【5/19日本市場の確認ポイント】
日経平均 30808.35(+0.77%)[30,679~30,924]
TOPIX 2161.69(+0.18%)[2,158~2,171]
マザーズ 747.55(+1.16%)[738~749]
値上がりセクターTOP5
1.精密機器(+1.43%)
2.サービス(+1.35%)
3.機械(+1.08%)
4.医薬品(+0.94%)
5.化学(+0.93%)
値下がりセクターTOP5
1.銀行(▲1.56%)
2.紙・パルプ(▲1.26%)
3.陸運(▲1.23%)
4.繊維(▲1.03%)
5.鉄鋼(▲0.99%)
日本市場は日経平均、TOPIXともに平成バブル後高値を更新、日経平均は7連騰でこの間の上昇幅は1,686円を記録しました。引き続き主力グロースの値がさ株が中心となって上値を伸ばし、寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)が新高値を更新。大きな材料が相次ぐ半導体関連や商社、自動車関連なども強い物色でTOPIXを押し上げました。
先物主導で主力どころが買われやすい相場ですが、前日に大幅高したアドバンテスト(6857)の反落やメガバンク株の逆行安に加え、鉄鋼株や百貨店株などに売りが広がる様子も散見され、東証プライムの騰落銘柄数は812/値下がり945と意外にも値下がり優勢となっています。幸か不幸か、実態として足元の指数高値更新の割に過熱感は薄く、物色が選別されている様子も窺えます。
物色の蚊帳の外に置かれ、出遅れが気がかりだった新興のマザーズも切り返しましたが、小型株指数は前日比マイナスとやはりまだ主力株への資金シフトは鮮明です。G7広島サミットの話題で持ちきりである以上、主力株に目が向きやすいのは当然として、半導体やAI、セキュリティやインバウンドといったテーマ別の切り口から中小型株の一角が値を飛ばすなどしており、物色にはある程度的を絞る必要があるでしょう。
【米国株概況】
米債務上限問題の警戒緩和で株高、米金融不安の安全資産逃避で買われた債券や金は下落
NYダウ 33426.63(▲0.33%)[33,336~33,652]
S&P500 4191.98(▲0.14%)[4,180~4,212]
NASDAQ 12657.90(▲0.24%)[12,624~12,731]
ダウ輸送株 13909.5(▲0.67%)[13,821~14,062]
半導体SOX 3203.5(▲0.62%)[3,186~3,217]
日経平均先物(CME) 30,855(▲0.15%)[30,670~30,985]
ドル/円 137.43~138.68(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.399%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:2022/3/6)
米10年債利回り 3.691%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:2022/3/7)
WTI原油 71.67(高値123.68:2022/6/14、安値63.70:5/3)
金先物 1979.90(高値2,068:5/4、安値1,622:9/28)
銅先物 3.728(高値5.0395:2022/3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)16.81(高値37.79:2022/2/24)
SKEW指数 135.52(安値110.34:11/3、高値145.51:2022/4/1)
Fear&Greed指数 67(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)74.20(安値70.30:10/13)
米国市場はパウエル米FRB議長の講演が注目された中で、序盤こそ前日の米債務上限問題早期解決への期待を背景に堅調でしたが、イエレン米財務長官がさらなる銀行合併の必要があると言及したことや米債務上限問題の協議が途中で中断されたとのヘッドラインから一転して売られる展開となりました。
まさに足元の市場が関心を寄せる米国の金融政策、銀行不安、米債務上限問題の3点に対し、改めて状況整理する必要がある現実を突きつけられたと言えます。米FRBは銀行不安に伴う信用状況の変化にちなんでインフレ抑制に必要な金利ピークが引き下がる可能性を示唆、パウエル米FRB議長もデータを見ながら次の一手を決める余裕がある、すなわち6月FOMCでは利上げを一旦停止して様子見する可能性もあることを匂わせました。
債券市場ではパウエル発言を受けて金利が急低下する場面もあり、為替市場でも足元のドル高基調にストップがかかりました。また、当局が主導して対応にあたる米銀の経営不安に関して、一連の銀行破綻連鎖の波は収まりつつあるものの、イエレン米財務長官は今後も業界再編が必要になるとの考えを示しました。同時に、銀行全体のシステムは健全であると強調したほか、米債務上限問題に関しては早期に解決を図るべきだと改めて米議会に訴えかけました。
そうした中で前日は米債務上限問題の協議に楽観的な見方を示していた与野党の交渉担当者ですが、米共和党のマッカーシー下院議長は歳出抑制に応じる気配が全く感じられないバイデン米政権側に憤慨し、交渉を一時中断しました。再度協議を行うも、これまた議論が噛み合わずに再び中断。次回の協議日程は未定のまま与野党による政治プロレスの行方は極めて不透明な状況に陥ってしまいました。
G7広島サミットのために来日したバイデン米大統領はこの米債務上限問題の妥結を確信し、豪・パプアニューギニア訪問を見送って21日の帰国後直ちに会見を開く予定でしたが、与野党協議が物別れに終わったことは非常に残念なことです。ただ、今朝方のニュースでは再協議の日程が22日にも設定されたとのことで、ハードな交渉が続けられる見込みがあるというだけでも十分かと思います。
そもそも市場でもこの問題がすんなり解決するとは本気で考えているわけではないでしょうし、しばらくはこの政治ショーを見守る姿勢で揺れるのだと思われます。実際のところ、市場も時間外で米デフォルトの懸念が再燃するかどうかを全く織り込めていないため、週明けの米国市場も再び荒れ模様となる可能性がありそうですが、いずれにしても決着が見通せない以上は動きづらいというのが本音ではないでしょうか。
足元では0DTE取引の増加で本来のリスク指標として用いられてきたVIX指数などはさほど機能しておらず、市場反応は債券の利回り低下や金価格の急騰などで確認する方が適切と言えるでしょう。株式市場ではナスダックに続いてS&P500が年初来高値を更新していますが、目先はこれらへの影響度が大きいハイテク大手の動向を注視しておく必要があるものと思われます。
【日本株投資戦略】
G7で強調された国際的課題をふまえ改めて日本企業が注目される、世界の混乱が海外勢の日本株買いを後押しする
日本市場は米国や中国の二大国が苦戦する中でも周回遅れでの景気回復が見込まれており、市場もそれを正当に評価しようという流れが出来てきています。とりわけその傾向は国内勢よりも海外勢による日本株への見直し姿勢が際立っており、株高の原動力となっていることが売買データからも裏付けられています。
この海外マネーの流入は為替円安によって海外勢の投資意欲をますます掻き立てるものとなっており、これは単に観光目的の訪日外国人客の増加だけではなく割安な日本の資産を買い漁ろうと考える投資家の動機づけにも寄与しているとみられます。欧米ではポジションの手仕舞いから現金比率が拡大し続けている中で、日本の株式市場の売買代金は着実に膨らんでいることに着目すべきでしょう。
◆世界市場けん引する日本株高騰、2023年投資マネーのラストリゾートか(2023/5/22)
こうした新たな潮流は中長期視点から見ればまだ序盤とも言え、世界の混乱から不安定になる側面はありつつ今後も拡大傾向が続くことが見込まれます。足元で開催されたG7広島サミットでも実に多くの世界的課題について議論がなされました。金融システムやエネルギー転換、グローバル貿易の再構築など世の中のインフラとも言える多くの課題について各国の技術を持ち寄って解決していくことが求められる中、日本企業が果たすべき役割や貢献といったものが世界の投資家を惹きつけるに十分な実力を有し、それが評価される時がやってきたと考えると投資もわくわくするのではないでしょうか。
むしろ課題先進国である日本だからこそ長年培ってきたロボットや工場IoTの省人化技術をもって人手不足を解消するだったり、高齢社会の進展に伴う医療・介護システムの効率化といった産業DX、さらには外国企業との提携深化におけるAI・ビッグデータの積極活用といったような、世界が向かうニューノーマルに資する技術や知恵を生かす企業の注目度が高まっていくでしょう。
米国の債務上限問題をめぐる政治混乱で市場が軟化し、日経平均が押し下げられるような展開になった時、改めて個別株が主戦場となることも想定しながら、押し目をうまく拾っていく取り組みが有効と思われます。前回お伝えしましたように、月末にかけての相場でとくに為替が円高に振れてくるようですと足元好調な外需株が利食いされ、再び内需株選好も強まるものと思われますので、ポートフォリオ内でうまくバランスを取りながら海外勢のリバランスに対応していくことが大事です。
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