【8/3日本市場の確認ポイント】
日経平均 32,159.28(▲1.68%)[32,142~32,467]
TOPIX 2,268.35(▲1.45%)[2,265~2,285]
マザーズ 761.40(▲1.36%)[761~767]
値上がりセクターTOP5
1.海運(+4.55%)
2.紙・パルプ(+0.05%)
3.なし
4.なし
5.なし
値下がりセクターTOP5
1.非鉄金属(▲4.08%)
2.輸送用機器(▲2.77%)
3.ゴム(▲2.47%)
4.鉱業(▲2.34%)
5.保険(▲2.21%)
日本市場は大幅続落で日銀会合前の水準に往って来いの動き、日経平均は8/1の33,500円付近から2日間で▲1,300円の下げ幅になっています。直近の下値は7/12安値の31,791円が意識されるところ、すでに時間外先物で底割れの動きがみられており、下値警戒で投げ売りも出やすい状況と言えます。
米国格下げのショッキングなニュースから金利上昇に拍車がかかり、グロース株が狙い撃ちにされました。一方のバリュー株はトヨタ決算を好感して自動車株が反発の動きを見せましたが、昨日はこれらも利益確定売りに押されて総崩れに。ただ、バリュー系で日本郵船(9101)はじめ海運大手が決算材料でそろって逆行高をみせており、TOPIXはやや下げ渋っています。
東証プライムの騰落銘柄数は値上がり158/値下がり1666とほぼ全面安商状で、海運セクター以外は全滅と言えます。下落を主導するのは半導体株でTDK(6762)が決算ミスから▲10%超の大幅安、ファーストリテイリング(9983)も月次好調ながらも売りに押されるなど先物主導の下げに抗えない様子。金利上昇が嫌気されるグロース株は新興市場の警戒感にもつながり、マザーズ指数は下値模索の展開を強いられています。
【米国株概況】
米国格下げより米財政赤字の拡大とインフレ長期化が焦点、米長期〜超長期金利の急上昇でグロース株への逆風は続く
NYダウ 35,630.68(+0.20%)[35,526~35,679]
S&P500 4,576.73(▲0.27%)[4,567~4,584]
NASDAQ 14,283.91(▲0.43%)[14,215~14,309]
ダウ輸送株 16,530.4(▲0.52%)[16,319~16,574]
半導体SOX 3,858.2(▲0.09%)[3,818~3,866]
日経平均先物(CME) 33,200(▲0.63%)[33,150~33,470]
ドル/円 142.21~143.53(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.592%(高値0.612%:7/31、安値0.131%:2022/3/6)【高値更新】
米10年債利回り 4.023%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 82.10(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1987.80(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.910(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.93(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 142.57(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 77(EXTREME GREED:極度の貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.77(安値70.30:10/13)
米国市場は格付会社フィッチによる米国格下げに加え、米財務省の国債増発発表も相まって米金利が上昇、ハイテクグロース株を中心に警戒売りが広がりました。米国債は各年限を通じて利回りが急上昇し、米2年債利回りは5%に接近、米10年債利回りも4%突破から昨年11月以来の高値をつけてきました。
金利低下を背景に米国株の戻りを牽引してきたビッグテック株ですが、米金利上昇が逆風となって売られています。引け後のアップル、アマゾンの決算発表があり、アマゾンは広告とAWSが市場予想を上回り時間外で+10%超の急騰となっています。アップルはやや乱高下で小幅安の模様。しかし、米金利上昇にフォーカスすると米国格下げそれ自体での悪材料というよりも米国債は長期物中心に売られイールドカーブが急速にスティープ化しています。
超長期の米30年債利回りの急上昇のおかげで住宅ローン金利も再び7%台に上昇。本来であれば米国格下げが要因としたら国債よりハイイールド債などの方が売られて然るべきですがむしろ逆の動きになっています。ということは米国格下げなど関係なく、ヘッジファンドの仕掛け売りで、どちらかと言えば米景気が堅調過ぎてインフレ長期化観測がこのトレードの背景にあるとみられます。しかしそれに対して著名投資家のウォーレン・バフェット氏は淡々と米国債購入を継続すると表明、ヘッジファンドVS長期投資家(一応)と絵に描いたような構図で非常に面白い展開となっています。
◆BofAのリセッション予想撤回、力強い雇用と消費が理由-CEO(2023/8/4)
◆米労働生産性、約3年ぶりの大幅上昇-労働コストの伸びを相殺(2023/8/3)
◆米著名投資家アックマン氏、30年物米国債をショートに(2023/8/3)
◆バフェット氏、米国債を購入-フィッチの格下げ「心配いらない」(2023/8/3)
重要なポイントは米財務省の財政赤字拡大と共に米国債発行額の拡大がさらに加速する見込みで、インフレ制御が困難になることを背景に株式市場は長いデュレーションを持つ高PER銘柄、すなわちハイリスクなハイテクグロース株が売られて、ディフェンシブ株シフトを誘発しやすくなっています。しかし、上述のようにそもそもが米経済の底堅さに起因しているならば市場のオーバーリアクションで一時調整している面が強く、ましてや米国格下げは5月の米国デフォルト騒動時に予告済みの既出材料です。フィッチは格付会社の中でも米国AAA格を維持してきたわけですが、S&Pは2011年の米国格下げ時点からずっとAA+格でしたから、今回満を辞して格下げしたというだけの話です。
◆米財務省、中長期債発行額を1030億ドルに増額-今後さらに拡大へ(2023/8/2)
◆米財務省、Tビル入札規模を拡大-財政赤字穴埋めで借り入れ増額(2023/8/4)
◆フィッチの格下げで米連邦政府債務に焦点-リセッション懸念後退(2023/8/3)
つまり、今回の株価調整は米国格下げニュースと分けて考える必要があり、上記のようなヘッジファンドの仕掛け材料として利用されたに過ぎないとすれば前回解説のとおり押し目買い好機になるでしょう。ただし、別要因として捉えるべきならばその他の材料に目を向けておく必要があります。上述したようにインフレとの闘いが長引くと想定するならば、それに対する米FRBの出方が注目されます。これには8月末のジャクソンホール会議まで待てば確信を持てる可能性がありますが、実務的な押し目買いのタイミングとしてはそれよりも前に訪れると考えるべきでしょう。
【日本株投資戦略】
米国格下げより深刻なのは中国問題か欧州へのクレジットリスク飛び火か、日本株の押し目買い好機をじっくり待つ8月相場
市場の話題を独占した米国格下げのニュースは世界の中で日本市場が真っ先に織り込む形となり、海外株と比べても一際大きな下落を演じることとなりました。同時間で中国株も下落していたためにその分のヘッジ売り需要も嵩んだともみられますが、その割には震源地である米国株などの下落影響は限定的なようにも見えます。
となれば本質的な下落要因は米国格下げというよりも、金利上昇や為替の円安一服が日本株売りにつながったとみるべきかと思われます。とくに日本株の下げ方が海外株と比べても大きいのは中国株ヘッジという面があり、その背景には中国の景気刺激策が小規模なものにとどまり総融資量が増えていかない、つまり日本のデフレ期と似たような構造に陥り始めている懸念があるということが挙げられます。よって、米国株が下げ渋っているからといって日本株も大丈夫だろうというのはやや安直な発想と言えるかもしれません。
◆中国、利下げ響かぬ住宅市場 ローン残高が初の減少(2023/8/1)
◆中国が政策小出し、大規模な刺激策は控える-景気失速で成長重視へ(2023/8/2)
もっとも日銀会合と前後して今年上期に世界の中でも群を抜いて好パフォーマンスの日本株に対し、益出しするのに何らかの理由が欲しかったものと邪推したくなるものですが、ファンドマネージャーからしてみれば米国債が急落してその分の穴埋めとして日本株の利益で相殺するといった懐事情もありそうです。
しかし当塾の読者であれば、直近の日本株動向は概ね一連の解説してきた通りの展開であり、さらに有料にはなりますが【先読みの近未来(スタンダード会員以上の方対象)】をご愛読いただいている塾生の方でしたら、この8月ショックのシナリオについてはあらかじめ詳しく解説してきたつもりで、現実その通りの展開になっているかと思います。その場合、これらの問題の本質はもっと根深いところにあり、日本株の下値警戒は来週以降もしばらく続くことになるでしょう。米国格下げ自体は一時材料としても、上記の中国問題のように別要因を考えて早急で見切り発車的な押し目買いは「まだ」控えておくのが上策という場面です。
もしそうであれば、直近の日銀会合後の急反発を利食いチャンスと活かして現金確保した投資余力を今度はどのタイミングで強気買いしていくべきかと思案することになります。投資戦略として足元の日本株は企業決算真っ只中ですので、ここで無理に決算プレイで勝負に出るという方法はリスク管理面から下策と考えます。まずはこの決算シーズンを無難にやり過ごすことが重要と言えるでしょう。仮に好決算で上昇に乗りそびれたとしても、今の地合い悪化の現状からすれば上昇一服するのも早く、決算発表時の水準まで往って来いの展開になることも多いかと思われます。
それに対し、決算ミスで売り浴びせに見舞われた場合、すぐに戻ってくるかと言えば極めて期待薄で決算ギャンブルの後遺症は思いの外長引くリスクがあります。とにかく決算シーズンは無謀な取引はできるだけ避けて、安全確認できた段階からエントリーしても十分にその後の利益を伸ばすことが可能と割り切ることが大事です。とくにこれから中小型株の決算が相次ぎますので、買い場は慎重に見極めていくことが大事です。前回もお伝えしたように基本は相場も夏休み、かつ、荒れやすい時期ですのでお盆が明けるまでゆっくり休んでトレード再開というのも立派な投資戦略になるかと思います。投資家は「買う」「売る」だけでなく「待つ」こともまた大事な選択肢になります。
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