【3/29日本市場の確認ポイント】
日経平均 28252.42(+1.10%)[28,063~28,252]
TOPIX   1991.66(+0.93%)[1,978~1,991]
東証2部  7279.63(+0.42%)[7,242~7,285]
JASDAQ  3664.56(+0.29%)[3,645~3,666]
マザーズ 759.64(+3.69%)[740~765]

値上がりセクターTOP5
1.輸送用機器(+2.08%)
2.海運(+1.82%)
3.サービス(+1.63%)
4.小売(+1.46%)
5.電気・ガス(+1.37%)

値下がりセクターTOP5
1.石油・石炭(▲1.69%)
2.陸運(▲1.08%)
3.農林・水産(▲0.91%)
4.空運(▲0.69%)
5.不動産(▲0.60%)

 29日の日本市場は期末配当の権利取りおよび配当再投資買い期待を背景に底堅い動きのほか、グロース系中小型株が買いを集めて主要株式指数はそろって反発しました。原油価格の急落をうけて石油関連株などには売り圧力が強まったものの、為替の円安進行を追い風に自動車株が総じて強含んだことに加えて半導体関連のレーザーテック(6920)や三井ハイテック(6966)などが大幅上昇しました。

 翌日の権利落ち後の下落が警戒されたのはディフェンシブ系の陸運株や空運株などで、下落セクターの顔ぶれを眺めるに不動産株や建設株などに弱さが目立ったことから、足元の為替材料をふまえて外需株選好、内需株売りの構図が鮮明とも言えそうです。為替ドル円が1ドル=130円を突破するような場合には為替介入が必要との声も出始めた中、自動車株やエレクトロニクス株の躍進がこのまま続くのかが注目されています。

 日経平均は28,000円の大台を権利落ち後も維持できるかが焦点となる中、この日はむしろ配当絡みの影響が少ないとされる新興市場が強含みだったことの方が注目点になります。前日の米ナスダックの動きが強かったことをうけてグロース株買いの熱が高まったとも言えますが、投資家のセンチメント改善がよりリスク性の高い新興株・中小型株の物色に資金を振り向けようとする動きが顕著に表れたと言えるかもしれません。

【米国株概況】
ウクライナ情勢の好転で原油市場に急落の動き、債券市場では2年-10年で逆イールド発生、インフレ亢進への警戒感が和らいで金融引き締めを急ぐ懸念後退から株価は反発強める

NYダウ 35294.19(+0.97%)[35,030~35,372]
S&P500  4631.60(+1.23%)[4,589~4,637]
NASDAQ 14619.64(+1.84%)[14,419~14,646]
ダウ輸送株 16718.5(+1.43%)[16,510~16,727]
半導体SOX 3625.6(+2.21%)[3,558~3,633]
日経平均先物(CME) 28,340(+1.50%)[27,795~28,420]
ドル/円 121.19~122.42
米10年債利回り 2.398%(高値2.557%:3/28、安値1.668%:3/7)
WTI原油 105.29(高値130.50:3/7、安値93.53:3/15)
金先物 1918.40(高値2,078:3/8)
銅先物 4.7485(高値5.0395:3/7)
恐怖指数(VIX)18.90(37.79:2/24)
Fear&Greed指数 55
High Yield Bond (HYG)82.84(安値79.97:3/14)

29日の米国市場はロシアのウクライナにおける軍事活動縮小との発表に加え、停戦協議の進展期待などから主要株式指数はそろって反発、地政学リスク懸念で上昇が目立っていた原油市場にも急落の動きがみられたことで過度なインフレへの懸念やインフレ抑制を掲げる金融当局の引き締め観測なども後退したことも追い風となっています。

 ウクライナ情勢をめぐってはウクライナ側から安全保障と引き換えに中立化を提示したと和平交渉に進展の動きがみられたとする一方、ゼレンスキー宇大統領は未だいかなる和平協定もロシア軍の撤退とウクライナの主権と領土保全に関し妥協はあり得ないという見解を再表明したほか、対ロシア制裁強化を呼び掛けたとする二転三転で情報の錯綜が続いています。市場はその時々に応じて都合良く解釈して、現状では好材料に反応しやすい地合いとなっていますので、ファクトチェックの前に原油急落、株価反発といった動きが示現したものと言えるでしょう。

 米国株は28日こそテスラ大幅上昇やマイクロソフトの反発に引っ張られた感じがありましたが、この日は主要なグロース株が総じて反発を強めており、ナスダックも続伸の動きから投資家のセンチメントはさらに改善がみられたと言えます。リスク指標もVIX指数はとうとう20ポイントを切って18.90ポイントと今年1月の上旬以来最低水準をマーク、F&G指数も中立を越えて55ポイントと投資家がリスクに前向きな姿勢を示していることが窺えます。

 その一方で、債券市場では足元よりも将来の米経済への懸念は増しており、2年債と10年債の利回りが2019年9月以来初めて逆転して逆イールド現象が示現しました。引き続き原油高や米金融当局の積極的な利上げ姿勢には警戒を強めており、それらによって今後の経済成長には暗雲が立ち込めていることを示唆しています。以前にもこの逆イールドについては触れましたが、目先すぐにではなくとも数ヶ月先においてこれまでに何度も市場暴落のシグナルとなってきたことから、投資家として足元の株高に追従する姿勢とは裏腹に、天井形成後を一段と警戒しておく必要があると言えます。

【日本株投資戦略】
配当落ち後の日経28,000円台維持の関心高まるも年度替わりの局面転換見極めがより重要

 すでに年度末に差し掛かっている日本株は足元の短期的なリターンリバーサルの動きがいつ天井をつけるのか、その一方で昨秋以来の中期的な下落トレンドがどこで大底を確定させるのか、時間軸によって見方が変わる現在の市場の動きを見極める段階に入ってきたと言えます。

 当塾の有料メルマガ【先読みの近未来】ではすでに3ヶ月先くらいまでの市場転換日を観測した分析記事を配信させていただいております。日米の金融政策・財政政策において当局者の発言内容とは食い違うマネーフローが現実に起こっていることから、官製相場としての色彩がより濃くなっているとの見方を強めています。すなわち実体経済の状況やその他ファンダメンタルズよりも中央銀行や財務省がどれだけ市場に資金供給して流動性に厚みを持たせ続けることができるかの方がより重要性が増していると言えます。

 資本市場では米国債売り・株買いの構図が鮮明になってきておりますが、株式以上にバブル相場の象徴となってきた債券市場でのカネ余り現象が逆流を開始したと捉えるならば、足元でのリスクオンは持続力及び信頼性に欠けるものと読み解いておく必要があるかもしれません。今のところ米FRBのバランスシートも膨れ上がったままになっていますので、今後テーパリングが開始された時に債券市場だけでなく国際資本市場で米ドルや原油、その他コモディティの価格下落につながってくるかどうかが見極めるポイントになってきます。

 直近の原油市場にみられますように中国の需要鈍化観測などから一気に急落する現象はなにも原油市場に限った話ではなくなってくる可能性があると言え、むしろ急落によって現金化されたマネーがどこに向かうのかをよくよく注視していく必要があると思います。これがもし今後の為替ドル円の動向が目先は円安基調が大きく進んでいくとしても突如として巻き戻しのような現象が起こるとすれば、市場はリスクオフ時の円高が一時的であるにせよ復活することとなり、それが日本株市場にとっては直近のウクライナ危機以上の買い場を提供することになるかもしれないからです。

 ちょうど前回の【日本株投資戦略】で解説した矢先にウクライナ情勢の緊張緩和を伝えるニュースが飛び込んできました。ロシア勢が発表しているロシア軍による軍事活動縮小からおそらくこのまま撤収することは無いかと思われますが、年度替わりでニューマネーの流入観測がニュース記事になってくる頃合いで株式市場は天井を形成し、またウクライナ情勢も最終的な解決に向けて次の緊張が高まりを見せてくることになるでしょう。

 したがって、今週から来週にかけてのところでは各銘柄において新高値更新が近いものはギリギリまで上値を見定めるようにし、現時点の段階で戻りが鈍いものは75日移動平均線などを目安に戻り天井を意識しながら徐々にポジションを手仕舞いしていくことを検討するのが良いでしょう。4月SQまではまだ日柄も残されていますのでオプション市場がリスク選好を続ける可能性がある一方、SQ通過後には今の地合いも変化しやすくなることを念頭に置いて取り組むのが有効でしょう。

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