【8/30日本市場の確認ポイント】
日経平均 28195.58(+1.14%)[27,944~28,233]
TOPIX 1968.38(+1.25%)[1,954~1,969]
マザーズ 740.12(+1.77%)[730~740]
値上がりセクターTOP5
1.鉱業(+3.97%)
2.石油・石炭(+2.33%)
3.陸運(+2.04%)
4.卸売(+1.91%)
5.情報・通信(+1.82%)
値下がりセクターTOP5
1.なし
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日本市場は米ジャクソンホール後の米国株続落が止まらない中でも反発、バリュー株の切り返しは目を見張るものがあり、イベント前の高値をあっさり上回って大幅高する銘柄が続出しました。グロース株に引っ張られやすい日経平均は戻りが鈍いながらも316円高と健闘、TOPIXは29日下げ分の2/3近くまで回復しました。その点ではマザーズも強い戻りを見せて高値引けしています。
日経の戻り足は鈍くとも全セクターが値上がりし、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1,542/値下がり243でほぼ全面高商状、上昇のけん引役は金利上昇に耐性のあるバリュー株中心でした。三菱重工(7011)が+5.2%高をはじめ重工3社がそろって大幅高、石油関連のINPEX(1605)、三井物産(8031)、ENEOS(5020)などのほか、鉄鋼の日本製鉄(5401)、非鉄金属のDOWA(5714)などもイベント前の高値を更新して一段高を見せています。
新興市場では仕手性のきな臭い銘柄を除いても、国家戦略で金融教育推進をテーマにウィルソンW(9610)が2日連続S高やZUU(4387)などが急伸、材料物色の賑わいは健在とみられます。直近IPO株のMHT(9218)やM&A総研(9552)が需給良好で大幅高しており、単純にグロース株売り、バリュー株買いというわけではなさそうです。世界の金利上昇においても日本の金利は低位安定している現状、新興株も底堅い動きを続けていると言えるでしょう。
【米国株概況】
市場動揺は限定的だったものの水面下で進む金利市場の危うさ、足元の景気は大事!でも金利動向はもっと大事!
NYダウ 31790.87(▲0.96%)[31,647~32,205]
S&P500 3986.16(▲1.10%)[3,965~4,044]
NASDAQ 11883.14(▲1.12%)[11,790~12,101]
ダウ輸送株 14005.8(▲1.76%)[13,951~14,376]
半導体SOX 2708.6(▲1.93%)[2,678~2,770]
日経平均先物(CME) 27,925(▲0.98%)[27,850~28,340]
ドル/円 138.04~139.05
米10年債利回り 3.119%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 92.25(高値123.68:6/14、安値85.73:8/16)
金先物 1742.70(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.5563(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)26.28(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 49(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)74.94(安値72.92:6/13)
米国市場はジャクソンホール会議後も株式市場の余震が続いており、主要株式3指数はそろって続落。それぞれ需給の境目となる50日or75日の移動平均線を割り込んできたほか、先導役のダウ輸送株、半導体SOXがともに直近の安値更新で未だ下げ止まってはおりません。その割にはリスク指標がさほど変化を示していませんが、これらテクニカル指標の悪化はトレンドフォロー戦略のヘッジファンドに付け入る隙を与えることになりますので危険です。
米国株だけでなく欧州株も3営業日続落の動きですが、米金利はイベント時も落ち着きを見せていたため、市場がナーバスになる事態は免れました。しかし、米金利はじわじわと上昇基調にあることは確かで、9月米FOMCでの大幅利上げを織り込むが進んでいるとみられます。ただそれ以上に不穏なのは欧州市場であり、目先の市場スケジュールでは9/8にECB理事会が控えています。米FOMCを前に波乱の種となり得るだけでなく、先週からイタリア10年国債の金利が何度となく急騰し、明らかにヘッジファンドなどに狙われている様子が窺えます。
日銀は今春に日本国債への度重なる売り仕掛けがみられた際には指値オペを断行して、かなりのコストを支払いつつも力業で金利上昇圧力を抑え込みました。同じように欧州ECBもPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)終了後は金利上昇圧力に晒される中、ユーロ圏債券市場の分断化阻止ツール「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」の実効性が試されていることになります。
◆ECBの分断化阻止ツール、発動条件は何か-独伊のスプレッドに注目(2022/7/22)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-22/RFEWCPDWRGG001
世界株式において7月後半からの上昇機運が高まったのには、経済状況がひと際深刻な危機に陥っているユーロ圏に対する懸念が後退したことによるものと考えています。米中経済の動向も世界景気にとって重要なのは当然ですが、とくに金融の世界では欧州市場はもっともっと重要です。よって、足元の金融市場はいざという時に欧州ECBを頼りにすれば大丈夫との精神的依存によって支えられている構造が背景にあります。もしこれが破られることになれば、金融市場の動揺は当然ながらジャクソンホール会議の比ではありません。
直近でイタリア10年債利回りは8/17以降で再び上昇し始め、8/18に高値が4.0%を超えたことを皮切りに、8/23、8/24、8/25、8/30と瞬間的には何度も節目4.0%をブレイクしてしまっています。上記記事で指摘がありますように、ドイツ10年債利回りは1.5%付近を推移し、独伊スプレッドが250bp(0.25%)以上開くことは波乱の引き金になる可能性があるのです。今やドル高、新興国債務の危機は世界中に広がっており、新興国とまではいかなくとも経済・財政が脆弱な南欧諸国で火の手があがると一大事となりかねませんので、厳重に監視しておく必要があるでしょう。
【日本株投資戦略】
上昇継続の買い安心感で便乗するのは危険領域に、テーマ株物色も9月前半で手仕舞いを
日本株においては大した波乱もなく、というよりも米ジャクソンホール会議と前後して一部の主力値がさ株を吊り上げることによって生じる日経平均の角が次第に取れて、出遅れ銘柄などを物色する買い安心感も広がりを見せてきたように思います。
しかし、この買い安心感というのは非常に曲者で、例えばこういう誰でも買いやすいと感じられるところでポジションを取ってしまうと、短期的に多少上値を伸ばしても、短期筋が売り抜けた途端に値崩れしてしまって含み益が幻のままに終わったりするものです。
今週はなんとか地合いを保てるものと考えていますが、上記【米国株概況】でも述べましたように7月の上昇起点からおよそ1カ月半が経過したところで、いくら市場で緩和マネーがジャブジャブに滞留しているからと言って何度も押し目買いしていれば、さすがに息切れしてくるのも致し方ないところです。
現在はこの緩和マネーの供給がバランスしていることが市場を下支えしており、ファーストリテイリング(9983)なども上昇が止まってきたところを見ますと、どうやら売り方が踏み上げられて買戻しを迫られる動きも一巡してきた感があります。
実質的に9月相場に入ってきているところで焦点になるのは、米FRBのバランスシート圧縮についてはこれまでも繰り返し述べてきましたが、にわかに注目度が高まっているのはやはり上述した欧州ECBの出方になります。相場上昇の起点が前回の7月ECB理事会であったとするならば、次回9/8の会合で変節点となる可能性がないのか注視しておくべきでしょう。
さらに、9月は米国の政府や公共機関の会計年度末であり、2021年度の米財政赤字は約2.8兆ドルと2020年度の約3.1兆ドルに続いて過去2番目の大きさの赤字を計上しました。2022年度の米財政赤字は約1兆ドルと大幅改善が見込まれているほか、先日のインフレ抑制・増税法案成立でさらに赤字縮小するとみられる一方、米金利上昇で利払い負担が今後増加してくることも考えられます。
◆米ホワイトハウス、22年度財政赤字見通しを縮小 歳入増で(2022/8/24)
https://jp.reuters.com/article/usa-biden-budget-idJPKBN2PT1Y1
米国の国庫が潤っているということは、一方で企業や家計、他国にその分のしわ寄せが及ぶこととであり、国際経済はいわばシーソー関係にあります。米経済に依存してきた構造から脱却する過程において、これからはその痛みを分かち合う必要が生じることとなります。
金融市場にいたってはグローバルマネーのリバランスが生じるため、9月前半のうちに上昇した銘柄の利益を確定させ、後半の買い場を改めて探っていく戦略が必要となるところかと思われます。為替市場のドル高基調とあわせて9月米FOMCに向けて、株価動向には為替の感応度が高い輸出産業を中心に相場の変調を厳しく監視しておく必要があるでしょう。
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