【8/24日本市場の確認ポイント】
日経平均 28452.75(▲1.19%)[28,395~28,580]
TOPIX 1971.44(▲1.06%)[1,968~1,980]
マザーズ 732.96(▲0.04%)[723~734]
値上がりセクターTOP5
1.空運(+3.99%)
2.鉱業(+2.06%)
3.海運(+0.78%)
4.農林・水産(+0.36%)
5.証券・商品先物(+0.22%)
値下がりセクターTOP5
1.電気機器(▲1.97%)
2.輸送用機器(▲1.82%)
3.ゴム(▲1.66%)
4.金属製品(▲1.50%)
5.機械(▲1.34%)
8/23の日本市場は米ジャクソンホール会合への警戒感を映した米金利上昇および米株大幅安をうけて日本株も連れ安の展開であったとみられるも、日経・TOPIXは▲1%程度の下落に収まり、マザーズ指数にいたってはほぼ横ばいで大きな波乱は免れました。
日経平均は一時▲400円近い下落となりましたが米国株と比べては底堅く、下落幅の大きなものではソフトバンクG(9984)やソニー(6758)などが目立った一方、値がさ株の東京エレクトロン(8035)やファーストリテイリング(9983)の下落は限定的でした。米金利上昇に伴うグロース株売りの構図で考えれば異様な下げ渋りと言え、特筆すべきは新興のマザーズ指数です。
他方で上昇したのは、売上好調と伝わった百貨店の三越伊勢丹HD(3099)やJフロントリテイリング(3086)、さらに政府の水際対策見直しから連想買いが広がった空運株のJAL(9201)、ANA(9202)はじめ旅行・レジャー関連株で、全体に逆行高して異彩を放ちました。やや特徴的だったのは日野自動車(7205)の不正発覚材料で自動車関連が売られやすかったのはともかく、為替円安が進展する中で電機株や機械株など景気敏感株が弱含み、花王(4452)や資生堂(4911)などディフェンシブ株が底堅い動きを見せた点でしょう。
【米国株概況】
ジャクソンホール会議前に経済指標悪化で金融政策にらみ、米株は前日の大幅安から膠着、ディフェンシブ株には利益確定売り続く
NYダウ 32909.59(▲0.47%)[32,858~33,138]
S&P500 4128.73(▲0.22%)[4,124~4,159]
NASDAQ 12381.30(▲0.00%)[12,352~12,490]
ダウ輸送株 14576.5(+0.26%)[14,539~14,690]
半導体SOX 2864.3(+0.74%)[2,849~2,901]
日経平均先物(CME) 28,460(+0.25%)[28,345~28,575]
ドル/円 135.84~137.70
米10年債利回り 3.057%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 93.77(高値123.68:6/14、安値85.73:8/16)
金先物 1761.10(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.6845(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)24.11(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 45(NEUTRAL:中立)
High Yield Bond (HYG)76.27(安値72.92:6/13)
8/23の米国市場は前日の米金利上昇を警戒したハイテク株中心に大幅安がみられた後で、原油価格の上昇からエネルギー株が上昇。NYダウ構成銘柄の中ではシェブロンが+3.2%の大幅高となったことに加えて、建機のキャタピラーが+2.8%高、化学のダウ・インクが+2.2%高と続き、景気敏感株が買い戻されました。一方、ヘルスケアのユナイテッドヘルスや住宅設備のホームデポなどディフェンシブ株が総じて売られたことで相殺し、あとは高安まちまちの展開となりました。ハイテク株ではテスラが+2.3%上昇して前日の下落分を埋め戻した一方、これと係争中のツイッターが▲7.3%と大幅安になりました。
8月PMI(総合購買担当者景気指数)の一段と低下および7月新築住宅販売戸数がともに市場予想を下振れるなどして、ジャクソンホール会議前に経済指標が悪化。株式市場での反応は限定的だったものの、為替市場では一時ドル安方向に大きく振れる場面がありました。米10年債利回りは発表直後の乱高下で一時3.0%台を割り込む場面がみられるも結局は上昇、米2年債利回りが大きめの低下となったことから長短金利差がやや縮小しました。
経済指標発表に伴う景気後退への懸念は米国よりも欧州で顕著にみられ、ユーロ圏総合PMIが市場予想を下振れして2カ月連続での50ポイント割れとなり、中でもドイツPMIの悪化傾向が続いています。ドイツ連銀はインフレ率が今後数カ月で2ケタを超える可能性を指摘しながら継続的な利上げを主張、エネルギー危機への警戒をより深めています。
経済指標発表後にドイツ10年債利回りが上昇、さらにイタリア10年債利回りにいたっては一時3.72%と急騰して独伊10年債の利回り差が大きく拡大しました。欧州ECBは7月中旬の金融政策決定会合で財政状態が脆弱な国の債券を集中的に買い入れる措置を取ると発表し、欧州債務への懸念払拭に努めてきましたが、インフレ率の高止まりが続く中で懸念が再燃する可能性について注目度が高まっています。
これと並行して商品市況では天然ガスの先物取引が6月高値を上回り最高値を更新、さらに原油市場においてもサウジアラビアのエネルギー相がOPEC+で減産の可能性を示唆したことで原油先物価格が急騰しています。背景には米イランの核合意再建協議の再開にともないイランの国際社会復帰とイラン産原油の供給拡大への期待感があるわけですが、7月にバイデン米大統領が中東訪問した際、中東産油国に原油増産を呼びかけたことに対しては真逆の対応で、中間選挙が迫り外交を成果につなげたい米バイデン政権にとっては支持率回復を阻む障壁となりそうです。
【日本株投資戦略】
イベント通過後も日本株は底堅く推移か、但し中央銀行の政策修正圧力が今後高まるリスクも
日米欧の中央銀行金融政策決定会合が開かれない8月においてジャクソンホール会議(8/25~27)は市場が注目する一大イベントですが、これを前にしたポジション調整が続いています。市場関係者の間ではそれほど波乱なく無風通過を期待する向きが強く、ボラティリティ予想はVIX指数が少し前と比べてやや上昇してきたものの、大きなサプライズは想定していない模様です。
◆アングル:米株、ジャクソンホール無風通過へ オプション市場予想(2022/8/23)
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-jacksonhole-options-idJPKBN2PT08L
先日の米FOMC議事要旨発表においてもそうですが、米金融当局は今後の金融政策見通しを敢えて明らかにせず、政策に柔軟性をもたせる方針ですので、きっとここでも市場を大きく動かすようなサプライズには乏しいとの見方が強いのかもしれません。
ただし、ここでの問題はマネーの世界で中央銀行見通しという大きな目安が失われたことで市場参加者が好き勝手に予想した上で、思惑的な相場に振り回されやすくなり、挙句の果てには先行きの不透明感に対し急に不安に襲われるなどしてパニックに陥ってしまう可能性も少なからずあるということです。
現在の市場が半ば先走り気味に妄想しているインフレ・ピークアウト期待や米FRBの景気減速による利上げペース減速の期待などは、かつての異次元金融緩和相場の名残りとして投資家にとって居心地の良さを感じるゴルディロックス相場(適温相場)が続くことを期待することに他ならず、中央銀行が投資家を見放すことは決してないだろうとの希望的観測にそったものです。
実際、各国中央銀行が昨年から出口戦略を模索する中で日銀は金融緩和の継続を明言し続けており、低金利維持政策の下で円キャリートレードが健在ですが、リーマン・ショック以降で借金依存の債券バブルには持続可能性の観点から危うさを孕むものであることを忘れてはなりません。金融市場でとくに衝撃的だったのは6月にスイス中銀が15年ぶりの利上げに踏み切ったことで、日銀が緩和政策の修正を迫られることも十分に有り得る話です。
上記【米国株概況】で述べているように欧州経済ではインフレ・ピークアウトどころか高止まりしており、中央銀行の利上げ効果も限定的と言わざるを得ないのが現状で、しまいには再び南欧の過剰債務に対して警告を発する動きが強まっています。中央銀行が金融政策でインフレを制御できない状態が続けば社会不安が増大し、国民経済の混乱に拍車がかかることとなってしまいます。
そうした中で、日本は独自の経済情勢から高インフレ下においてもコロナパンデミック後の景気回復が続く見込みで、ある意味特殊なわけです。為替市場では円安が進行中ですが、株式市場では相対的に底堅い動きを見せていることからも、世界の中では消去法的に日本株選好の機運が高まっているように見受けられます。
昨日の日本株は上記【8/23日本市場の確認ポイント】で前述のとおり、景気敏感セクター売りのディフェンシブセクター買いでした。ところが昨晩の米国株はこれとは正反対の物色傾向になっています。今後インフレを意識したトレードが強まれば景気敏感株が再び強含み、それが過度な警戒感を生んで景気後退懸念が強まればディフェンシブ株優位の展開が想定されるでしょう。
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