【6/23日本市場の確認ポイント】
日経平均 26171.25(+0.08%)[26,039~26,401]
TOPIX   1851.74(▲0.05%)[1,846~1,867]
マザーズ 635.55(+0.91%)[629~642]

値上がりセクターTOP5
1.空運(+1.95%)
2.食料品(+1.21%)
3.保険(+1.23%)
4.小売(+1.20%)
5.陸運(+1.11%)

値下がりセクターTOP5
1.海運(▲2.87%)
2.鉱業(▲2.29%)
3.非鉄金属(▲2.20%)
4.卸売(▲1.27%)
5.輸送用機器(▲1.11%)

 23日の日本市場は日経先物(夜間)で26,000円を割れる場面があった中から朝方は26,400円まで上値を試しにいく動きを見せましたが、買い一巡後は失速。ザラ場での26,000円割れは回避できたものの、景気敏感株が中心的に売られるなど先行きに不安を感じさせる動きでした。

 日経平均は指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)、ソフトバンクG(9984)、ダイキン工業(6367)がしっかりだったほか、東証プライムの騰落銘柄数は値上がり1100/値下がり668と買い優勢であったことに変わりありませんが、物色内容に懸念点があります。

 米国市場も同様でしたが、景気敏感株が売られてディフェンシブ株が選好される典型的な景気後退前の相場展開。とくに下げがきつかったのは信越化学(4063)、コマツ(6301)、日立建機(6305)のほか、川崎汽船(9107)をはじめ海運大手3社や住友金属鉱山(5713)、INPEX(1605)など市況関連株の値崩れが目立ちました。一方で買われたのは値上げ好感のカルビー(2229)やツルハHD(3391)などのドラッグストア株で、ほかに買収観測が伝わった東芝(6502)などでした。

【米国株概況】
景気後退の可能性を示唆したパウエルFRB議長発言から市場物色には明らかな変化が

NYダウ 30677.36(+0.64%)[30,293~30,715]
S&P500 3795.73(+0.95%)[3,743~3,802]
NASDAQ 11232.19(+1.62%)[11,046~11,260]
ダウ輸送株 13032.2(+0.91%)[12,812~13,053]
半導体SOX 2602.7(▲0.65%)[2,563~2,636]
日経平均先物(CME) 26,195(+0.29%)[25,970~26,350]
ドル/円 134.26~136.19
米10年債利回り 3.089%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)
WTI原油 104.12(高値123.68:6/14、安値88.53:3/15)
金先物 1826.00(高値2,085:3/8、安値1,792:5/16)
銅先物 3.7490(高値5.0395:3/7、安値3.7430:6/23)【安値更新】
恐怖指数(VIX)29.05(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 23(EXTREME FEAR:極めて強い恐怖)
High Yield Bond (HYG)74.51(安値72.92:6/13)

 23日の米国市場は前日のパウエルFRB議長の上院議会証言に続いて下院での議会証言が注目を集め、改めて景気後退懸念が意識される展開となりました。内容をめぐり強弱感が対立する格好で、インフレ抑制にコミットする姿勢は更なる金融引き締めを想起させネガティブながら、利上げペースは状況次第と曖昧さを残した発言から、これをポジティブに捉える見方も台頭し、方向感を欠く展開となっています。

 ただし、市場は都合の良いように解釈する傾向があり、金融当局にはこれまでに何度も梯子を外される場面がありました。状況次第と言いながらそもそもインフレ見通しを見誤って対応が後手に回ってきたわけで、むしろ注目すべきは、インフレが鈍化しなかった場合の追加対応策に乏しいことでしょう。発言の中には「100bp利上げの可能性も排除しない」、「ソフトランディングは難しい」、「ソフトランディングはFRBのコントロール外の要因に左右される」とかなり厳しい内容、あるいは責任は全部は取れないよというメッセージが含まれていて、だいぶトーンダウンしてきています。

 市場があまりに金利上昇圧力と株価急落で催促相場にするものですから、これにある程度配慮を含めての議長発言と割り引いて考える必要があるところですが、FRBの至上命題は金利コントロールのほか物価安定と雇用最大化にあり、市場は二の次です。しかし今回はインフレ圧力が想定以上に強まっているため、多少の景気悪化を道連れにインフレを退治することを優先せざるを得ない状況にあります。市場でFRBは景気後退をも容認するつもりとの憶測も飛び交っており、それが「景気後退を引き起こす必要があるとは考えず」と否定する発言につながったものと思われます。

◆〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の議会証言要旨-上院(2022/6/23)
https://jp.reuters.com/article/powell-box-idJPKBN2O31FU?il=0
◆〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の議会証言要旨-下院(2022/6/24)
https://jp.reuters.com/article/powell-idJPKBN2O41FA

 足元で米国株は明らかに景気後退懸念を織り込み始めた動きを見せており、【6/23日本市場の確認ポイント】でも述べたようにエネルギーや建機、化学など景気敏感株売りの生活必需品やヘルスケアなどディフェンシブ株買いの構図になっています。代表的なのがシェブロン、キャタピラー、ダウ・インクが売り込まれている一方、ユナイテッドヘルス、メルク、P&Gなどが買われています。

 これらの動きはこれまでの景気悪化局面で弱気相場入りが確定的になった段階で生じる物色の特徴です。実際にNYダウやナスダックなど主要株式指数は下がっていないように見えますが、これはユナイテッドヘルスがNYダウ構成銘柄の寄与度が大きいことや、景気後退懸念で債券に資金逃避して米金利が低下していることに伴うハイテク株の見直し買いが相場を下支えしていることによるものでしょう。

 こういった場合、指数は一定程度下がりづらくなって底堅い動きをみせるようになるかもしれません。ただし、ここで下げの波が一旦後退してもそこからトレンド転換するというわけではありません。むしろ実体経済の景気に合わせて企業のバリュエーションが意識される局面ではいずれショック安的な動きが出てくる可能性があることに注意しておくべきでしょう。

 この先の米国株はステルステーパリング下での日本株のように、ある程度フェアバリューに基づいて上値が限定的な相場へと変化していくことになるでしょう。それがむしろ金融正常化で在るべき市場の姿に戻っていくということかもしれません。

【日本株投資戦略】
景気後退懸念を織り込む金融市場で米国株<日本株優位を演出してきた為替相場にも異変か

 上述したように日米株ともに景気後退局面を織り込む動きが始まってきました。米国株のユナイテッドヘルス同様に日本株ですとファーストリテイリング(9983)やアステラス製薬(4503)などの医薬品株だったり、ツルハHD(3391)などのドラッグストア株がディフェンシブグロースの代表株になります。これは景気後退に備えて生活防衛意識が高まっていくといった点を反映した動きと言えます。

 ただ、日本株は世界的に見ても景気敏感な株式とみられており、産業構造的にも時価総額が大きい企業は自動車や電子部品など景気敏感業種で多くを占めています。こうした市場環境では選球眼を良くして個別株の一本釣りを狙っていく以外に道は無いのですが、銘柄選びが難しい人はチャートを見て強そうな株を順張りでついていくことを徹底するしかないと思います。

 他方で、少し気になるのはやはり為替の動向であり、米国の景気後退懸念と一緒に金利低下してきたことでドル円の上値が少し前よりも明らかに重くなっています。この市場懸念が一過性要因であればトレンド転換するまでに至らないかもしれませんが、構造要因が変われば話は別です。

 足元で日銀の黒田総裁会見から異次元緩和のスタンスを維持する姿勢をうけて、海外勢はドル円買いを仕掛けると同時に日本国債の売りも仕掛けています。このまま日銀が無制限に国債を買い入れる指値オペを継続してでも、低金利を維持して世界の利上げ競争からは一線を画す方針は変わらないと思いますが、こと為替に関しては好ましくないインフレの主因でもあります。日本国民の家計や企業の利益圧迫に悪影響を及ぼすのは明白ですから、どこかで対応が必要になるでしょう。

◆「為替介入の可能性排除できない」と中尾元財務官-インタビュー(2022/6/23)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-23/RDUUSTT0G1KW01?srnd=cojp-v2

 頭を悩ませる現当局者たちが実際にG7や米国と交渉しても為替の協調介入は現実的に難しいと思いますが、鬼手として日銀・財務省による単独介入の可能性はあるかもしれません。先日ここでも取り上げた日銀・財務省・金融庁の三者会合では市場アナウンスメント程度しか出てきませんでしたが、いずれスイス中銀のようなサプライズ砲が発射される日がきても不思議ではありません。

 そうした場合、前回の【日本株投資戦略】でふれた米国離れして日本株優位の展開が徐々に連動性を高めてきていると述べましたが、仮に為替相場で梯子が外されるような状況となった場合には為替円安の恩恵をうけてきた自動車株やエレクトロニクス株などが一斉に値崩れする可能性が出てきてしまいます。これはつまり、再び米国離れする局面では日本株劣後の展開に直結するということになります。

 足元では景気敏感株への警戒感がかなり強まっていると言える中、市場の前提が急激に変わる瞬間というのは、前もってシナリオを複数準備しておかないと、いざという時には頭が真っ白になって対応するのは難しくなります。市場の不確実性が高まっている局面でこそあらゆるリスクを想定しながら思考をクリアにして立ち回ることが大事でしょう。

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