【10/21日本市場の確認ポイント】
日経平均 26890.58(▲0.43%)[26,869~26,985]
TOPIX   1881.98(▲0.71%)[1,881~1,891]
マザーズ 724.08(▲0.50%)[722~728]

値上がりセクターTOP5
1.石油・石炭(+0.24%)
2.海運(+0.13%)
3.鉱業(+0.05%)
4.銀行(+0.04%)
5.電気機器(+0.03%)

値下がりセクターTOP5
1.陸運(▲2.13%)
2.空運(▲2.08%)
3.倉庫・運輸(▲1.59%)
4.非鉄金属(▲1.54%)
5.不動産(▲1.38%)

 先週の日本株は方向感を欠きながら日経27,000円付近の攻防に終始、全体は手がかり薄で膠着感強まる中、個別の材料物色に活路を見出すなど幕間つなぎの相場でした。週末にかけては東京エレクトロン(8035)やレーザーテック(6920)など半導体関連が大きく買い戻されるなど、全体に対して逆行高を演じたことが市場を下支えしました。

 週間では鉄鋼、非鉄金属、化学、商社など素材や資源関連の多くが下落した一方、強含んだのは空運、海運、銀行などで、海外の金利上昇や景気悪化への懸念を織り込みながら国内の経済再開期待の高まりを示す選別物色が進みました。

 日経平均27,000円台の回復で戻り売りに上値を抑えられつつ、騰落レシオは軟化傾向になる中でマザーズなどの新興・小型株を選好する動きが強まりました。さらにその中でも材料の有無によって選択肢は限られ、一部の銘柄へと資金が集中しやすい形で決算後に買われたテラスカイ(3915)、新作リリースで業績寄与に期待が高まったバンクオブイノベーション(4393)、『ABEMA TIMES』との提携材料で急騰を演じたログリー(8579)などに熱い視線が向けられました。

【米国株概況】
歴史的インフレ下での市場VS当局の駆け引き激化、米金利見通しをめぐり米FRB高官のハト派発言から米国株急騰

NYダウ 31082.56(+2.47%)[30,206~31,119]
S&P500 3752.75(+2.37%)[3,647~3,757]
NASDAQ 10859.72(+2.31%)[10,542~10,875]
ダウ輸送株 12692.8(+2.12%)[12,393~12,713]
半導体SOX 2336.7(+3.70%)[2,238~2,339]
日経平均先物(CME) 27,110(+0.78%)[26,790~27,145]
ドル/円 146.22~151.93(高値151.93:10/18、安値113.48:1/14)【高値更新】
日10年債利回り 0.249%(高値0.268%:6/17、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 4.219%(高値4.338%:10/21、安値1.668%:3/7)【高値更新】
WTI原油 84.00(高値123.68:6/14、安値76.25:9/26)
金先物 1662.50(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.4790(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)29.69(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 45(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)72.49(安値70.30:10/13)

 米国市場は主要株式指数が軒並み大幅反発、NYダウはおよそ750ドル高で31,000ドル台を回復、S&P・ナスダックもそれぞれ+2%超の反発を見せ、良い形でハイテク大手の決算を迎えることができました。

 このような背景には、米長期金利は一時4.3%台へと急伸、2007年11月以来の高水準にも達した中で、今回もWSJのウォール街番記者ニック・ティミラオス氏によるニック砲が炸裂。債券市場は11月米FOMCでの0.75%利上げを織り込んでいる過程で、その後米FRBメンバーのデイリー総裁がハト派発言を行い今後の米金利見通しを示唆しました。
 下記記事の内容からすれば次回11月米FOMCというよりもその次の12月米FOMCあたりでは0.50%利上げにペースダウンすると受け取れるわけですが、ただしこれについてもニック砲では12月0.50%利上げをドット・チャートの引き上げで相殺する可能性を示唆しています。

 これらを総合的に勘案しますと、米政策金利は年内に4.5%へと到達した上で来年の利上げ停止時期が後ろ倒しされる可能性について言及しているとみられ、つまりは金融引き締め政策について性急に過度な引き締めは行わないとしながらも、その分金融引き締めの期間を長く取ることを選択するということになります。これと同時に言えることは、経済のインフレ環境もその分長引くことになるということです。

◆サンフランシスコ連銀総裁、より小幅な利上げを計画し始めるべきだ(2022/10/22)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-21/RK458RT0AFB701?srnd=cojp-v2
◆FRB、11月も0.75%利上げか 12月利上げ幅巡り討議の公算=新聞(2022/10/22)
https://jp.reuters.com/article/frb-nov-idJPKBN2RG1HB

 しかし先週末のドラマはこれで終わりません。米金利上昇の一服をうけて米ドル独歩高も頭打ちとなり、為替ドル円は151円90銭まで急伸の動きを見せたところからもののわずか1時間半ほどで146円まで急落、市場では日本当局の為替介入観測が流れました。ちょうど前々週の同時間のドル円水準が147円後半でしたので、そこから5円あまりドル高円安に振れたタイミングでのバズーカ砲炸裂でした。

◆ドル円が乱高下、一時152円接近も146円台に反転-当局介入と報道(2022/10/22)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-21/RK43LCT1UM0Y01?srnd=cojp-v2

 このような他市場の動きをうけながら米国株は、S&P11セクター全てが上昇する全面高となり、NYダウはプレマーケットの30,000ドル付近から1,000ドル超の値幅を伴った大幅高につながりました。これに最も強く反応したのはグロース株と思いがちですが、まず注目すべきは金利敏感株の金融株が軒並み高、セクター別には素材がトップで次点が一般消費財、そして金融、エネルギー、資本財と続き、ようやく情報技術、ヘルスケア・・・の順ですので、意外にもバリュー系セクターで上位を占めていることに着目すべきかと思います。

 とはいえ、今週は前回解説のとおり大手ハイテクの決算ラッシュになりますので、グロース株がここからさらに躍進するかどうかは各企業における決算次第ということになるかと思われます。その一方、今回のリバーサルの主役として景気敏感株が強く反応したということは、それだけ米景気後退を意識した空売りを溜め込んでいたことと、米金融当局が足元のインフレよりも景気を優先させると受け止めたからだとみられます。

 ただし、株式市場は上記のデイリー総裁発言にみられる利上げペース鈍化への期待感で急上昇したわけで、これは今までのリバーサル相場から見てもおそらくアルゴリズムがそういう風にセットされていたからだと思います。
 しかし、今後もし米FRBによる金融政策の舵取りに変更が加えられるのであれば、それに合わせてアルゴリズムを修正する必要が出てきます。アルゴリズムの修正を行う間、つまり今週前半は続伸が期待できるかもしれませんが、週後半には利食い売りが発動してくる可能性もありますので上値追いはなるべく控えた方がよいでしょう。

 焦らずとも11月上旬の米中間選挙にむけたラリーまではあと数回の押し目形成があるものとみられます。射幸的な上昇に釣られて高値を買うよりも足元の決算を見ながら冷静に売買判断することが大事です。

【日本株投資戦略】
米国株大幅反発をうけて上値トライの期待高まる、決算シーズン突入に際して利食いもしっかりと

 週末の米国株急反発をうけて日本株も大幅高が期待されますが、時間外先物の動きでは米国株のリバーサルと比べて日本株の上昇率は限定的と言えました。これが為替の円高要因なのか、週末時点ですでに半導体株などが大幅高していてある程度織り込み済みとのことなのか、今週は円高環境における日本株の動向をしっかりと見定めていく期間になります。

 前回お伝えしておりましたように、米金利上昇の一服に加えて米FRBメンバーはこの週末からブラックアウト期間入りし、米金融政策をめぐる発言が控えられることとなります。とすれば、市場では目先に控えるのが27日の日銀、欧州ECBによる金融政策決定会合が意識されることとなりますので、米国株同様に株高期待は週前半で、後半は欧州当局のスタンスとユーロ圏における金利水準に目が向けられやすくなると考えられます。

 したがって、今週は先週までにコツコツと押し目買いしてきたポジションを適時利食いしながら、中央銀行の意思決定を確認した上で来週以降に備えていくのが妥当と言えるでしょう。とくに注目しておきたいのは中国共産党大会を終えた中国が新たに政権基盤を盤石にしてどのような動きを見せてくるかがポイントになります。中国では人民元の下支えにドル売り対応を続けてきましたが、これが政策変更されるとの観測も出ています。これは国際上とても重要な動きとなりますので、本日の【先読みの近未来(スタンダード会員以上の方対象)】で詳しく解説します。

 また、本日から日本企業の決算シーズンが本格化してきます。本日は日本電産(6594)、25日はシマノ(7309)、26日はキヤノン(7751)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、27日は信越化学(4063)、ファナック(6954)、アドバンテスト(6857)、そして週末28日はキーエンス(6861)、日立(6501)、デンソー(6902)といった代表的な国際優良株の注目どころが目白押しです。
 つまり、これらを売買するかどうかはさておき、為替が足元で円高に振れてきている中で、9月末時点におけるドル円レートが145円付近であったことをふまえつつも、為替影響による株価の感応度を確かめていく絶好の機会となります。足元の多少円高を嫌気して売られるのであれば、残念ながら先は期待できません。

 日本では黒田日銀総裁が断固として10年国債利回りをYCC(イールドカーブ・コントロール)上限の0.25%に抑え込んでいますが、世界的な金利上昇圧力をみても永続的にこれを続けることは難しくなってきています。つまり、いずれは円高環境が訪れる可能性を考慮しながら先行きを占っていく必要があるわけで、それが足元の上期業績とこれからの下期業績見通しに対して各企業がどのようなガイダンスを出してくるかをしっかりと見ておかなくてはなりません。

 それはすなわち日本全体の景気先行きにおいて、為替水準をここまで強く意識しなくてはならない状況は極めて稀である点と、仮にそれが急転換してきた場合でも輸出企業が柔軟にサプライチェーンの再構築に舵を切って、内需振興に振り切った対応をできるかが焦点になってくるからです。

 おそらく今回の日本当局による為替介入は、上記サンフランシスコ連銀のデイリー総裁ハト派発言ともあわせれば前回までのよりも効果的で、直ちにリバウンドすることにはならないとみられますが、それでもファンダメンタル要因から再びドル高円安基調に回帰する可能性は高いと言えます。これもまた日銀の金融政策決定会合を通過すれば米ドル買い安心感が生まれやすくなることでしょう。

 しかし、11月の米中間選挙、そして来年に入り米利上げ政策の見通しとして利上げ停止時期が示されるようになってくるにしたがい、今の市場前提が崩れることとなります。要するに、日本株の上昇を期待する上では、今週の株価動向がそのまま来年のパフォーマンスに深く関わってくる可能性があるという点で、非常に大事な注目の一週間と言えるでしょう。

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