。グロース株にしても半導体株のレーザーテック(6920)やマザーズ指数の持ち直しにみられるように、リスク許容度の大きい投資家から押し目買い意欲は高いとみられます。

【米国株概況】
米雇用統計通過と中東地政学リスクの台頭で米長期金利は急低下、米国の戦争経済依存と石油・軍需銘柄への資金流入

NYダウ 33,604.65(+0.59%)[33,253~33,631]
S&P500 4,335.66(+0.63%)[4,283~4,341]
NASDAQ 13,484.24(+0.39%)[13,277~13,509]
ダウ輸送株 14,975.5(+1.13%)[14,660~14,980]
半導体SOX 3,467.4(▲0.23%)[3,414~3,475]
日経平均先物(CME) 31,255(+0.76%)[30,930~31,330]
ドル/円 148.33~149.50(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.799%(高値0.816%:10/5、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.640%(高値4.887%:10/6、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 86.38(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1875.00(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.656(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)17.70(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 133.64(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 30(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.23(安値70.30:10/13)

 米国市場はまず前週末の米雇用統計の予想上振れを受けて米長期金利が一段と上昇する場面があり、一時的に株安反応を見せましたが、大幅増加は正規雇用ではなくパートタイマーが大半との内容精査で米金利の上昇幅が縮小すると一転して買い戻す動きが強まりました。この週末にはイスラエル・ハマスの大規模衝突で市場の関心は地政学リスクへと向かい、急落していた原油相場の急反発や安全資産需要からの米国債、米ドル買いが強まり、米金利は一気に低下するとともに米国株も続伸しました。

 強い米労働市場をふまえて米FRBは利上げスタンスを強化するとの懸念が広がったものの、先週のサンフランシスコ連銀総裁に続いて足元の米金利上昇が利上げの必要性を低下させるとの見方をダラス連銀のローガン総裁も言及したことにより米国債が一気に買い進まれることになりました。これにはもちろん中東の地政学リスク炸裂によるリスク回避の動きも含まれていることは間違いありませんが、米債市場はコロンブス・デーで休場ともなったために米金利の動向は10年債の極めて局所的な動きでしか織り込めていません。

 過去の中東戦争における相場の歴史もあり戦争勃発中の市場は冷静を保ちながらも、戦域の拡大やその後の諸外国による規制動向などによってサプライチェーンが混乱し、オイルショックへとつながった教訓があります。この時、時間差で株安と同時に原油・金などが買われた経緯があり、足元では戦争関連として軍需産業銘柄、原油をはじめエネルギー関連、金・銀などの鉱物資源などのほか、一部のディフェンシブ銘柄などにも資金流入がみられます。

 昨年のロシアによるウクライナ侵攻時も「遠くの戦争は買い」との相場格言どおり、戦争は相場にとって買い材料となることは間違いありませんが、昨今のリスクは地政学リスク単体ではなく複合危機に晒されていますのでボラティリティ上昇による株安場面も想定しながら事態の成り行きを見守る必要があります。しかし、中東混乱による地政学リスクが米国にとってはエネルギー資源の需要増、米国債の需要増などから波及する戦争経済が国益となることは間違いなく、米国株にとってもいずれ戻り相場の刺激材料につながっていくことでしょう。

【日本株投資戦略】
地政学リスクの炸裂で反発する戦争銘柄とインフレトレードの再燃、ボラティリティ高止まりを前提に利食いと仕込みのメリハリある投資を

 日本市場は3連休をはさんでこの週末に起こった市場材料を順次消化していくことになるとみられますが、まずは米雇用統計や中東戦争リスクで米金利低下をうけた株式の買戻しが一段と強まることでしょう。ただし、外部環境が改善したのではなく地政学リスク懸念が重しとなる中でのエネルギー、軍需、鉱物資源などテーマ性を帯びた物色に偏重しがちになることもふまえ、日本株でも選別色が強まることを念頭に置いておくべきでしょう。

 米金利上昇による投資家のリスク回避姿勢が今度は地政学リスクへと焦点が移ったことにより、テーマ連想されやすい石油関連や防衛関連の重工3社、インフレトレードとしての海運、商社、鉄鋼、非鉄金属などのバリュー株が選好されやすくなるとみられます。また、米金利の急低下に伴い半導体株をはじめハイテクグロース株にも買戻しが発生する可能性がありますが、投資家のリスク選好が強まるのは一回り遅れてのものになるかもしれません。

 反対に、原油やエネルギー価格高騰から敬遠されやすくなる空運や電力、輸入物価上昇圧力に弱い業種、銘柄などは強く売られてしまう可能性もありますので、安易に押し目買いなどはできません。しばらく経って、中東情勢の混乱が市場にある程度織り込まれた段階からであれば見直し買いが入り始めるとみられますが、目先は地政学リスクによる影響拡大も視野に入れておく必要があると思われます。

 上記の【米国株概況】でもふれたとおり、「遠くの戦争は買い」で株式投資は悲惨な戦争ニュースを強気の対応で臨む姿勢が大事と言えます。ただし、この中東情勢の緊迫化がウクライナ戦争と同時進行することになり、明らかに弱体化している米国覇権は二方面作戦を強いられるばかりか、足元では対中敵視政策も進めてきた経緯も相まって、この有事をきっかけに中国・台湾あるいは北朝鮮も含めた同時多発的地政学リスクの広がりに対する警戒は必要となります。

 「遠くの戦争は買い」ながら、当然「近くの戦争は売り」となりますので、市場の懸念の矛先が耐えず揺れ動いてボラティリティを増幅させる可能性があることには留意して取り組む必要があります。先週までの米金利上昇に対する懸念はもはや地政学リスクに取って代わられることとなりましたので、市場の物色もガラリと入れ替わる可能性があります。しかし、総論的に言えば反発のきっかけにつながるものであり、今週から来週にかけては市場乱高下に振るい落とされないように心がけるとともに、リスク管理を徹底しながら下値を拾っておくようにするとリバウンド相場で期待以上のリターンが獲得できることでしょう。

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