【6/10日本市場の確認ポイント】
日経平均 27824.29(▲1.49%)[27,795~28,044]
TOPIX   1943.09(▲1.32%)[1,941~1,955]
マザーズ 687.15(▲1.71%)[684~693]

値上がりセクターTOP5
1.なし
2.なし
3.なし
4.なし
5.なし

値下がりセクターTOP5
1.機械(▲2.14%)
2.精密機器(▲2.12%)
3.石油・石炭(▲2.01%)
4.鉄鋼(▲1.92%)
5.医薬品(▲1.92%)

 10日の日本市場は米株大幅安をうけて全面安の展開、朝方のメジャーSQ算出時には日経28,000円を上回ったものの、その後は終始軟調でした。6月限のSQ値は28122.81円で今年1月以来の28,000円超えでしたが、やはり「幻のSQ」となる線が濃厚となってきました。

 東証プライムの騰落銘柄数は値上がり176/値下がり1,634となり、セクター別にも値上がり業種はゼロと、一部のディフェンシブ系を除いてほぼ全面安商状でした。海外の欧州ECB理事会で利上げ確認、米CPIのインフレ警戒再燃で米長期金利上昇をうけた株式市場は、米株同様にハイテクグロース株の嫌気売りが鮮明となりました。

 日経平均の押し上げ役を務めてきたファーストリテイリング(9983)の上昇一服のところに半導体の東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)が大幅安となったほか、ファナック(6954)やリクルート(6098)なども崩れて、値がさ株が大きめの下げを演じました。為替円安を背景に堅調さを見せてきた自動車株も売られ始め、日経平均だけでなくTOPIXも全体の地盤沈下とともにそれなりの下落幅となりました。新興市場ではIPO株のエニーカラー(5032)が連日ストップ高の逆行高が光りましたが、マザーズ指数は反落となっています。

【米国株概況】
米CPI上振れと消費マインド低下でスタグフレーション懸念が急再燃、債券は前回よりも深刻な逆イールド発生、金利上昇でリスク資産は総売り

NYダウ 31392.79(▲2.73%)[31,387~32,053]
S&P500 3900.86(▲2.91%)[3,900~3,974]
NASDAQ 11340.02(▲3.52%)[11,328~11,569]
ダウ輸送株 13368.9(▲2.62%)[13,349~13,630]
半導体SOX 2832.0(▲3.60%)[2,828~2,911]
日経平均先物(CME) 27,325(▲1.89%)[27,250~28,050]
ドル/円 133.35~134.48
米10年債利回り 3.165%(高値3.203%:5/9、安値1.668%:3/7)
WTI原油 120.47(高値130.50:3/7、安値93.53:3/15)
金先物 1875.20(高値2,078:3/8)
銅先物 4.2830(高値5.0395:3/7、安値4.0370:5/12)
恐怖指数(VIX)27.75(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 28(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)75.63(安値75.30:6/10)【安値更新】

 10日の米国市場は前日の警戒感が燻る中で5月消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、約40年ぶりの強い伸びを示したことからインフレ懸念が急再燃、これに加えて6月ミシガン大消費者信頼感指数速報値が過去最低を記録したことから、景気後退懸念まで再浮上する始末でスタグフレーションへの警戒感が一気に高まりました。

 インフレ警戒感への対策を声高に叫びながらも具体策を講じず、すべてプーチン露大統領のせいだと責任転嫁する米バイデン政権と今さらにインフレ見通しが誤っていたことを認めたイエレン米財務長官などに対する不信感の高まりも相まって、インフレのピークアウト期待は打ち砕かれた格好となりました。

 債券市場では短・中・長期債すべての年限で利回りが3.0%を超え、とくに5年-10年では逆イールドが発生、景気後退への警戒感は以前よりも強まった形となりました。以前5月末にこの【米国株概況】内でも懸念点として指摘した債券恐怖指数のMOVE指数は再び急上昇し、5/19以来となる水準へ高値更新の動きを見せています。

 株式市場ではダウ工業株30種がウォルマートを除き全面安、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなど金融株も売られていることから急激な金利上昇はさすがに嫌気された模様で、その他のハイテク株ではアップルやマイクロソフトも▲4%近い大幅安、景気敏感株も軒並み▲3%超の大幅安となりました。ナスダック銘柄ではアマゾン、エヌビディアが▲5%超で、ナスダック指数、半導体SOX指数はそれぞれ▲3.5%超の急落となりました。

 これらをうけてリスク指標はVIX指数が27.75ポイントと急伸、F&G指数もなんとかFEARレベルですがEXTREME FEARレベルは目前といったところです。しかし何よりもハイ・イールド債が5/18安値75.93を割り込み、底割れしてしまったことでリスク回避姿勢をより強める結果となりました。

 米国市場ではあまりに急速に悲観に傾き過ぎるようだと、今週末のクアドルプルウィッチング(米国版メジャーSQ)が控えているため、オプション取引の揺り戻しが発生する可能性を残していますが、マーケット全体では何よりも週央15日の米FOMCがメインイベントであるため、これまでの間に債券の金利水準で高値更新するか、株式では5月安値を死守できるかが焦点になってくるでしょう。

【日本株投資戦略】
米株大幅安の中で重大な中央銀行イベントが目白押し、日銀・財務省・金融庁の緊急会合で日本株はどうなるか

 前週末の米株大幅安をうけて日本株にとっても大きな試練となりそうな今週のマーケットですが、主要なイベントはやはり15日の米FOMC、そして17日の日銀金融政策決定会合となります。前回の【日本株投資戦略】でもメイントピックとして述べましたが、やはり10日の引け後に日銀・財務省が動くこととなり、財務省、金融庁、日銀が緊急の臨時会合を開いたとのニュースが出てきました。

▼財務省 金融庁 日銀 幹部が臨時会合 “急速な円安を憂慮”(2022/6/10)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220610/k10013665851000.html

 日頃からマーケットを注視している私たちからすれば、あまりに対応が遅いと言わざるを得ませんが、ようやく足元の急速な円安に対して対応策が練られる可能性が出てきたところです。ただ、これもまだ現段階では対応策を出す段階までいっておらず、ようやく認識を共有した段階というところです。本来ならば「憂慮している」「一層の緊張感を持って注視」どころの騒ぎではないはずで、市場アナウンスメントよりも早く対応策を講じるべきなのでしょうが、やっと重い腰を上げたと言えるところです。

 これはおそらく為替円安の「良い円安」「悪い円安」議論で、足元の円安が日本の輸出関連企業にとって支援材料となっています。株式市場にとっても自動車株などの株価下支えにつながっているほか、まもなく4-6月期の締めになりますので、供給制約で工場稼働停止を余儀なくされている自動車関連においては業績への影響を軽減させる目的から、敢えて対応を遅らせている可能性もあるかもしれません。

 もし具体的な為替介入などを議論する用意があるとすれば、今週末の日銀会合に合わせてフローを整理し、実行に移すとすれば7月移行になるであろうスピード感だと思われます。その間に株式市場では、米国の株安に連れ安しながらも相対的には日本株が底堅い、下げ渋る印象が広がる可能性を残しながらも、7月以降は時間差での為替対応策で円高に誘導する形となるため、逆に夏場はこれが日本株の上値を抑える要因になっていくものと考えられます。

 前回6/10の【日本株投資戦略】や【先読みの近未来】(スタンダード会員以上の方対象)などでも解説しましたように、岸田政権としては今月下旬から7月上旬までの参院選をどう乗り切るかが最優先課題となっている中で、その間は政局的にもできるだけ株価を高止まりさせておきたいとの意向から、日本株にとっては米株の動向を気にかけながら7月10日の参院選投開票後における為替動向を注視しておかなければならなくなるでしょう。

 日本株にとっての為替下支え要因が外された時に、本当の米国株との相対優位性の真価が問われてくるところであることはこれまでも指摘してきた通りです。日米ともにインフレ対策で後手に回ったり、政府都合で市場の動向が歪められた分の反動というのは、早急に手を打てば軽減できたはずの問題をかえって深刻なものにしてしまうことになるため、何倍ものしっぺ返しとなって市場を揺るがしてしまうことを念頭に置いておく必要があると言えるでしょう。

 前回同様に日本株への取り組みスタンスは警戒レベルを強めておき、安易な押し目買いはこれまでのように報われるとは考えない方が無難です。米国市場では明確な逆金融相場が始まっている以上、いかに日本株に割安感があって優位性を感じようとも、足元のバリュエーションは日経平均のPER17倍ですから、割安性はだいぶ薄れていると認識しておくべきでしょう。

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