【6/14日本市場の確認ポイント】
日経平均 26629.86(▲1.32%)[26,357~26,657]
TOPIX   1878.45(▲1.19%)[1,865~1,880]
マザーズ 654.76(+0.12%)[638~654]

値上がりセクターTOP5
1.海運(+1.54%)
2.銀行(+0.13%)
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.空運(▲3.27%)
2.精密機器(▲2.94%)
3.不動産(▲2.63%)
4.医薬品(▲2.24%)
5.情報・通信(▲1.97%)

 14日の日本市場は米株大幅安で年初来安値を更新した動きをうけて全面安の展開からスタート、日経平均は一時▲600円安で26,500円を下回る場面もみられました。前日に日銀ETF買いが発動したこともあり、前引け前から下げ渋る動きへと変化。後場には日銀オペの追加・増額が伝わったことで急速に下げ幅を縮小して、この日の高値近辺で取引を終えました。

 急ピッチでの米金利上昇に警戒売りが嵩んだグロース株は総じて大幅安スタートでしたが、全体が下げ渋る動きには敏感に反応して下げ幅を縮小しました。新興市場のマザーズは安値から2%超の切り返しでプラス転換しました。また、足元で軟調さが目立っていた海運大手3社も買戻し優勢となりプラス転換後に上げ幅を拡大し、業種別で唯一しっかりの動きを見せました。

 値下がりセクターにはグロース系がズラリと並んだ中で、空運株が値下がりトップとなり、旅行大手のHIS(9603)が2-4月決算で失望売りの動きから旅行・レジャー関連に下値不安が波及しました。また、日本でも金利上昇の影響が懸念され始めたことをうけ不動産株も軒並み大幅安となり、この日はバリュー系銘柄も軟調と言え、むしろ安値から切り返したグロース系を見直す動きの方が際立った1日と言えるでしょう。

【米国株概況】
急ピッチでの米金利上昇、米株崩落に小休止の動き、ただしFOMCイベント通過後の見直し買いもまた短命に終わる見込み

NYダウ 30364.83(▲0.50%)[30,144~30,690]【安値更新】
S&P500 3735.48(▲0.38%)[3,705~3,778]【安値更新】
NASDAQ 10828.35(+0.18%)[10,733~10,926]【安値更新】
ダウ輸送株 13239.2(+2.12%)[13,124~13,457]【安値更新】
半導体SOX 2689.9(+0.63%)[2,658~2,713]【安値更新】
日経平均先物(CME) 26,420(▲0.90%)[26,250~26,675]
ドル/円 133.85~135.47【高値更新】
米10年債利回り 3.479%(高値3.498%:6/14、安値1.668%:3/7)【高値更新】
WTI原油 118.98(高値122.75:6/10、安値88.53:3/15)
金先物 1809.80(高値2,085:3/8、安値1,792:5/16)
銅先物 4.1372(高値5.0395:3/7、安値4.0370:5/12)
恐怖指数(VIX)32.69(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 17(EXTREME FEAR:極めて強い恐怖)
High Yield Bond (HYG)73.58(安値72.92:6/13)【安値更新】

 14日の米国市場は足元で開催されている米FOMCで、0.75%の大幅利上げが決定されるとの見方が広がるとともに金利が急上昇しています。米10年債利回りは3.5%に肉薄したほか、5年-10年の利回り差が逆転する逆イールド状態に、さらに2年-10年の利回り差もほぼ変わらない水準に達し、イールドカーブは極端にベアフラット化しました。むしろ米30年債利回りが最も低くなるなど、通常では考えられない金利市場の異常さを映しています。

 株式市場では今晩のFOMC声明を前に思惑が交錯し、乱高下しながら年初来安値を更新する動きでした。あまりに急ピッチな金利上昇ペースにハイテクグロース株の嫌気売りは加速した一方、FOMC通過後には過度な警戒感は一旦和らぐとの見方から、急落した足元の株価は売られ過ぎとして見直し買いが入る、強弱感の激しい対立となっています。

 NYダウ構成銘柄の中では前日に大幅安したボーイングが一転、大幅高で+5%超の上昇のほかアップルやマイクロソフトがプラス転換して小幅に上昇。ナスダック銘柄ではテスラが+2%超の上昇を見せ、主要株式3指数ではナスダックだけが前日比プラスを確保しました。グロース株は金利上昇警戒による下げ幅が大きかっただけに、見直し買いのターンに回ると一時的な戻りも大きな値幅が出やすい傾向にあります。

 6/8以降のわずか5営業日でNYダウは▲10%、ナスダックは▲12%近く急落したことになりますので、米FOMCイベント警戒だけでみれば短期間で売られ過ぎとの見方が出るのも当然と言えるでしょう。ただし、冒頭の債券市場や直近の米経済指標から今後の景気悪化や企業業績悪化までを見込んだ場合には、下落圧力が一旦小休止を挟んだとしても再び強まることを念頭に置いておく必要があるでしょう。

 前回6/13号での焦点は米債市場の米金利の高値更新と米株市場の安値更新でしたが、これはどちらも米FOMC前に達成してしまいました。株式市場の需給要因だけに焦点を絞ると、週末のクアドルプルウィッチング(米国版メジャーSQ)を前に残り数日間でプットオプション整理に伴う揺り戻しがあるかもしれません。リスク指標のVIX指数が34ポイントから32ポイント台に低下しており、株式市場の動きの割に低下幅が大きいのはこれが原因かもしれません。他のリスク指標はなお警戒レベル最大ですので、5月下旬よりも自律反発期待は薄いとみておくべきでしょう。

【日本株投資戦略】
米株の下げ止まりは吉兆と言えず、米FOMCイベント通過後は景気後退懸念の追加材料に注意

 上記の【米国株概況】で述べたように、昨晩の米株市場では下げを主導してきたハイテク株にやや下げ渋る動きがみられました。昨日の日本株も【6/14日本市場の確認ポイント】で解説しているとおり、朝安後の切り返しでグロース株の見直し買いが強まる動きを見せています。日米の中央銀行イベントが焦点となっている今週は、当局の出方によって市場が揺さぶられる状況となっています。

 日本株においては引き続き為替の動向がポイントとなる中、13日の株価急落の場面では日銀がETF買入れを行い、14日は長期金利を低く抑え込む指値オペに加えて、さらに超長期債を買入れるオペの拡充を断行しました。黒田日銀総裁から為替円安はマイナスとけん制発言も出てきましたが、実際には日米金利差拡大を助長する日銀オペ拡充での対応に一段と円安が進みやすい展開となっています。

 米国市場における株安が一旦収まれば、5月末同様に自律反発期待を促す場面ともなりますが、米金利市場では昨晩も高値更新で米国債売りが止まっておらず、また日本の金利市場でも長期金利が0.25%上限を度々打ち破られる現象がみられています。つまり、金融市場の景色は5月のベアマーケットラリーとは全く違ったものになっていると認識しておく必要があります。

 また、足元でのインフレおよび景気後退懸念をめぐっては米国の経済指標悪化が起点となりましたが、金融市場においても欧州バルチック海運指数のピークアウトに加えて、昨晩は天然ガス価格が暴落に近い急落を見せました。元々これらの物流における供給制約、エネルギー高騰で世界のインフレ環境を醸成してきたわけですから、価格下落は経済運営にとって歓迎すべきものでありますが、これからの景気悪化を反映したものであるとすると話は別になってきます。

 金融市場での兆候と実体経済への影響には実質的なタイムラグがあり、株価の動向に照らし合わせた場合には、まず金融市場の変調が先に影響を及ぼすことになります。株価は景気悪化懸念を織り込むこととなりますので、一旦は企業業績の見通し悪化を反映してようやく底入れする形となります。

 ちょうどまもなく6/17に『会社四季報(夏号)』が発売される時期になりますが、これらは今年3月末時点の企業業績と経済環境を反映させたものです。ここ最近の市場環境および経済指標の悪化などは加味されていないと考えられますので、これを前提に投資判断してしまうとファンダメンタルの見通しが大きく狂ってしまいかねないと言えるでしょう。

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