【8/8日本市場の確認ポイント】
日経平均 32,377.29(+0.38%)[32,238~32,539]
TOPIX 2,291.73(+0.34%)[2,286~2,300]
マザーズ 758.08(▲1.65%)[758~770]
値上がりセクターTOP5
1.電気・ガス(+2.77%)
2.海運(+2.46%)
3.食料品(+2.16%)
4.不動産(+1.55%)
5.ゴム(+1.22%)
値下がりセクターTOP5
1.保険(▲0.68%)
2.精密機器(▲0.58%)
3.鉱業(▲0.34%)
4.その他製品(▲0.18%)
5.銀行(▲0.16%)
日本市場は米国株の反発を受けて自律反発の動きが続くも上値の重い展開、日経平均は32,000円台を値固めしつつ下値不安は徐々に緩和へ向かっています。ただ主力株の動向が冴えず、アドバンテスト(6857)が下値拡大するなど半導体関連株の軟調や決算銘柄の下落などが重しとなって戻り幅を縮小しました。
決算銘柄では好決算発表の三菱重工(7011)が証券会社の投資判断引き上げによって川崎重工(7012)にも連想買いが入るなどして強く買われていましたが、後場の決算発表後は一転売り優勢の展開になりマイナス転換。引け後の決算発表が注目されたソフトバンクG(9984)は期待買いを集めましたが黒字転換には至りませんでした。
一方、相場上昇をけん引したのは電力・ガスや食料品などディフェンシブセクターでしたが、その傍らで海運大手の川崎汽船(9107)も+5%超の大幅高で気を吐き、海運セクターも値上がり上位に食い込みました。その他に決算材料で不動産株なども強く、相対的に内需株の堅調さが印象的な相場です。反面、グロース市場の新興銘柄は前日こそ自律反発を強めましたが往って来いの下落となり、まだ決算を通過できていない銘柄も多く下値警戒感が燻っています。
【米国株概況】
米欧中で金融株を揺るがす悪材料が連発、目先の金融不安を煽る材料をかわしつつ押し目買い好機を狙う
NYダウ 35,314.49(▲0.45%)[35,007~35,346]
S&P500 4,499.38(▲0.42%)[4,464~4,503]
NASDAQ 13,884.32(▲0.79%)[13,769~13,899]
ダウ輸送株 16,305.0(▲0.56%)[16,159~16,325]
半導体SOX 3,679.4(▲1.60%)[3,631~3,685]
日経平均先物(CME) 32,310(+0.06%)[32,085~32,525]
ドル/円 142.39~143.48(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.592%(高値0.661%:8/3、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 4.022%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 82.75(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1958.75(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.776(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)15.99(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 142.30(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 70(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.95(安値70.30:10/13)
米国市場は格付会社ムーディーズが米中小銀行格下げが嫌気された金融株が主導する形で下落、終盤にかけては買い戻される動きもみられましたが主要株式3指数はそろって反落となりました。NYダウは一時▲465ドル安となるなど前日の上昇分を吐き出しましたが、医薬品・ヘルスケアや公益などディフェンシブセクターが逆行高して相場を下支えしました。大きく売られていたアップルもプラス転換でひとまずハイテク株の警戒感も多少緩和しました。
米国時間の取引前にはまず中国の不動産開発会社である碧桂園によるドル建て債の利払不履行が伝えられたほか、欧州ではイタリア政府が銀行の超過利潤に40%課税すると発表して伊銀行株が急落、金融セクターにとってネガティブなニュースが相次ぎました。米銀行に関しても今回の格下げは主に中小・中堅の米銀行が対象でしたが、大手銀行株も一緒に売られるなど相場全体の重しになりました。格下げだけならまだ良いですが、預金流失リスクや商業用不動産融資の焦げ付きリスクなどの内容的にはクリティカルな信用リスクに直結しかねないものだけに、金融市場はやや神経質にならざるを得ないと言えます。
◆BNYなど米銀6行格付け見直し、中小10行格下げ-ムーディーズ(2023/8/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-08/RZ1R4SDWLU6801?srnd=cojp-v2
◆碧桂園の一部社債保有者、期限内に利払い受けず-香港で株価急落(2023/8/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-08/RZ280ODWLU6801?srnd=cojp-v2
◆イタリア、銀行の今年分の「超過利潤」に予想外の課税-株価下落(2023/8/8)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-08/RZ28DHT0AFB401?srnd=cojp-v2
ただ、このままなし崩し的に金融不安へ向かうかと言えばそうではなく、先日解説しましたように金融当局はBTFPでセーフティネットを用意してあるため大きな混乱にはつながりにくいはずです。相場展開としては明日の7月米CPIや足元の米国債入札を無難に消化できることの方が重要との見方に変わりはなく、米金融政策における利上げの引き締め効果と緊急資金供給対応の金融緩和効果の綱引きの中で考えますと、緩和影響に分があるため上述した金融不安ネタで大きく下げる場面は押し目買い好機となる可能性が高いと言えるでしょう。
そうは言っても8月中旬はただでさえ季節性の波乱要因が警戒される時期でもありますので買い出動のタイミングは慎重に見極めていく必要があります。少なくとも来週の米国SQを消化するまでは半身に構えておくスタンスで臨むのが無難と言えるでしょう。他方で、ソフトバンク傘下の英半導体アームが9月にナスダックIPOする運びとなり、これにアップルや韓国のサムスン電子などが出資すると報じられています。これはつまるところ、9月にはナスダック市場環境は改善して大きな盛り上げ役になるネタとして使われることは容易に想像できますので、目先の金融不安ネタで下振れする場面はいずれにしても買い場演出ということになるのでしょう。
【日本株投資戦略】
決算プレイで沸き立つ短期筋を横目に外部環境悪化で押し目待ちするバーゲンハンター、金融不安材料は買い場を演出するか
日本株は決算材料によって選別物色が強まる相場の中で指数影響の大きい主力株、とりわけ半導体株の軟調が相場の足を引っ張る展開となっています。為替がドル高円安に振れてきているものの日経平均の上値が重いということは、それだけ上昇エネルギーが不足している実態を映しているとみられ、7月末からみて徐々に売買代金が細ってきていることに注目する必要があります。
投資家が夏休みモードに突入して地合い悪化に直面した際の売り手は焦って売り急ぎますが、買い手は悠然と構えてチャンスとみた時にしか押し目買いに動きません。いや、日々の売買の中でも一昔前に比べれば押し目買いに動く投資家は多いと思えるのですが、最近の市場売買エネルギーが高水準であることをふまえれば、まだまだ物足りないというところなのだと思われます。
日本市場は半導体株などの調整圧力からしてみればそれでもよく耐えていると言えるかと思いますし、その原動力になっているのはやはり内需株です。好業績を裏付けとした内需株や配当利回りの高い海運株や商社株、鉄鋼株や建設株、不動産株などが指数インパクトは小さいながらに全体の下支え役となっていることで前回解説したようにTOPIXを底堅くさせているものとみられます。
ここに同じく配当利回りの高い銀行株なども加えるべきと思いますが、上述したように銀行はじめ証券、保険など金融株は足元の金融不安ネタによってやや調整をはさむ可能性もありますので、しばし様子見が賢明といったところです。もし外部環境に引っ張られて大きく売られる場面などが出てくれば、3月の時と同様に押し目買い好機となることは間違いないでしょう。
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