【7/18日本市場の確認ポイント】
日経平均 32,493.89(+0.32%)[32,338~32,714]
TOPIX   2,252.28(+0.59%)[2,239~2,260]
マザーズ 784.77(+0.01%)[782~791]

値上がりセクターTOP5
1.銀行(+2.18%)
2.電気機器(+1.20%)
3.輸送用機器(+1.13%)
4.繊維製品(+1.05%)
5.卸売(+0.91%)

値下がりセクターTOP5
1.サービス(▲0.88%)
2.石油・石炭(▲0.66%)
3.鉱業(▲0.52%)
4.不動産(▲0.35%)
5.陸運(▲0.29%)

 日本市場は3連休明けで辛うじて上昇は確保したものの物色の方向感には欠ける内容。為替の円高深耕が一服後も上値の重さが意識され、ハイテク株の一部や銀行株を除くと序盤の上昇を打ち消した銘柄が多く見られました。日経平均は指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)が逆行安となり、半導体株の上昇を相殺しましたが値上がり銘柄数が優勢で地合いはやや回復模様。

 東証プライムの騰落銘柄数でも値上がり1300/値下がり478と値上がり銘柄数が優勢、銀行株の上昇が目立ったことでTOPIXが日経平均をアウトパフォームし、為替円高の警戒感が和らいだこともあって自動車やエレクトロニクスなど外需株の買い戻しもみられました。一方でオリエンタルランド(4661)やサイバーエージェント(4751)、鉄道株や生活必需品株など内需系の銘柄に売られるものが目立ちました。内需系は決算発表の渦中にあるものも多く、直近の決算で好感された銘柄の中には急上昇するものがある一方、失望売りの対象銘柄には暴落めいた惨状となっている銘柄も見受けられます。

 全体感として欧米株と比べると為替円高を背景に上値の重い展開との市場解説が目立ちますが、これの根因とも言える日銀の政策修正警戒感を最も反映しているのは新興市場で、マザーズ指数はやはり最も調整色が滲んだ動きとなっています。決算シーズン前のポジション調整にからんだ売り需要も出やすい時期ですが、ここでは思惑や希望的観測といったものが剥げ落ち、業績という現実を直視せざるを得ないといった点もふまえ、市場の厳しい精査も乗り越えていく必要があります。

【米国株概況】
米企業の決算ラリーで米景気後退懸念を駆逐、米国債入札も順調にこなしながら米FOMCに向かって短期ラリー継続

NYダウ 34,951.93(+1.06%)[34,530~34,986]
S&P500 4,554.98(+0.71%)[4,514~4,562]
NASDAQ 14,353.64(+0.76%)[14,176~14,396]
ダウ輸送株 16,142.3(+2.01%)[15,978~16,244]
半導体SOX 3,842.4(+0.13%)[3,790~3,854]
日経平均先物(CME) 32,740(+1.11%)[32,310~32,800]
ドル/円 137.80~139.13(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.470%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.789%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 75.75(高値130.50:2022/3/7、安値63.64:5/4)
金先物 1,982.55(高値2,068:5/4、安値1,618:2022/11/3)
銅先物 3.834(高値5.039:2022/3/7、安値3.142:2022/7/15)
恐怖指数(VIX)13.30(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 141.86(安値110.34:2022/11/3、高値158.30:6/1)
Fear&Greed指数 82(EXTREME GREED:極度の貪欲)
High Yield Bond (HYG)75.45(安値70.30:10/13)

 米国市場は主要株式3指数はそろって反発し7日続伸、金融株を皮切りとして米企業決算が本格化しており市場に買い安心感が広がっています。引き続き米経済指標も注目されていますが、足元ではインフレ指標や景気指標でも落ち着いた内容で、米FRBの利上げプロセスを緩やかに織り込みながら米経済に対する自信を取り戻しています。

 イエレン米財務長官をはじめ、金融業界の重鎮らも米経済はソフトランディング可能との見方を示し、実際に米企業決算も発表済みのところでは大半が市場予想を上回る実績をあげています。本日以降もハイテク株や大手小売、製造業など米経済を占う注目企業の決算発表が相次ぐこととなりますので、引き続き足元の株高をファンダメンタル面から裏付けしてくれることを期待するところです。

 一方、一時期の市場テーマとなっていた米金利は米国債入札を順次消化しながらもなお落ち着いた動きを見せています。これが来週の米FOMCを機に再び市場の中心テーマに浮上してくるかが大きなポイントとなってくるはずです。この金利環境が落ち着いている間は米企業決算で仮に所々での決算ミスが目立っても市場は意に介さないと思いますが、金利が上昇していて神経質な状況に置かれているとそんな悪くない内容に思えても理不尽な売り浴びせが生じてしまうことも肝に命じておかなくてはなりません。

 これまでに500bpの金利をハイペースで引き上げてきたにもかかわらず、米経済や米企業業績も実際に底堅くインフレも高止まりしている現状からすれば、米FRBが追加利上げすることを誰も止められないでしょう。市場ではコロナ禍でのカネ余りが多少形を変えながらも過剰流動性として維持され、米国バブルは延命されています。米金融当局はこのまま来月の米財務省のトレジャリー・ビル大量発行まで市場機能を維持したいはずですので、しばらく堅調な地合いが続くと見込まれる一方、米FOMCと前後して米金利が動いてくるかどうかはよくよく監視しておく必要があるでしょう。

【日本株投資戦略】
植田総裁発言が市場思惑を牽制してリスクオン、日本株の出遅れ修正とサマーラリー突入の期待高まる

 日本市場は欧米株が大きく反発を見せても為替円高が重しとなって上昇についていくことができていません。ただ、この市場ロジックを後押ししてきた日銀の政策修正思惑について、昨晩に植田日銀総裁が金融緩和継続を示唆する発言をしたことにより見方が後退するものとみられますので、本日以降は出遅れ分を取り戻す動きになるかが注目されます。

 そもそもは日米の金利差拡大から為替円安が進み、同時に円キャリートレードが膨んだ市場の歪みを修正、巻き戻す動きのところで円高・株安が生じました。合わせて日本の金融機関が日本株利益確定売り・米国債買いというポートフォリオのリバランスに邁進した結果とみられるのですが、これの理由付けの一つとして使われたのが今月末の日銀金融政策決定会合で日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)政策修正に動く可能性が出てきたという市場観測です。

 為替市場ではドル円が6月末の145円付近から137円台まで一気に円高が進みましたので、株価にとっては重しになりましたが米国債の買い手となる日本の金融機関や年金にとっては非常に有難い話であったことでしょう。しかし、株式プレーヤーにとっても6月後半のファンド勢リバランスを通じて市場の生成AIブームに依拠した過熱感が収まり、為替によって外需株偏重から内需株への資金シフトも相まって全体がバランスするきっかけを掴みました。

 金融市場では欧米株高にみられますようにリスクオンとなっていますので、日本株においても上記の上値を抑えてきた日銀思惑の重しが外れれば出遅れを一気に取り戻す動きとなっても不思議ではありません。このタイミングで植田日銀総裁の発言が出てきたということは、おそらく今回の日銀会合で動くことはなく、もしあるのであれば黒田前日銀総裁以上のサプライズ好きというレッテルを貼られかねないでしょう。となれば前回お伝えしたとおり、日本株も少しフライング気味に企業決算にからんでサマーラリー突入という期待も持てるものと思われます。

持続的・安定的な物価2%達成には「まだ距離」=植田日銀総裁(2023/7/18)

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