【10/4日本市場の確認ポイント】
日経平均 26992.21(+2.96%)[26,633~26,994]
TOPIX   1906.89(+3.21%)[1,876~1,907]
マザーズ 724.16(+3.25%)[709~724]

値上がりセクターTOP5
1.卸売(+5.33%)
2.鉱業(+4.96%)
3.石油・石炭(+4.13%)
4.精密機器(+4.06%)
5.情報・通信(+3.64%)

値下がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

 10月相場は、3日に日経平均が6/20以来の安値(25,621円)を形成するも、大きく切り返して昨日はほぼ高値引け(26,992円)、この間の値幅は+1,371円(+5.3%)の急反発と出足好調の滑り出しです。昨日はとくに業績上方修正、増配、自社株買いと好材料3点セットを発表した伊藤忠(8001)に刺激された商社株が一斉反発、また米金利低下から直近売り込まれていたグロース株に一斉買い戻し、ソフトバンクG(9984)、エムスリー(2413)、リクルート(6098)なども大幅反発しました。

 足元の動向で見逃せないのは、景気後退懸念で軟化していた原油価格が再び上昇に転じてエネルギー株、さらに鉄鋼や非鉄金属などの資源株にも強い動きがみられる点です。これらの景気敏感株と言われる銘柄群に先行する半導体関連株も米金利低下を好感して急反発したほか、高い9月末配当を出して配当落ち急落の海運株が値戻しを見せるなど先導株にも相場下げ止まりを期待させる動きが出ています。

 日経平均は8/17の高値(29,222円)から10/3の安値(25,621円)まで3,600円あまり下落しており、半値戻しレベルの27420円、好不況の基準線となる200日移動平均線(27,330円)が試されるほか、騰落レシオ(25日)の100ポイント回復まで戻りが期待されます。なお、相場底入れ時の目安とされる新安値銘柄数は9/26に156、9/28に183、10/3に175と3桁台を記録しましたが、昨日の全面高によりその数は4と急減と底入れを暗示。ただし、チャート上では10/3に底値付近で「化け線」とよばれる大陽線が示現したとみられ、これが一時的なベアマーケットラリー(弱気相場の中での急反発)なのか、明確な底入れ反転につながるものなのか、今後の動向もふまえてまだ見極めが必要です。

【米国株概況】
米経済指標悪化でバッドニュースが相場にとってのグッドニュースに、株高期待高まる市場論理の落とし穴も同時に確認して

NYダウ 30316.32(+2.79%)[29,826~30,325]
S&P500 3790.93(+3.05%)[3,726~3,791]
NASDAQ 11176.41(+3.33%)[11,044~11,189]
ダウ輸送株 12918.4(+3.64%)[12,547~12,924]
半導体SOX 2500.1(+4.46%)[2,460~2,503]
日経平均先物(CME) 27,170(+0.97%)[26,520~27,190]
ドル/円 143.89~144.92(高値145.88:9/23、安値113.48:1/14)
日10年債利回り 0.224%(高値0.268%:6/17、安値0.131%:3/6)
米10年債利回り 3.635%(高値4.011%:9/28、安値1.668%:3/7)
WTI原油 86.39(高値123.68:6/14、安値76.25:9/26)
金先物 1733.60(高値2,085:3/8、安値1,622:9/28)
銅先物 3.4920(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)29.07(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 30(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.52(安値71.02:9/27)

 前回(10/3号)、前々回(9/30号)の定点観測データと見比べて分かるとおり、直近で年初来安値を軒並み更新していた株式指数が急反発し、一時は4.0%を超えた米長期金利は低下、3つのリスク指標もVIX30ポイント割れ、F&G指数は15(EXTREME FEAR:極度の恐怖)⇒30(FEAR:恐怖)へ、ハイイールド債も9/27の底値から反発と投資家心理の警戒感が和らいでいることが窺えます。

 一般的な市場解説では、足元の米経済指標が相次いで弱い結果を示したことで、米FRBによる積極的な金融引き締めスタンスが緩和されるとの期待が広がり株高につながったという構図です。このような市場論理は、これまでにもベアマーケットラリー(弱気相場の中での一時的な巻き戻し)として繰り返し観測されてきました。その中で、米FRBの政策決定にとって最重要なデータは将来の期待インフレ率であり、これが目標とする2%近辺まで低下してきたということで、投資家は米利上げは近いうちに打ち止めになるシナリオを描いて株高を正当化します。

◆米市場の予想物価が一時1年8カ月ぶり低水準、FRBのインフレ抑制楽観か(2022/10/4)
https://jp.reuters.com/article/usa-bonds-tips-idJPKBN2QZ03T

 ただ、こうしたシナリオは足元のインフレ率低下から将来のインフレ率が再び上昇することはない、という前提に立つものであるということを理解しておく必要があります。つまり、足元もしくは数ヶ月先のインフレ率が再び上昇してくる場合にはこの前提が崩れて、期待が失望へと変わるという可能性も同時に備えておかなくてはなりません。

 米金融政策にちなんだ米金利の動向、そして政策決定に影響を及ぼす米経済指標を中心に語られるわけですが、市場の論理では景気後退懸念のうちは株安です。しかし、いざマクロ経済データが悪化して2期連続の悪化をもって景気後退に直面した場合、株価としては反発に転じるというのが常識です。いわゆる噂・思惑で下げてきたものが、事実確認で上げに転じる、材料出尽くし的な動きになるということを知っておかなくてはなりません。

 これまでも当塾の【先読みの近未来(スタンダード会員の方以上が対象)】では米金融政策の流れを詳しく解説してきたかと思いますが、今後の焦点も次回以降の米FOMC含めて米政策金利の最終着地点がどこになるのかという点で、市場が織り込む2022年末:4.25%、23年:4.625%で十分と言えるのかどうかが重要なのです。

 この部分につきましては、今週末の米雇用統計、そして来週の米物価指標を確認した上で米FRB当局者たちが発信する内容をふまえながら改めて解説する必要があるように思います。この段階で率直に申し上げるのは早計かもしれませんが、当塾の見方としては、市場が認識しているようなインフレピークアウト期待は希望的観測に過ぎず、米利上げも4%台で収まるという期待は遅かれ早かれ打ち砕かれるということで一貫しています。

 米国株に関しては、以前も述べましたように今年は中間選挙アノマリーと10月株高アノマリーがピタリと当てはまってくる可能性があるという見方をしております。おそらく目先の決算シーズンで企業業績に悪化の兆候を感じ取っても、米FRBがあわよくば金融引き締めスタンスを早期に転換させるとの期待で株価は上昇継続する可能性があるでしょう。ただ、その米FRBが投資家の期待を裏切って、株高を背景に次回11月米FOMCでの利上げを正当化するのであれば、米中間選挙を終えたあたりから相場は再び下値をテストしに向かうという軌道をイメージしておくことが必要です。

 株価が上昇してくれば投資家に強気ムードが広がり、そのまま年末ラリー、さらには来年の相場に期待感といった観測も広がりやすくなるかと思いますが、米経済の現実はそこまで甘い状況ではありません。企業の雇用悪化、年末商戦の不振といった悪材料が相場の重しともなってくることを念頭に置きながら、あくまでも10月中の短期ラリーを前提に見ておくべきかと思います。

【日本株投資戦略】
前回の市場底入れサインから急反騰見せた株式市場、年末ラリーそして来年も見据えた投資シナリオを確認

【10/4日本市場の確認ポイント】でもまとめましたように、足元の急反転が一連の弱気相場におけるショートカバー(売り方による買い戻し)に過ぎないものであればベアマーケットラリーで上値限定的、これがあるいは観測されている年金勢などの実需筋が今後も腰の入った買いを断続的に入れてくる場合には底打ちとなります。

 この見極めポイントは200日移動平均線を回復した際の出来高および水準の定着がカギとなります。つまり、日経平均でいうところの27,500円ライン、TOPIXでは1920ptラインです。現段階ではまだ回復途上ですから何とも言えませんが、前回の相場展望(10/3号)でも解説しましたように、9月末における底値圏での週間出来高水準は今年3月の年初来安値形成時に次ぐ規模に膨らんでおり、ここで多くが手替りしたとみられます。

 これにはもちろん、9月末配当に絡む売買やグローバルマネーの月末リバランス影響、日経平均採用入れ替えに伴うリバランスなど特殊な需給要因が発生している点は割り引いて考える必要があるものの、一旦水準低下したものが大きく値戻ししていく際には相応にエネルギーが必要になります。それが「出来高」ということです。

 それにしても、メディアがこぞって悲観記事を書いて投資家に売り煽りする時に、実際の相場では逆に動くということがまたしても今回証明されました。ニュースは何でも逆読みすればよいというわけではありませんが、投資の知識向上とともに情報リテラシーも高めていかなくては、相場よりもニュースで投資心理がかき乱されてしまい冷静な判断の妨げになってしまいます。

◆リスク資産総崩れ 株や商品、中銀ショックで不況覚悟(2022/10/3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB031E10T01C22A0000000/
◆金融危機前夜、07年夏を彷彿させる世界経済-同時多発的ショック襲う(2022/10/3)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-10-03/RJ58LWT0G1KW01?srnd=cojp-v2

 では、今後の相場分析はといいますと、まず目先については急ピッチでの反転上昇から日経平均やTOPIXの指数上昇スピードは徐々に緩んでいくとみられ、それなりの上下をしながらも全体底上げのムードが波及していくと考えられます。とくに日経寄与度の大きい銘柄がグングン相場を引っ張るというよりも、セクターローテーションの形で景気敏感の業種(半導体、機械、自動車、エレクトロニクス)からその周辺部材(素材、設備投資、下請け企業)といった産業の川下にも資金流入で底上げにつながるという循環物色の構図です。

 その中で世界的なインフレ圧力に対応する政策後押しの期待が大きいエネルギー関連や防衛関連、農業関連などテーマ株の物色意欲が再燃するということも考えられるほか、岸田総理のNY証取演説にみられる人材再投資、賃金アップと同時に促進される省人化を支援するビジネスなどが注目されやすくなるでしょう。

 ただし、上述した【米国株概況】のとおり、金融市場は今後も歴史的なインフレの波にさらされ、それを抑えるための金利上昇もやむなしという前提で投資戦略を構築しておく必要があるということです。したがって、エネルギーおよび食料品、そして金属資源類なども含めて再上昇へ向かうというシナリオの下で銘柄選びを厳しく行なう必要があります。
 製品・サービスいずれにおいても値上げでエンドユーザーに価格転嫁できない企業はコスト高で収益が圧迫されるのは必定、監視銘柄からもどんどん除外すべきでしょう。そしてインフレ時代の勝者となる企業はこのエネルギーや穀物、金属など資源ビジネスの川上をおさえている企業、あるいはこの問題を根本解決するソリューションを持った企業ということになります。

 もし、こうしたヒントでもなかなか具体的な銘柄にたどり着かないという場合は、ぜひこの機会に当塾の会員プランとしてランクアップも検討されてみてください。ここまで待ちに待ってようやく投資シナリオに適した市場環境も整ってきたと言えますので、これから優先して投資すべき新時代を創る日本企業の銘柄分析レポートをお届けしたいとも考えています。

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