【8/16日本市場の確認ポイント】
日経平均 28868.91(▲0.01%)[28,752~28,928]
TOPIX 1981.96(▲0.15%)[1,976~1,983]
マザーズ 750.21(+2.69%)[732~752]
値上がりセクターTOP5
1.その他製品(+1.34%)
2.空運(+1.22%)
3.サービス(+0.84%)
4.精密機器(+0.58%)
5.紙・パルプ(+0.51%)
値下がりセクターTOP5
1.海運(▲4.08%)
2.石油・石炭(▲1.50%)
3.鉱業(▲1.48%)
4.非鉄金属(▲0.90%)
5.保険(▲0.83%)
8/16の日本市場は前週末からの急ピッチな上昇に小休止をはさむ動きで、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり790/値下がり953でした。利益確定売りなども着実に消化しつつ、米小売り大手の決算発表や7月米FOMC議事録公表を前に小動きとなりました。日経平均やTOPIXが足踏みする中で新興・小型株への物色意欲が強まり、マザーズ指数は+2.69%と大幅高で戻り高値を更新。
医療サイトのエムスリー(2413)やバンダイナムコ(7832)などメタバース関連が大幅高したのをはじめ、クラウド関連や旅行関連の新興株などが値を飛ばし、グロース株優勢の展開。米アマゾンによる資本参加を発表し、値つかずのストップ高となったアイスタイル(3660)や決算材料を機に急騰する銘柄が多数輩出され、材料株に買いの矛先が集まりました。
一方、主力銘柄では話題株のソフトバンクG(9984)が前日の高騰から反落。セクター別にはバルチック海運指数の低下から海運株が連日の値下がりトップ。米イラン核合意再建への期待で原油価格が下落傾向の中、石油関連などエネルギー株も上値がおさえられました。また、米製造業指数の大幅悪化で自動車や電機株などにも売りが波及し、バリュー株は相対的に冴えない動きでした。
【米国株概況】
米小売大手決算で個人消費への懸念後退、商品市場では原油安の一方で天然ガスが高値圏に再浮上、インフレ・ピークアウトの市場期待に陰り
NYダウ 34152.01(+0.71%)[33,852~34,281]
S&P500 4305.20(+0.19%)[4,277~4,325]
NASDAQ 13102.55(▲0.19%)[12,979~13,181]
ダウ輸送株 15210.0(+0.74%)[15,046~15,300]
半導体SOX 3045.6(▲1.03%)[3,013~3,074]
日経平均先物(CME) 28,950(+0.35%)[28,740~29,005]
ドル/円 132.92~134.65
米10年債利回り 2.782%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 86.86(高値123.68:6/14、安値85.73:8/16)【安値更新】
金先物 1790.50(高値2,085:3/8、安値1,695:7/14)
銅先物 3.6238(高値5.0395:3/7、安値3.1322:7/15)
恐怖指数(VIX)19.69(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 57(GREED:貪欲)
High Yield Bond (HYG)78.43(安値72.92:6/13)
8/16の米国市場は取引時間前に好決算を発表した小売大手ウォルマートや住宅用品販売のホーム・デポなどが買いを集めて急伸、この2銘柄でNYダウを128ドル押し上げたほか、消費関連株の上昇が目立ちました。前回5月の決算発表時には急落、過大な在庫積み上がりが米個人消費の低迷を想起させて相場の波乱要因となっただけに反動も大きくなりました。
それ以外は高安まちまちとなる中、中国景気減速懸念や米イラン核合意再建への期待から原油安が進んだエネルギー株が売られたほか、米金利上昇からハイテク株も弱含みでした。原油価格とは逆相関に動くとされる小売・アパレルなど一般消費財セクターが買われるのは教科書どおりの展開。また、素材価格の低迷とは対照的に買われやすいとされる生活必需品セクターも堅調を維持し、指数が戻り高値を更新中でも景気後退懸念を反映した物色内容は続いています。
投資家の注目は今晩の7月米FOMC議事要旨発表に集まっており、為替市場ではタカ派的利上げ継続姿勢への警戒からドル高に振れており、ドル円においては昨日の日本10年国債利回り低下と相まって日米金利差拡大を意識した取引で134円台半ばまで急伸しました。足元の商品価格下落や景気後退懸念が浮上した際の円高と、米利上げを意識したドル高でせめぎ合いが続いています。
一方、原油価格などの商品市況が低迷する中でも直近の天然ガス価格は再び高値圏へと高騰、市場のインフレ・ピークアウト期待とは裏腹の動きが欧州経済を直撃しています。欧州では40度を超える記録的な猛暑と干ばつが深刻さを増しており、水不足と電力低下で物流停滞に陥るまで影響が及んでしまっています。
◆欧州ガス値上がり、例年比12倍の価格水準-ロシア供給減に需要増で(2022/8/16)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-16/RGP7U1DWX2PS01?srnd=cojp-v2
◆欧州猛暑、エネルギー危機に拍車 物流停滞・電力低下(2022/8/15)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR062O80W2A800C2000000/
そうした中、例年注目度が高いジャクソンホール会議が8/25~8/27に開催されるとあって、今後の利上げペースについては「データ次第」と濁している米FRBが今後の金融政策をどう舵取りするのか関心が高まっていることは言うまでもなく、インフレ抑制に向けた本気度が試されることとなります。現状では前回お伝えしたように米経済のハードランディングよりもインフレ容認の姿勢を選択しているように行動していますので、世界経済はインフレ懸念が再燃するシナリオを想定しておかないといけないかもしれません。
【日本株投資戦略】
日経平均の年初来高値更新が見えてきた、円債市場では安全資産買いも同時進行
日経平均は連日の高値更新で29,000円に迫っており、今年1月の年初来高値29,388円も視界に入ってきました。上昇をけん引するファーストリテイリング(9983)やダイキン工業(6367)の新高値更新をはじめ、バンダイナムコ(7832)やトレンドマイクロ(4704)などの上昇も目立ちます。
とくに日経寄与度も大きいファーストリテイリング(9983)においては、前回4月の中間決算時期には57,000円台であったことをふまえますと、足元7月の3Q決算を経て87,000円水準ですから50%超の上昇率で日経平均を押し上げた立役者となっています。
2021年3月に110,500円の高値を形成した後、中国関連として半値以下まで売られた今年3月の調整時からみればすでに半値戻しを達成したことになります。世界的な景気後退懸念が広がる中、生活必需品セクターへの注目が高まっているのは米国株の物色傾向と共通しているとも言えるでしょう。
こうした傾向は世界的インフレに伴う企業の値上げ推進の流れにおいて、生活防衛意識の高まりも反映しているとも言えますが、日本よりもインフレが深刻な事態に陥っている欧米の実体経済に目を向けますと、米国の一般庶民層ではクレジットカードのリボ払い増加などで対応し、カードローン残高は増加の一途を辿っています。さらには米利上げによってローン金利上昇に拍車がかかり、米消費者は20%超の金利がついた借金を背負っているのが現状です。
昨晩の米小売大手が好決算を発表して株式市場は安堵の上昇を見せた裏では、このように切実な消費実態が浮き彫りとなっており、他方で中国においても家計・企業の双方で多額の債務膨張が目立っており、中国政府が景気刺激策を打ち出した場合でもすでに地方政府、国有企業の政策遂行余力が減衰し、世界景気の減速が二大国同時に進行する状況に陥りつつあります。
相場自体は必ずしもこうしたファンダメンタル要因によってのみ動いているわけではないため、足元では実体経済との乖離が大きくなっているとの解釈が必要であると同時に、市場が現実を直視せざるを得ない状況に転じた場合には大きな修正を迫られることになります。
上記【米国株概況】でもふれたとおり日本の円債市場では10年債利回りが0.16%台へと低下しており、以前の日銀イールドカーブ・コントロール上限の金利設定0.25%を超えてきた時点よりも安全資産としての国債需要が増しているとの見方もできます。為替にとっては円安要因としてこれが株式市場の押し上げ効果ともなっていますが、過度なペースで進む場合には企業にとってもネガティブ要因ともなってきますので注視しておく必要があるでしょう。
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