【6/9日本市場の確認ポイント】
日経平均 28246.53(+0.04%)[28,189~28,389]
TOPIX   1969.05(▲0.05%)[1,965~1,978]
マザーズ 699.12(+2.93%)[679~700]

値上がりセクターTOP5
1.鉱業(+3.23%)
2.石油・石炭(+1.51%)
3.その他製品(+1.02%)
4.繊維(+1.00%)
5.医薬品(+0.80%)

値下がりセクターTOP5
1.海運(▲7.78%)
2.証券・商品先物(▲0.95%)
3.電気・ガス(▲0.92%)
4.鉄鋼(▲0.91%)
5.電気機器(▲0.70%)

 9日の日本市場は円安が一段と進行する中で自動車株が一段高、原油高を背景に堅調推移の石油関連株が大幅上昇しました。その一方で、東京エレクトロン(8035)はじめ半導体関連株の失速が目立ち、さらに欧州バルチック海運指数の軟化をうけた海運株が総じて大幅安となりました。

 日経平均・TOPIXは週末のメジャーSQを前に売り買いが激しく交錯して小幅もみ合いに終始しました。上記の半導体株売りの下押し圧力をファーストリテイリング(9983)、ソフトバンクG(9984)が上昇してこれを相殺。為替の円安誘導によりSQではなんとか日経28,000円の攻防に持ち込める形になったと言えます。

 新興市場はマザーズ指数が+3%近く大幅高し、時価総額上位のビジョナル(4194)、フリー(4478)、JTOWER(4485)がそろって急伸。6/8に鳴り物入りでIPOしたエニーカラー(5032)が公開価格1530円に対して5510円のストップ高まで買われ、新興株の物色意欲を強烈に刺激しました。

【米国株概況】
インフレ懸念再燃で米株急落、欧州ECBが7月利上げ決定で長期金利が上昇、リスク指標も再び警戒シグナル

NYダウ 32272.79(▲1.94%)[32,267~32,956]
S&P500 4017.82(▲2.38%)[4,017~4,119]
NASDAQ 11754.23(▲2.75%)[11,751~12,115]
ダウ輸送株 13729.1(▲2.06%)[13,728~14,050]
半導体SOX 2937.8(▲2.69%)[2,937~3,047]
日経平均先物(CME) 27,970(▲0.92%)[27,970~28,405]
ドル/円 133.19~134.54【高値更新】
米10年債利回り 3.046%(高値3.203%:5/9、安値1.668%:3/7)
WTI原油 121.40(高値130.50:3/7、安値93.53:3/15)
金先物 1850.70(高値2,078:3/8)
銅先物 4.3678(高値5.0395:3/7、安値4.0370:5/12)
恐怖指数(VIX)26.09(高値37.79:2/24)
Fear&Greed指数 32(FEAR:恐怖)
High Yield Bond (HYG)76.94(安値75.93:5/18)

 9日の米国市場は、ホワイトハウス報道官が週末発表の米5月CPI(消費者物価指数)で高止まりするとの見方を示したことを警戒して急反落。NYダウが▲2%弱の下落、米長期金利が再び3.0%台の高水準にある中でハイテク株はより警戒感が強まりナスダックは▲2.8%の大幅安となりました。

 NYダウはアップルが▲3.6%安をはじめゴールドマン・サックスやビザなど金融株が▲3%超の大幅安で下げを主導、景気敏感株のキャタピラーや石油株のシェブロンまで総じて下落する有り様で、終盤にかけて下げ幅を拡大しました。ここまで堅調推移してきた原油先物市場は、中国の上海で再び一部地域がロックダウンされるとのニュースで反落、リスク回避姿勢が強まりました。

 ナスダックでは上記アップルのほかアマゾンが▲4%超、半導体関連株が軒並み▲3%超の大幅安となり、テスラが序盤の上昇から小幅な下落に止まったことから辛うじて暴落商状には至らなかったと言えます。

 投資家に動揺が走る中でリスク指標はまちまちな動き、VIX指数が23ポイント台から26ポイント台に急上昇、ハイ・イールド債も低下傾向を強めて再び安値接近、一方でF&G指数は32ポイントでほぼ横ばいとなっています。この中でも『炭鉱のカナリア』といわれるハイ・イールド債のリスク回避姿勢は警戒シグナルで、前回安値を底割れするかはよくよく注視しておく必要があるでしょう。

▼ISHARES IBOXX $ HIGH YIELD CORPORATE BOND ETFチャート
https://jp.tradingview.com/symbols/AMEX-HYG/

 時間外では欧州でECB会合が開かれ7月利上げを確認、あわせて7-9月のマイナス金利脱却を目指し、QE(量的緩和)は7/1で終了するとの発表がなされました。フォワードガイダンスでは9月に0.5%の追加利上げ見通しも示されました。

▼ECB、7月利上げを確認-9月に0.5ポイントの可能性も示唆(2022/6/9)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-09/RD7L4GDWX2PV01?srnd=cojp-v2

 ECB発表をうけて欧州金利だけでなく米10年債利回りも上昇、5/11以来の高値をつけました。少し前の5月下旬は米FRBが9月利上げを見送るのではとの見方から米国株の急反発につながっていただけに、ここで改めて懸念が再燃した形となっています。今晩のCPI発表でインフレへの警戒感が改めて意識されるようになると、5月下旬につけた年初来安値を再びテストしにいく可能性が高まることになります。

【日本株投資戦略】
メジャーSQ前に波乱の予兆を示した半導体株と海運株、為替円安に日銀・財務省の対応が焦点に

 日本株は直近で米国株が下落する場面でも為替円安が下押し圧力を相殺する形で堅調さを保って上昇してきました。しかし、前回6/8の【先読みの近未来】(スタンダード会員以上の方対象)で指摘しましたように、本日メジャーSQに向けての高値誘導という側面が強く、テクニカルにおける「新値八手十手」での天井形成および「幻のSQ」を示現させる動きと考えられます。

 SQ清算が日経平均27,000円突破後のラストダンスとなるようであれば、為替の円安深耕もストップし、市場全体が軟化に転じる可能性が高まります。前回の解説では米SOX指数の上昇翌日に上値を試しきれなかった半導体株の失速と、海運株の息切れ感について指摘しましたが、コロナバブルを象徴してきた先導役の二大巨頭がそろって腰折れしたことは、相場の大黒柱がバキッと折れたことを意味することに他なりません。

 これを前向きにとらえたならば、この二本柱から他のセクターに資金が移動して、循環物色を繰り広げながら資源・エネルギー株や自動車株、ディフェンシブ株などにも広く資金が行き渡ったことになりますが、景気敏感株が相場をけん引できない物色は消去法的で、持続性に乏しいのが難点です。

 足元では上記の確認ポイントで示したファーストリテイリング(9983)などの上昇に支えられて日経平均は3/25の高値を更新しましたが、SQ清算後に一段高を望むには更なる為替円安が進行して他の景気敏感株が年初来高値を更新してくるような力強さが必要です。

 岸田政権としては「新しい資本主義」の具体像を示し、政権発足当初に目指していた「新しい資本主義」とは性格が異なるマーケットフレンドリーな政策に方針転換してまで、来たる参院選まで株価を高止まりさせておきたいと考えているかもしれませんが、何故かこのタイミングで自民党の細田衆院議長と岸田総理に近い吉川氏のスキャンダル報道が飛び出すなど政権運営にとっての逆風が吹き始めました。

 そうなると、あとは日銀・財務省が足元の市場の動きを看過しながら為替や低金利の状況についてどこまでシラを切り続けることができるかが焦点になってくるところで、為替市場の変調や金利市場の長期金利0.25%上限に抑え込んでおけるかが重要となってきます。

▼日銀の年内緩和修正観測が後退、140円に円安進行で対応も-サーベイ(2022/6/10)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-09/RD6VQ1DWRGG001?srnd=cojp-v2

 来週には先週までの米FRBメンバー発言から雲行きが怪しくなり始めた米FOMCが控えており、いかに米国市場との連動性が薄れてきていようとも外部環境の変化には抗えないことを前提に、警戒感を一段と強めておく必要があると言えるでしょう。

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