【3/9日本市場の確認ポイント】
日経平均 28623.15(+0.63%)[28,558~28,734]
TOPIX   2071.09(+0.97%)[2,063~2,071]
マザーズ 776.34(+0.33%)[769~778]

値上がりセクターTOP5
1.鉄鋼(+2.10%)
2.海運(+1.86%)
3.紙・パルプ(+1.76%)
4.保険(+1.75%)
5.銀行(+1.66%)

値下がりセクターTOP5
1.鉱業(▲0.61%)
2.ゴム(▲0.05%)
3.なし
4.なし
5.なし

 日本株は日経平均28,500円を突破してほぼ全面高商状、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1432/値下がり329となり、新高値銘柄は328を数えました。米国株が一旦下げ止まりナスダックが反発したことなどを受けて半導体関連株が反発、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、信越化学(4063)などが買われました。

 その一方、朝方に大きく買われて30,000に迫ったファーストリテイリング(9983)は利益確定売りに押され、カブセの陰線を形成して天井警戒シグナルを発信。為替円安を背景に騰勢を強めてきた自動車株などにも売りが出ましたが、鉄鋼や海運、銀行などバリュー株の躍進も際立ちTOPIXは高値圏で推移しました。

 セクター別にも東証33業種のうち25業種が高値更新の動きとなっており、やはり低バリューセクターを中心に資金が集まっています。とはいえ2月末から情報・通信やサービス、医薬品といった代表的なグロースセクターも確りで、マザーズ指数も2月調整分の3分の2戻し水準まで戻してきました。

【米国株概況】
長単金利の逆イールド縮小も米FRB警戒高まりリスクオフ、利上げ加速で景気下振れに警鐘を鳴らす催促相場に

NYダウ 32254.86(▲1.66%)[32,190~32,990]
S&P500 3918.32(▲1.85%)[3,908~4,017]
NASDAQ 11338.35(▲2.05%)[11,319~11,667]
ダウ輸送株 14569.2(▲2.00%)[14,563~15,001]
半導体SOX 2980.2(▲2.01%)[2,976~3,083]
日経平均先物(CME) 28,265(▲0.37%)[28,225~28,730]
ドル/円 135.95~137.38(高値151.93:10/21、安値127.46:1/3)
日10年債利回り 0.498%(高値0.600%:1/12、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.907%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)
WTI原油 75.60(高値123.68:6/14、安値70.25:12/12)
金先物 1835.00(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 4.0077(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)22.61(高値37.79:2/24)
SKEW指数 122.22(安値110.34:11/3)
Fear&Greed指数 35(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.43(安値70.30:10/13)

 米国市場ではパウエル米FRB議長が米議会上院に続き下院で議会証言を行い、3月FOMCの利上げ加速は決定していないと市場の拙速な判断を諌めることに努め8日の米国株は一旦下落が収まりましたが、週末に2月米雇用統計を控えて民間の雇用指標が予想以上に強かったことから警戒感が燻っています。

 その一方、昨晩の新規失業保険申請件数が予想以上に増加したことを受けて債券市場では短期債を中心に利回りが急低下、足元で2年債は5%超えでしたがこれを割り込みました。前回指摘した長短金利の逆イールドは若干縮小して-100bp未満となりましたが、投資家のリスク選考度も低下して株売り・債券買いの動きを反映しました。

 米国の労働市場を巡っては、依然として人手不足から求人数の増加傾向が続き雇用堅調が予想されるものの、他方で失業保険申請の増加は大量レイオフ(従業員解雇)の動きも加速していることが判明。これは労働市場の逼迫が緩和される兆しであると同時に米企業が将来の景気後退へ備えている動きとも取れ、改めて米FRBの利上げ加速への警戒感が高まったとみられます。

 こうした場合、市場は3月の利上げ幅を巡り0.25%か0.50%かで揺れながら、雇用統計やCPI(消費者物価指数)などを受けて金融当局がタカ派傾斜に向かう中、できるだけ望ましい0.25%利上げを引き出すためにそれを催促する相場を演出したがります。必要以上に警戒感が高まる状況を主導して、ついこの前までの総楽観ムードは存在しなかったかのような動きを見せることがよくあります。

 元よりボスティック米アトランタ連銀総裁のハト派発言を拡大解釈し勇み足で上値を買い上がった相場でしたから、パウエル米FRB議長発言で改めて金融当局のタカ派姿勢を示されて現実に引き戻されたというのは前回解説した通りです。ここから米FOMCの本番当日まではパウエルプットを催促する相場で、必要以上のリスクオフを演出する可能性もあり、今のオプション市場でブームとなっている0DTE取引で今度は一転売りに賭ける投機が横行すれば、直近の動きとは真逆の展開となることも想定しておかなくてはならないでしょう。

【日本株投資戦略】
米国株とともに調整か日米デカップリングか、日本株の運命を分ける日銀の判断は?

 日本株は前回解説しましたように米国株安とは一定の距離を置きながら日米デカップリングが鮮明となっておりますが、昨晩の米国株大幅安とは別にして、本日は朝方に3月メジャーSQ算出、そして昼過ぎには日銀金融政策決定会合を受けて黒田日銀総裁が最後の会見を行う予定です。

 黒田サプライズがあるか否かについて、前回も懸念される点をいくつか述べましたが、ここは日本株にとっても大きな分岐点となります。日銀の金融政策を正常化するためのプロセスは、不可逆的にやらなくてはならないことに変わりなく、時期を遅らせるかどうかは政治的な判断による部分が大きいと考えられます。

 岸田政権としては4月の統一地方選挙やG7サミットを前に混乱はできるだけ避けたいところかとは思われますが、日銀は政府と独立した立場とかねがね言ってきたように、これは単に表向きの建前に過ぎないことかもしれませんが、市場機能回復を優先させるためにも主体的に金融政策の変更を決断する必要があるでしょう。

 上述した日米デカップリングも足元では為替円安の下支えあってこそのように思えますが、年初来の動きをトータルで見れば海外株との比較で日本株がアウトパフォームしても不思議ではない程に堅実な動きが確認できます。

 仮に日銀による政策修正で為替の円安支援を失ったとしても、日本企業は昨秋以降で円高環境に適応できるように来期見通しを作成しようとしているはずですので、株価は十分に調整の範囲内に収まるものと思われます。

 米国株が3月FOMCに向かって不透明感から調整を余儀なくされる展開を考えますと、日本株は今回の日銀判断で米国と共に調整に甘んじるか、あるいは緩和政策を断行して独善的に株価を高止まりさせて日米デカップリングをより強めようとするのか、本日が大きな山場であると同時に重要な分岐点になると思っておくべきでしょう。

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